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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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謎の物体

卒軍の災難は終わらない!

「将軍殿下!? 何故に丘幸みやこへ転進されるのですか!?」

 俊雄が発した号令に異議を唱える騎兵隊の隊長!

 そんな隊長かれに、先の商人が俊雄に代わってこのように諭してみせる!

「身の程をわきまええないことを承知で申しますと――もう尽軍はいつでも丘幸みやこへ攻め入ることができます!既に尽に下った卒軍あなたがたの中団を尽軍みかたに加えれば、兵力は丘幸みやこ司隷しれい(首都防衛隊)の倍です!

 故に――先程、将軍殿下が発せられた令は賢明なものであると思えます!」


 商人の説明を聴きいれた騎兵隊の隊長は「な……なんと……!?」と呻る!

「……!」

 俊雄の方も一瞬だけ微笑を浮かべて――大きく首を縦に振る!

 その商人の心が既に……尽の下になっていると知らずに……!尤も、その商人に方も「卒の中団の件を、玉蓮にいる摂政殿下(俊雄)に伝えてこい!」としか雇われていない……。



 それから卒の衛団はせっせと転進作業の準備に追われていた!その最中――

「藩主殿下!早急に衛団われら玉蓮ここから引き上げさせてもらう!」と俊雄は玉蓮藩の藩主の間で、藩主かれに別れの挨拶を送っていた!


「摂政殿下が玉蓮ここを離れることに何も躊躇ためらうことは御座いません!

 丘幸みやこにお戻りになられましたら、皇帝陛下によろしくお伝え願います!」

 その藩主の氏は『ぼう』、名が『』、あざなは『生歩しょうほ』という者!息子の夢歩は彼に似ているが、厳しそうな瞳だけは似ていない!


 生歩の返事に、「うむ!」とうなずいた俊雄に向かって、夢歩は――

「俊雄!玉蓮ここの心配は無用だ!」と声をかける!一人の幼馴染みとして……。

 すると俊雄は私心を押し殺して「……では失礼する!」とその場を辞していく……!



 こうして俊雄が玉蓮藩の政庁を去っていく頃のこと……。

「あっ、ありゃぁ……一体……なん何だ!?」と謎の物体に指差すひと

「箱だ!! 車輪を付けたでかい箱が走ってるぞ!!」と謎の物体に指差す別のひと

「ん……!? 何か……箱の上に誰か乗ってないか!?」と謎の物体上の人を指差すひと

 この他、始めて見る謎の箱状の物体に近づいていこうとする兵達やじうま

 するとその箱状の物体は馬よりも早く兵達かれらに近づいていくではないか!


「全隊――槍を持てい!」と兵達に響く声!声の主はもちろん槍兵隊の隊長!

 この声に反応して兵達も慌てながらも、各自で槍を構え始める!

 そして隊長の「構えい!」の声に合わせて、謎の物体に槍先を向ける!その数は二百!

 ――これであの物体を止められる!と隊長が確信したその時!


 突如――箱状の物体から「ダダダダダダダダダダッ!!」という連続の重音!

 その箱状の物体の正体――軍用の小型トラック!その連重音の正体――重機関銃!

 不運なことに小型トラックに近い槍兵から順に、「ぎゃああああああっ!」や「何じゃこりゃぁ!?」という断末魔の叫びを上げながらバタバタと銃弾に討たれていく!


 前方の槍兵なかまが次々と倒れていく様に、後方の兵達は――

「ひ、ひいいいいっ!」と恐怖心を抑えきれない!しかし……。

「怯むなああああっ!! 兵力かずで押しつぶせえっ!! 突撃しろーっ!!」

 この隊長の命令に、自身と仲間の命が消える恐怖に耐えつつ、後方の槍兵達は――

「うおおおおおおおっ!!」と雄叫びを上げて、自身らを狙う箱状の物体に突撃していく!

 各々の本能が――必ず謎の物体(やつ)に殺される!と分かっていながら……!


 さて……この箱状の物体――小型トラックの荷台部分に乗っている者の正体は誰か!?

 その“誰か”まではまだ分からないが、その誰かについて分かっている特徴ことは――陽玄と同じような鉑色プラチナの長髪の持主!

 加えて、その服装はこの世界の者達が着ている布製のものではな!真藤が前にいた“平成”の日本で見られるような迷彩柄の服を着ている!


 さらに次々と討たれている槍兵達やつらに全く気付かれている者がいる!

 その者は小型トラックの運転席で――絶賛運転中!その運転技術ドライブテクニックの抜群!何せ、荷台の銃座にいる方は視界に入ったの敵を討つことに集中している!

 おまけにその者自身も運転中にも関わらず、手持ちの手榴弾で攻撃を支援!

 この爆発に、槍兵達の中で「ば、爆発したぞーっ!?」恐怖するものは少なく、「うぎゃあああああっ!!」と断末魔の叫びを上げて命ごと吹き飛ばされる者が大半であった!

 その者の正体は――分からない!何せその全身が白と黒を織り交ぜた衣服で覆われているのだ!顔の部分も目元を除いて白い布で覆われている!不気味……!



 そうして最初の銃撃から五分も経たずに――槍兵隊は殲滅せんめつされた!

 当然――最初から威勢を放っていた槍兵隊の隊長も、何時いつの間にか物言わぬ死体と化してしまっている!その死に顔は恨みではなく、驚きの表情で満ちている!

次回予告:焦る俊雄!!

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