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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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弁明と弁解

暖沼と猛己の番……!

「次――暖事(暖沼の氏名)よ!」という釣幻の言葉に、暖沼は「ははっ!」と畏まる。

「貴様は図籍(官男の氏名)を補佐し、『佞邪救国政府』の樹立に協力していたな……」

「はっ!左様でございます!」とまたも畏まって釣幻に応える暖沼。

 先に判決を受けた官男とは対照に、高貴な者達への反抗心が微塵も感じられない……。


「そんな貴様が土壇場になって、官男に取って代わるとはな……!」

 この釣幻の驚きの感想に、暖沼は得意気に――

「何も珍しいことではありません、侯殿下(釣幻)!

 古来から無能な君主は廃位に追い込まれるが必然でありましょう……!」と返答!

 官男を『主席』という地位ごと廃して、自らは『大書記』として取って代わったことを、全く悪びれていない!それどころか正当化さえしてみせる……!

 この返答に、釣幻は「ふっ、確かにな……」と静かにうなずく……。

 自身も暖沼と同じようなことを考えている故に――あまり否定する気になれない……。


「図籍は敗北が確定したと言ってよい状況でも、徹底して抵抗を続けようとしていました!私は奴の諦めの悪さに愛想を尽かし――『大書記』として取って代わって京賀国に降ることで『佞邪救国政府』を解体せしめ、図籍を死刑囚に落とせたです!

 もし、このまま奴が貴国に対して徹底抗戦を続ければ――かっての救国政府の存続に関わらず、貴国は甚大な被害をこうむることになったでしょう……!」

 この暖沼の弁明に、俊雄は嫌悪感は抑えきれない!

 ――よくもまぁ……ぬけぬけと……!と内心で殺意さえ覚えてくる……!

 どうしてお前のような下賤な奴に、栄光ある佞邪国を傷つけられようか……!?

 しかしその栄光な佞邪国くにはその下賤な暖沼やつ以上に下賤な官男やつの攻撃を受け――全軍の三分の一を失っている……。


 歯ぎしりしている俊雄を尻目に、釣幻は顔色一つ変えることなく冷静に――

「何故、貴様は『大書記』に就いて早々に――京賀国に降ったのだ?」と尋問を続ける。

「あの時……佞邪国に降りたい一心で、私は『大書記』に就きました!

 ですが……かっての救国政府の騎兵(親衛隊)の全てが、図籍の方についていきました!

 その騎兵達は全て討ちましたが――我々は馬を得ることはできませんでした……!

 わたくしの馬だけでは、京賀の騎兵達から逃れることは叶わず!と判断し、先ずは京賀に降って、そこから貴国に引き渡されようと考えたのです!」


 続いて釣幻の「何故、佞邪わが国に降ろうと思った?」という質問に、暖沼は――

「是非、佞邪侯にお仕えしたいと考えたからです!」と答えてみせる!

 これに俊雄は思わず「なっ!?」と――歯ぎしりしていた口を開けてしまう……。

「……!?」

 陽玄ら京賀の四人も「ポカーン」と開いた口が塞がらない……。

 他の佞邪の者達も驚きを隠せない!彼らがいる座敷の縁側が「ざわざわ」している最中!

 これらの状況の中――釣幻だけが「ほう……!」と不敵な笑みを浮かべている……!


「私は図籍の下で、君主に逆らうことの愚かさを学び――改心致しました!

 故に私は『長』王朝内で最有力の諸侯である佞邪侯殿下にお仕えしたいのです!」

 この暖沼の止めと言わんばかりの嘆願に、釣幻は不敵な笑みのまま――

「お前は“無罪”だ!官職を考えておくから、別室で控えておくがいい……!」と処分!


「……!?」

 裁判長である釣幻と被告であった暖沼の二人を除いて――お白洲(ここ)にいる全員の時が止まる……!驚きがあったというよりは、現実感が湧かなかったのだ……!

「……!?」

 俊雄に至っては――書記官としての責務を忘れ、手に持っていた筆が止まっている!

「……!?」

 暖沼の周りにいる兵達もその例外ではない!彼らは、主君である釣幻から「この者の縄を解いてやれ!それと部屋への案内もだ!」と指示されるまで、固まっていた……!


 それから佞邪兵達かれらから縄を解かれた暖沼は――

「侯殿下のお心遣いに、深く感謝致します!――では失礼致します!」と釣幻に深く畏まって礼を述べた後に、佞邪兵達かれらの内の案内役に付いて行った……!


 そして、お白洲(ここ)に残る被告は猛己のみとなった……!

「最後に――猛己よ!」という釣幻の呼びかけに、猛己は「はっ!」と畏まる!

 ――佞邪侯は必ず俺を助けて下さる……!と内心で信じ込みながら……!


「お主も図籍(官男の氏名)に組し、『佞邪救国政府』の樹立に協力していたな!」と釣幻が言い放つと、猛己はより一層畏まって――

「ははっ!しかし私が最初に反旗をひるがえしたは――京賀国です!

 決して佞邪国にやいばを向けたつもりはありません!

 図籍と手を組んだのは、あくまでも京賀国に対抗するためだったのです!」と弁解!

 かって過穀政権を率いた猛将としての彼の姿は……どこにも見当たらない……!

 この猛己の姿に――よくもまぁ、ぬけぬけと……!と貴狼は嫌悪感を抑えきれない!

 それと同時に――主の前だとは言え、こうも小さくなるか……!と幻滅している……。

 距離のせいか、猛己の体勢かは知らないが――実際に猛己かれが小さく見える……。

次回予告:死刑囚の末路……!

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