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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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暴君との違い

共和制でも”暴君”はいる……。


※注意:今回も、ソフトに包んでるけどグロイ話!

    こういうのダメな人は注意して読んでください!

    これも責任は負いかねるから……。

 先程官男に反論しかけた側近は、両側を官男の衛兵達に囲まれるとたまらず――

「お……お許しをおおおおおっっ!!」と官男に請い叫ぶ。先程までの勇気はもうない……。

 しかし、その叫びは当の官男ほんにんには全く届くことはない……。

 官男は自身の片手を揚げるや、それを一気に振り下ろす!それが粛清の合図!

 すると即時に――先の側近の後ろにいる衛兵が、先の側近かれの背を剣で斬る!


「ぎゃああああぁっ!!」と背に走った衝撃に叫んでこたえる羽目になってしまう先の側近かれ。そのまま地面に前かがみになって――地に両膝を突いてしまう……。

 この光景に他の側近達の顔が恐怖に歪む。しかし筆頭の側近である暖沼の顔だけが愉悦ゆえつに歪んでいる。大陸から渡ってきた暖沼かれにとっては至高の娯楽!


「痛いいいっ!痛いいいっ!」と自身の背の重傷さに泣き叫んでしまう斬られた側近……。

 ――これ(背後からの斬撃)で死ねたら、良かったろうに……。というのが、このときの官男を除いた側近達の内心。同情しているが故のこれら心の反応リアクション

 だが斬られた側近(かれ)は現に生きてしまっている。

 つまり……彼の不幸はこれで終わるはずがない!死ぬまで終わらないのか……?

 いや、官男がそれで終わらせるはずがない!それは後ほど分かる……。


 話を戻して――何時の間にか痛がっている側近かれの周りには、十を軽く超える衛兵達が剣を片手に囲んでいる。不意に顔を上げて自身の境遇に気付いた彼は再び――

「お……お助けをおおおおおっ!!」と官男に請い叫ぶも――虚しい結果に終わる……。

 そして、暖沼が――やれ!と言わんばかりに無言のまま顎で合図!

 直後――衛兵達がその側近かれを叩くように斬り始める!


「ぎゃああああああっ!!」

 ここに響き渡る件の側近(かれ)の断末魔の叫びに、肝を凍らせる側近達。

 衛兵達が壁になっているおかげで、側近達かれらは幸い現場を見らずに済んでいる。

 だがその分、叫びを集中して聞きやすい状況となってしまっている……。

 これにはその叫びを聞くに堪えず耳をふさぐ者や涙を流す者が出る始末……。

 これに官男は厳しい顔つきを崩さず、暖沼に至っては笑いをこらえて閉口……!


 そしてただの無残なしかばね(ちなみにこの時も幸いなことか。衛兵達が壁になっているおかげで、直接は見た者は衛兵達のみ)と化した件の側近(かれ)は、自身を殺害した衛兵達によって一つの棺に詰められ――何処いずこかへと運ばれていった……。

 その空の肉塊は本物のごみと同様に燃やされ、灰となった後に付近の“闇葬儀社”の手に渡る。それからその灰は、その“闇葬儀社かれら”の手で海に棄てられる運命。


 ちなみに『闇葬儀社』とは、この世界で暗躍する秘密業者の総称である。

 この世界では、人は生き返ると信じられているし、実際にそうでもある。

 それため、生き返らせたくないような奴は――灰にして海に捨てる必要がある。

 こうすれば、灰が大海に散ってしまい生き返らせることはほぼ“不可能”になる!

 しかし、この世界にも“魂” とか“幽霊”の概念はあり、箱越しでもそのししゃを手にしたら、そのししゃからの恨みを買ってしまうと信じられている……。

 このような経緯からだろうか。いつの時代からかは知らないが、ししゃからの恨みを買いたくない者に代わって、ししゃを処分することを生業なりわいとする者達が生まれたそうな……。無論、誰もがなりたくてなる訳ではないが……。

 なお、彼らの実体は本業や副業でカモフラージュされていることと、生活が苦しいが故その場しのぎで手を出す者達が多いので――全く把握しきれていないらしい……。


 ちょうど今になって――この場から衛兵達と件の肉塊が去っていった……。

 ここから残された者は、今も厳しい顔つきの官男と、今も笑いをこらえて閉口している暖沼。それと今も肝が凍っている側近達……。

 そんな側近達に向かって、官男が――

「いいか!! 過穀政権われら過穀みやこはまだ京賀てきの手に渡っておらん!!

 京賀軍やつら過穀みやこくには、畔河を落として進む他ない!!

 仮に落とせるとしても、我らを散々苦しめた猛己がそう簡単には倒れるやからか!?」と一喝!自分の信じる都合の良い事実を押し付ける!

 これに肝が凍ったままの側近達かれらは、簡単にそれを受け入れて――

「「いえ!! 同志主席の仰る仰る通りで通りでございます!!」」と一斉に大合唱!何か変!

 この時――側近達かれら全員の瞳から光が失せていたそうな……。


 同時に――その全員は官男についていったことに後悔している……。

 最初は「人民をむさぼる暴君(主に佞邪国の君主である幻釣を指す)を倒そう!」という官男のげきに感化されて――彼と共に決起したのに……。

 その直後のうたげにも「全ての暴君を打倒し、“万民平等”の世を目指そう!」というスローガンを一同志として、本気で信じて燃えてきたのに……。

 今となってはやれ「平等のため!」と人民に重税を課し、やれ「革命のため!」と人民に重い労役までも課している始末……。これで暴君との違いは五割程度。

 挙句の果てには――猛己との政争に明け暮れ、地方の文官どうしに税を着服されるの見逃す。これに勇気ある誰かが官男にこの件を申したが、即時に粛清ころされた!

 最早、暴君との違いは……ほぼない……。他を考えても、探すのが難しい……。

 もうここまでくると、側近達かれらの“革命”の炎は完全に燃え尽きていた……。

次回予告:頑張って、弱ってほしい、賊どもよ……。

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