表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
30/183

第二十九話:金川の戦い~傍矛の初陣~

数多の視線を一身に集める洲漕……。

 さて、集中された多数の視線を一身に浴びている洲漕ほんにんにとってはたまったものではない! 指揮官等の幹部ならともかく、彼はそこらのどこにでもいる一兵卒!

 絶対に、『視線』という名の圧力プレッシャーには耐えられない!

「わっ、私にも“名誉挽回”を……! そして――“汚名返上”の機会をっ……!!」

 結局、耐えきれなかった洲漕しゅうぞう。行きたくない内心とは反面に、外見上はやる気満々で行きたいと必死に演技! もっとも演技力は大根役者以下だが……。

 ――結果、会心の一発! 広間内の全員をだますことに――大成功!


 そして、申竜しんろうと洲漕から並々ならぬやる気を感じた傍矛ぼうむ

 傍矛かれはこの二人に向かって、勢いに任せて――

「お前達の心意気、俺が買ったあああっ!! 俺に付いて来おおおいっ!」と号令を下す!

「「ありがたき、幸せ!!」」

 号令を下された二人は、連動しているかのように畏まって応えてみせた……。

 それから間もなくのこと――

「よっしゃあああああああっ、狼煙のろしを上げろおおおおおっ!!

 集められる兵、全部集めてこおおおおいっ!!」

「おおおおおおおっ!!」

 傍矛の雄叫び交じりの大号令に、広間は熱狂に包まれていった……!



 これらの政庁の広間での出来事から、少し時を経て――推定時刻五時半前後。畔河しゅと周辺に展開している各警備小隊が、畔河しゅとからの狼煙のろしを確認!

 各部隊は大慌てで、各々の任地から畔河しゅとへと向かっていった。

 さらに少しばかり時を経て、猛己もうきが直率する過穀かこく方面の味方もこの狼煙を確認。畔河しゅとに危機が迫っていることを知った猛己かれはこれを黙認。――これが傍矛やつの初陣になるが、敵を追い払うくらいはできる! と計算して。

 この時、猛己かれの側近の一人から「傍矛が謀反を企てているやもしれません!?」という声が上がった。しかし、これに対し猛己は片手の握り拳を掲げてみせると……。

傍矛あいつが謀反を起こしてもなぁ、楽に捻り潰せる!」と子に対する信頼からではなく、子に関する知識と経験を以て豪語してみせたのであった……!



 話を進めて――推定時刻七時。日が落ちて――完全な夜になった時のこと。

 畔河しゅとの周辺の警備部隊の集結と出撃の準備が完了!

 余談だが、この時間までに畔河しゅとに駐留している部隊は、大慌てで出撃の準備と打ち合わせを済ましてしまったそうな……。


 さて……全部隊の準備が整った傍矛は即刻――

「出撃いいいいいっ!! 京賀の幼君ガキ共(陽玄とその一族郎党)を“教育”してやるぞおおおおっ!!」と号令を上げて、畔河を出陣!

 率いられる将兵達も「おおおおおっ!!」と雄叫びと共に出陣していった……!


 この時、傍矛が率いる部隊は――釜穀ふこく攻略の為に編成された部隊と小隊三個を有する警備隊(一個中隊規模)の計三百二十名。

 また、申竜は傍矛かれに付く従兵達の長として。同じく洲漕も申竜の部下として、傍矛かれに付くの従兵の一人として従軍していった。

 そして、畔河しゅとの警備に就いている部隊は僅か一個小隊四十名のみ。畔河しゅとの守備と治安維持の関係上、当部隊こいつらは絶対に動かせない。

 この畔河しゅとの部隊を除いて――出せる戦力を絞るに絞っての全力出撃である!



  せい歴八百四年四月一日 金川きんせん 傍矛の陣営 推定時刻八時

「何っ、『京賀軍やつらがいない!』っだとおおおおっ!?」

 陣営に響く傍矛の驚声きょうせい。いざ闘う気で強引に金川ここに来てみれば、戦う敵がいないというではないか! 無理もない……。

 ――せっかく、休まないで来たのに……。と他の者達も内心で嘆いている。

 でも、休んだ方がよくないか? むしろそうしない方が損じゃないか?


「はっ! 人民(金川の住民)達からの話によりますと、京賀の軍は金川ここを警備していた同志達を連れて、尽子じんし(京賀国の首都)の方へ引き返していったようです!」と申竜は冷静に、今もキョトンとする傍矛への報告を済ませていく。

 現在、彼は傍矛の副官としての職をも代行している。


 この世界の小隊長以上の地位にある者は、“副官”という者が補佐するようになっている。

 しかし、後継者争いの敗者である傍矛には「政府付(無任所大臣に相当)」と言えども、『副官』はおろか、今日の夕方までは『従兵』という者さえ付いていなかったのだ!

 それ故に、従兵長である申竜が副官の職を代行せざるを得なかった……。

 そして、今日が初陣となる傍矛にとって頼れるのは――申竜のみ。必然であった!

 しかも、指揮下の各小隊長達とも違い、どこか自分を見下しているような目をしてこないのなら、尚更なおさら必然ことであった……!


 傍矛は早速、「どうする?」と申竜を頼ることにする。人選は外れていないのだが……。

次回予告:どうする?し・ん・ろ・う~っ!


今回の登場人物

*佞邪救国政府畔河政権

猛己もうき:畔河政権主席兼校尉(同政権の最高司令官)。頭に血が上りやすい豪傑。

傍矛ぼうむ:畔河政権付(無任所大臣相当)。猛己の長男。後継者争い敗者。

申竜しんろう:一分隊長。武将を目指しているがヘタレ。

洲漕しゅうぞう:申竜の部下。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ