砂時計
宝箱の中身のことでほぼ頭いっぱい……なはず!
それから宴会中の真っ最中の地方団。ある者は街中に残されている地図を探し当てては、地図を頼りに宝箱を掘り当て、ある者は宴会に興じて酒を飲みまくる!
地方団の指揮官の苦風は後者で、軍務中の飲酒に興じている。そこへ――
「そういえば頭!! 宝箱、何時開くんすか!?」と恰幅のいい部下が尋ねてくる。
「魔札を見てみろ!魔札には砂がある砂時計が描かれてるだろ!砂時計の砂も落ちてる最中だぜ!
それとおそらくだが……全部の宝箱の魔札にも砂時計が入ってるはずだぜ!」
この苦風の声を頼りに、恰幅のいい部下はいくつかの宝箱を手に取ると――
「あっ……頭が仰ったとおり、砂時計が――!」と驚いて例の砂時計を発見!
しかも手に取った全ての宝箱の魔札に、砂時計が描かれている……。
ちなみにこの魔札……魔法に精通している者だったらすぐにも、その魔法を解くことも可能である!しかし生憎、今の地方団には “魔法使い”のような魔法に精通している者が全くいない……。
無論――外部から物理的な手段でも解けるが、今の地方団にその為の機会もなければ、労力もない。労力と時間がかかりすぎる……。
ならば時間が解決してくれる以上、人間としてはそれに乗っかるまでだ……!
「砂時計の砂が全部落ち切ったら――」と苦風が言うと――
「開くんすねーっ!」と恰幅のいい部下は目を輝かせて、苦風のその台詞に続く正解を当ててみせた!その瞳には金まみれの夢が描かれている……!
恰幅のいい部下とのやり取りを終え、再び飲酒に興じようとする苦風に向かって――
「しかし何でこうも宝箱が大量にあるんですかね……?
既に宝箱は二十個以上見つかっているそうなんですけど……」という声。
声の主は細い方の部下である。その表情は“軽い”とはいえ疑問に思っている者の表情。
――どうも怪しすぎます!! と物語っているのは、言うまでもない!
「どうでもいいが……きっと先の大戦の図籍(官男)の所有物かもしれんな……」と苦風は細い方の部下に返答してみせる。苦風自身も怪しみはしているが、その感情は……膨らみ続ける宝箱の“宝”への期待で掻き消されてしまう……。
現時点に至って――苦風の表情はその期待で歪み切っている……。怖い……!
おまけにその表情を見た地方団も……若干引いてしまっている……!
同日 午後十一時十五分頃 過穀 某所
一方……尽の軍(旧京賀国軍)の内、某所に潜んでいる中団の本隊では――
「作戦は順調です!殿下!」と一人の兵が月清に声を掛けている最中!
この声に応じて月清は本隊に向かって小声で――
「よしっ!皆、くれぐれも“事の初め”には気をつけろ!」と注意を伝達する……。
同じく別の某所に潜んでいる貴狼が率いている衛団の本隊でも――
「真藤!時間はどうなっている……!?」と傍にいる真藤に小声で訊いている最中!
訊かれた真藤も自身に着用してる腕時計を見て、小声ながらも――
「そろそろです!もう十五分前を切ってます!」と勢いよく返してみせる!
「今、掘り出された宝箱は何個だ!?」と続く貴狼の問い!
これにも真藤は「既に四十個以上です!目標まであと少しです!?」と勢いよく返す!
今、真藤の手に握られているは――巻物!そこには過穀の中心地の地図と、卒の地方団が求める全ての宝箱の場所が“黒い点”として記されている!
さらに巻物には魔力が込められているので、全ての“黒い点”は外部の手による移動に合わせて、実時間で動く仕様になっている!
また卒の地方団に掘り出された宝箱の個数も記してくれる!
巻物は真藤が前にいた世界の“タブレット”に近い物である……。
ちなみに過穀中心地にある宝箱は全部で――五十個である!
同日 午後十一時三十分頃 過穀 地方団本陣
「頭あああっ!! もう宝箱が開きそうっすううっ!!」
「どけえぃっ!! 真っ先に“宝”を拝むのはこの俺だああっ!!
地方団も位の高い順から一人一個ずつ……取っていくだけいいぞ!!」
せっかく魔札の砂時計を見続けて報告してくれた恰幅のいい部下の手から、宝箱をひったくった、地方団に号令をかける苦風!
これに地方団の位の高い奴らは一斉に「わああああああぁっ!!」と宝箱が集められた方に駆け寄っていくと、各々一個ずつ宝箱を手に取っていく!
ちなみに位の低い奴らは――ただその光景を見ているだけ……。無力……。
五十もの宝箱が全て地方団の手に渡った時、ちょうど全ての宝箱の魔札に描かれていた砂時計の砂は全て落ちていた!
これを見た苦風は「開けるぞおおおっ!!」と宝箱を開けようとした――その時!!
次回予告:いよいよ待ちに待った……!!




