コミカライズ開始記念SS『研究するソフィア』
ソフィアは研究室で研究していた。
それはもう熱心に。
「ううん……ここがこうで、あれとあれを混ぜれば……」
ソフィアは机に向き合い、傍らにおいたランプの明かりを頼りにしながら、手元の紙に羽ペンでカリカリと文字、そしてたまに図形を書き込んでいる。
手どころか袖さえもインクで真っ黒に汚れてしまっているが、今のソフィアにはそんなことは全く気にならなかった。
それを遠くから呆れたように見つめている人間がいた。
「はぁ……あの子にどうやって研究をやめさせようかしら……」
ソフィアの親友と呼べるアメリアだった。
アメリアは机にかじりついているソフィアを見て額に手を当てる。
このままでは確実に体を壊してしまう。
しかしアメリアはソフィアに研究をやめさせられないでいた。
ソフィアにとって魔術の研究は猫にマタタビ。
一度手を付けてしまえば止められない。
少しでも辛そうなら止める側も罪悪感なく切り上げさせることもできるが、ソフィアに関しては徹夜しても辛そうどころか楽しそうに目を輝かせて研究を続けるので、周囲の人間もソフィアを止め辛かった。
その上研究を止めるように忠告したら、素直な性格なので言われた通り研究を辞めるものの、まるで捨てられた子犬のような表情でしゅん、と落ち込んで罪悪感を増幅させるのでたちが悪かった。
「ソフィア、何度も言ってるけれど、少し寝たほうが……」
「あ、あと少しだけ、本当に少しだけ……」
ガリガリガリ、とソフィアはペンを走らせ続ける。
こっちの話はまるで聞こえていない。
ソフィアは研究に没頭すると周囲の声が聞こえないことがあった。
ここまで集中しているソフィアに対して言うことを聞かせることができる人間は、たった一人しかいない。
「……」
そこでアメリアは最終手段に出ることにした。
ソフィアはひたすら頭の中の考えを紙に出し続ける。
その時だった。
「へ?」
不意にペンを持っている手に手が重ねられた。
そして後ろから抱きついた人物に耳元で囁かれる。
「ソフィア」
「レ、レオ……」
そこにいたのはレオだった。
「まだ研究をしているのか?」
「う、うん。そうだけど……」
「最後に寝たのはいつだ」
「………………その、もう少しだけ、研究を続けたくて」
「いつだ」
至近距離でレオの目に見つめらられて、逃げられなくなったソフィアは目を逸らしながら答えた。
「………………ふ、二日前」
「……」
レオは目をすっと細めると何も言わずにソフィアから離れる。
「で、でも、ちゃんとご飯は食べてるからだいじょうぶ──」
目を泳がせながら言い訳を始めた瞬間──ふわりと持ち上げられた。
「レ、レオっ?」
「このままベッドへ運ぶ。少しは睡眠を取れ」
ソフィアをお姫様抱っこで抱えながら運ぶレオ。
頬を朱に染めながらもソフィアはレオの腕の中でもがいた。
「ま、待ってレオ。もう少しなの。あとちょっとだけ書かせてくれればいいの」
逃れようともがくも鍛えているレオはびくともしない。
逆にその腕で包まれてしまう始末だ。
研究にしか目がないソフィアにレオはため息を付いた。
「もう研究は駄目だ。何日寝ていない? このままだと体調を崩すぞ」
「で、でも、今書かないと明日忘れるかも……」
「ベッドに寝かせた後にメモ用紙を持ってこよう。手のひらサイズの。そこに忘れないように要点だけ書いておくと良い」
手のひらサイズでは書けるスペースが小さい。
両面を使って小さく文字を書けばいけるか? いややっぱり無理だ。
どうあがいてもこれ以上研究を続けさせるつもりはないらしい。
レオの腕から逃れる方法はソフィアにはなく、もう打つ手はなかった。
「さ、それでいいな」
「あ、あぁぁぁ……」
情けない声をあげて、机の紙とペンに手を伸ばす。
しかし無惨にもその手は届かず、ソフィアは研究室に置いてるベッドまで運ばれると、ふわりとベッドの上に寝かされた。
一度机から離されたことで緊張の糸が途切れたのか、急に睡魔が襲ってくる。
「メモ、を……」
「ゆっくり休め、ソフィア」
意志に反して閉じていくまぶたの先には、珍しく微笑んでいるレオがいる。
この表情、なんだかいいな、と思ったときにはもうソフィアは眠りについていた。
翌日、アメリアに「いいものが見れて良かった」と言われ、ソフィアが顔を真っ赤に染めたのはまた別のお話。
「虐げられの魔術師令嬢は、『氷狼宰相』様に溺愛される」のコミカライズがスタートしました!
すでにコミックシーモア様で1話が無料公開されています!
くろこだわに先生のソフィアがめっっっっちゃ可愛いので、ぜひ皆さん見てください!
見た後はレビューもしていただけると嬉しいです!
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