過ちの本能
最期まで諦め……きれない俊雄!
《注意》今回グロイ場面が出ます!
責任は負いかねますので、注意して読んでください!
その頃……卒から反逆した玉蓮藩の玉蓮の某所では「投降しろおおおっ!」という声が響いていた!声の主は玉蓮藩の一隊の隊長!
その場所ではその玉蓮藩の隊(計二百人)が、卒の一個分隊(計十人)を包囲していた!
もうこの時点で玉蓮藩側の勝ちは決定している!
故にその隊長は――無駄な犠牲は出すまい!その卒の分隊に降伏を促していたところ!
「情けなぞ無用!そもそも貴様らのような下劣な裏切り者に降る卒軍ではない!」
「降伏なぞせぬ!武器がなくなったら……己の体を武器とするまで!」
「卒王朝……万ざーい!万ざーい!万々ざああああいっ!」
しかし、これらのように卒の分隊は闘志を絶やしていない!
それどころか初めて玉蓮で見かけた時よりもむしろ増している!
そんな卒の分隊を惜しみつつ、隊長は振り上げた片手を――下ろす!
そして卒の分隊は数多の弓と槍の錆と成り果てていった……!
後に今日中に“降伏しなかった卒の分隊”の件を聞いた玉蓮藩の世子(次期藩主)である夢歩はこのように吐露した伝わっている……。
「命なぞ――当の昔に……至上の価値で無くなったのです……。
偉大なる東武帝が日汎の王位を得た時から……」と……。
世歴八百四年四月二十二日 午前八時頃 玉蓮藩 玉蓮近郊の某所
尽と玉蓮藩側の追撃を振り切って、玉蓮のどこかの林に潜む俊雄!
既に彼に残された切り札は自身の剣――そして馬のみ!
――このまま丘幸に戻っては皇帝に殺される!と焦るばかり……!
「この際は何としてでも……手土産を……」と絶望気味にそう決意する俊雄!
そんな俊雄の目の前に救世主が現れた!
その救世主は――尽の皇帝である陽玄!
――尽帝の首さえあれば、殺されずに済む!と俊雄は大興奮!
そんな俊雄が陽玄の方を観察してみれば、当の皇帝は馬の上。
皇帝の周りには同じく馬に乗った鋒陰しかいない!
これを“千載一遇の機会”と言わずして何というか!
「……!」
ここで一旦冷静になる俊雄!熱くなった時に冷静になれるのが俊雄の強み!
――ここで殺すよりは、人質にした方が……!という結論に辿り着く!
確かに陽玄を捕らえて人質すれば――卒軍は手も足も出ない!例え出ても不思議ではない事態が起きても、丘幸へ戻るまでの時間稼ぎにはなるだろう!
このように確信した俊雄は迷わず「うおおおっ!」と雄叫びを上げて陽玄の方へ突進!
これぞ――単身の騎兵突撃である!もちろん俊雄の片手には剣が握られている!
一方、陽玄と鋒陰は今いる地点に辿り着いた時点で、俊雄の存在に気付いている!
何故気づいたかと言えば、この師弟が具わっている“超能力”である!
尤も、師弟は俊雄をおびき寄せる“餌” として――俊雄に気付いていない振りをしている最中!
今は静めているとはいえ、先程までの興奮の余韻が抜けていない俊雄が――自らが“餌”にかかった大魚と成り果てていることを自覚できるはずもない……!
ましてやその餌が四から五歳ぐらいの子供であれば……!
「む!」と俊雄の突撃に気付いた鋒陰!そのまま馬上のまま、俊雄に向かって突進!
知らない鋒陰なぞ、卒にとっては雑魚も同然!
俊雄は鋒陰に最も近づいた時に、既に抜かれている剣で切り払おうとするが――その剣は既に「パキイイインッ!」と真っ二つに折れていた!鋒陰のジャンプキックによって!
「……!!」
鋒陰に剣がおられたことに驚いてしまう俊雄!しかし驚いたからと言って、俊雄には止まることが許されていない!許されても止まらない!
既に陽玄までの距離は……馬を使ってあと数秒と言ったところ!
――剣が駄目なら素手でやるまで!とそう決意した俊雄は折れた剣を捨てる!
そして俊雄が片手で攫って行こうと、片手を広げた――その時!
当の陽玄が俊雄に向かってきているではないか!しかも跳んで!
これに俊雄は「なっ!?」と驚いてしまうものの――これは絶好の機会!と陽玄をその片手で攫おうとする!ただし鉄拳で……!
別に予定してたわけではないが、この陽玄だけは殴ってから攫わないといけない気がしてしまった俊雄!この時点で俊雄の本能は大きな過ちを告げている!
本来ならば陽玄を攫おうとせずに、当の昔に逃げればよかったのだ!
実際に、陽玄も自身に襲いかかる鉄拳へ――鉄拳で対抗!
その直後、「バキイイイイッ」と拳と拳が衝突したにしては不自然な音が辺りに響く!
鉄拳を繰り出した俊雄の腕のあちこちから血が噴き出ているではないか!
そして陽玄が地に着くまでに、「馬鹿なああああああああっ!?」と俊雄はそう驚愕すると――「パアアアアアアアアアンッ!!」という音と共にその全身が破裂してしまった……!
こうして俊雄はモザイクかけないと映せない肉塊と成り果てたのであった……!
次回予告:その頃、丘幸では……。




