帝位
新しいキャラ登場!
「はっきり申し上げます!京賀軍は京賀の兵です!
我が王の命令とあらば――我が将兵達は何の不満もなく戦えましょう!
しかし京賀兵は長帝の為と知ったら……喜んで戦えないでしょう……!」
月清の発言に、「何でじゃ!?」と驚き訊き返してしまう月道!
すると月清は俯きながら――
「我が兵には……長帝を佞邪王の横暴を許した暗君と見ている者が少なくないのです!」と最も言いたくない事実をあっさりと月道に告げてしまう!
どうせ問われて言うくらいなら、今ここで言ってしまおうという考えから……。
「なんじゃそりゃ!鈔狼(当代の長帝の字)の事情も知らんで!
鈔狼は被害者ぞ!それを“無能”と罵って鞭打つのあんまりじゃぞ!
京賀の兵はそこまで落ちぶれたか!?」
この月道の者の激しい言いように、月清は我慢できずに――
「これまでの兄上の旅は私よりもはるかに勝る価値です!
だからといって――京賀兵を一度も指揮したことがない兄上に、我が兵の何が分かるというのですか!?」とキレて反撃に出る!
結果――月道は「うっ……!」と呻くだけ……。
実際に月道は、照泉と共に四年程前から今日の数日前までは旅人。
ちなみに実戦で京賀国の兵を直接指揮したことなぞ一回もない!
ここで兄弟喧嘩が本格的な度合になる前に抑えんとして、貴狼が――
「上配殿下(月道)!殿下の帝を思う気持ちは誰もが共感できるものです!
しかしですな……その当の帝さえ、もう帝位に就く気はないのです……!
いい加減、現実を受け入れたどうです?」と月道の相手となろうとする!
帝の意志を持ち出された月道は「鈔狼がか……?」と再度尋ねてしまう。信じられていない様子。貴狼が嘘を言っていないことは当に見抜いているはずなのに……!
そんな月道に貴狼は「左様!」と言うと、そのまま月道に――
「当の長帝が、塔(釣幻の氏名)氏の傀儡にされ……どんなに苛まれたか!いつ自身の一族が皆殺しにされる恐怖に耐えていたことか……!
その上、子木(鈔狼の氏名)氏代々の全帝は……やむを得ぬとは言え、仕えるべき本来の王朝を差し置いて帝位に就いたことを恥じておるのです!
帝を思うなら……もう帝位に就くことを強いなさいますな!」と止めを刺す!
「……」
結果――ぐうの音が出なくなって反論を断念する月道……!俯くだけ……!
「上配殿下以外で……このまま長王朝に仕えるべきと考える者は挙手を――」と貴狼が今の議題を終わらせそうな空気を醸し出した――その時!
月道が「途中だが、訊きたいことがある!」と言う疑問を貴狼にぶつける!
すると貴狼は冷静に「何でしょう?」と応じてくれる。
そして「三つ目の案はひょっとして――」と月道の問いが言い終わる前に、貴狼は――
「お察しの通り、我が王が帝位に就かれ――京賀国が独立することです!」と三つ目の案を述べて答えてみせる!これに月道は「お主正気か!?」と驚くだけ!
「至って正気です!帝の加護を受けられない王は――周辺諸国から格下扱い!
帝位に就いてもらわねば、今後の外交活動が機能不全に陥るのです!」
実際に今の貴狼が断言した通り、この世界において国“王”は皇帝の臣下!
そうでない国王は野良扱い!皇帝の庇護の下にない絶好の獲物!
「鈔狼を差し置いてか!? それじゃ鈔狼はどうなる!?
このままでは鈔狼は『廃帝』扱いじゃぞ!! お主は旧主がそんな辱めを受けて良いのか!?」と今も帝を思う気持ちをむき出しにする月道!
そんな月道に貴狼も「良い訳ないでしょう!」と同じ気持ちをむき出し!
ちなみにこの世界で文字通り“廃された皇帝”と意味される『廃帝』と呼ばれることは――ある意味での敬意を込められた、軽蔑を受けることに他ならない……。
「それが分かるなら何故じゃ!それに日汎王――」と月道が貴狼に問いつつ他の話をつけ加えようとした時、月道の妻である照泉――
「いいのです!あなた、王室の方は!」と遮った!
これに月道は「へっ……!」と素っ頓狂な声を上げながらも――
「陽玄……陛下はどうなのじゃ!陛下は!」と息子に訊いて抵抗を続ける!
しかしその当の陽玄からは――
「予は帝位に就いても――構わない!」という答えが返ってきてしまう……!
「……」
もう抵抗する術を失い呆然としてしまう月道!若干泣きそう……。
そんなところへ――「邪魔するぞ!」という声が議場に響いてくる。
その直後に一組の夫婦が議場に入って来る!そしてその夫が、議場の全員に向かって「久しぶり!若しくは初めまして!」と挨拶!律儀なことだ。
その夫のはウェーブこそかかっていないが、月道兄妹らと同じような銀髪の持主!また静かな無表情の持主でもあるが、兄妹と同じような少女のような可愛らしさも備えている。
そんな夫を見て、月道は「父上……」と思わず声を漏らしてしまう……。
次回予告:名前分かる!?




