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【コミカライズ化!】虐げられの魔術師令嬢は、『氷狼宰相』様に溺愛される  作者: 水垣するめ
二章 『氷狼宰相』様と婚約した私は溺愛されます!

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58話 真実の愛と敗れた恋

3回目投稿。まだ読んでない人はそちらからどうぞ。

 それは、ソフィアがレオが来るのを門の前で待っていた時だった。

「っ……!」

 急にソフィアの身体に異変が現れた。

 身体が熱くなり、激痛が同時に走り抜けた。

 自分も異常を察したソフィアはすぐに屋敷の中に入り、自分の部屋へと向かった。


(何か毒を盛られた……? それとも病気に……! どちらにしろ、部屋に薬があるからそれを飲まないと!)


 急いで屋敷の中に入ると、使用人が焦っているソフィアを見て声をかけてきた。


「ソフィア様! やっぱりずぶ濡れじゃないですか! 今すぐに温かいお湯に……」


 ソフィアはそれに返事を返さずに歩き続ける。


(どんどんと身体の熱と激痛が強くなっている。もう視界もぼやけてきた。今すぐに薬を飲まないと……!)


 ソフィアは自室の扉を開ける。


「うっ……!」


 身体に激痛が走り、ソフィアは床に膝を突いてしまった。


「何、これ……!」


 手を見れば、煙が上がっている。

 更なる激痛が襲ってきて、ソフィアは呻き声を上げた。

 そして、身体に変化が起こった。

 みるみるうちに、手が大きくなっていった。

 加えて身体も膨れ上がって、元のソフィアよりも二回りは大きくなっている。


「何これ……」


 ソフィアは訳が分からずに声を上げる。

 しかしその声も野太く、まるで人間の声じゃないような声が出てきた。


「か、鏡……!」


 ソフィアは自分の部屋にある鏡を慌てて探した。

 そしてソフィアは鏡に映る自分の顔を見て、絶望した。


「嘘……」


 ソフィアが鏡を見たそこには。

 醜いオークに変わり果てたソフィアが映っていた。



 それから、ソフィアは必死に呪いを解こうとした。

 この醜い自分の姿をレオが見て嫌われないように、必死で自分の姿を治すために奔走した。


「早くしないと! 早く、呪いを解かないと!」


 ソフィアは呪いを解くために、必死で魔術薬を調合していた。

 醜い身体が見えないように、ベッドのシーツで身体を隠した。

 薄暗い床には様々な魔術素材が転がっており、幾つもの組み合わせを試した跡があった。

 この屋敷の使用人と、両親に手伝ってもらい、ありとあらゆるところから素材を取り寄せ、何とか呪いを解くことはできないかと魔術薬を作り続けた。


 だが、成果は全く現れなかった。

 呪いを解けるのは、かけた本人だけ。それか、ここまで強い呪いなら解くための条件が加えられているはずなので、それを達成するしかない。

 呪いに関して、魔術薬で解くことができた、という事例は存在しない。

 しかし、今すぐにでも呪いを解かなければならない理由があった。


「レオに、レオに嫌われる……!」


 今の自分の姿を見たレオは、きっと失望することだろう。

 嫌悪感を表すレオの顔を思い浮かべるだけで、頭の中を恐怖が支配する。

 まともに思考すらままならない中で、ソフィアは呪いを解こうと足掻いていた。


 レオが何度も訪ねてきたが、その度に体調不良だと言ってレオを追い返した。

 その度に届くレオからの贈り物と、扉の向こうから伝えられる「愛してる」という言葉を聞くたびに、ソフィアは一刻も早く呪いを解かなければならないと焦った。

 だが、ソフィアの焦りに反して、呪いは解けなかった。


 そして、ついにレオがソフィアの部屋の前へとやってきた。

 一週間が過ぎた頃、流石に違和感を感じたレオが無理やりソフィの部屋の前へとやって来たのだ。


「ソフィア」

「レオ?」


 ソフィアはつい返事をしてしまい、口を手で押さえた。

 自分の声はオークのように野太く醜い声に変わってしまっていたので、悟られてしまうかと思った。


「ソフィア、風邪だと聞いていたが、大丈夫か」


 レオの質問に、ソフィアは消え入るような声で返事をした。


「……大丈夫、もう少しで治るから、今日のところは帰って──」

「風邪は治っているだろう」


 レオの鋭い質問に、ソフィアは言葉を途絶えさせた。

 そんなソフィアの反応を見て、レオがさらにソフィアに質問してくる。


「何かあったんじゃないのか」


 ドアノブに手がかかった音が聞こえた。


「開けるぞ──」

「駄目っ!!」


 ソフィアは思わず叫んだ。

 ドアの向こうのレオが少し怯んだ気配がした。


「ごめんなさい……もう少ししたら治るから。本当だから」


 ソフィアは消えそうな声でレオに謝った。


「ソフィア」


 扉の向こうから声が聞こえる。


「ソフィアは、初めて俺の夢を笑わないでいてくれた。手を貸すと言ってくれた。だから、今度は俺が力を貸す。二人ならどんな困難を乗り越えられるはずだ」


 レオの言葉を聞いて、それでもソフィアは扉を開けることができなかった。

 だから、正直にレオに話すことにした。


「私は……呪いを受けたの」

「ッ!!」


 ソフィアは自分が呪いにかかってしまったことを告げた。

 どんな呪いにかかったのかは秘密にして。


「だから、どうしても今はレオには会えない。大丈夫、お父様もお母様も色んなところから呪いを解くための素材を集めてくれてるの。絶対に、この呪いを解いてレオに会いに行くから」


 できるだけ明るい声を作って、ソフィアはレオにそう言った。


「俺も手伝う」

「それは、……駄目」

「何故だ、俺はソフィアを」

「ごめん、けどレオにだけは絶対に見られたくないの。本当にごめんなさい……」


 自分も手伝う、とレオが言い出したが、ソフィアはそれを拒絶した。

 どんな呪いにかかったのかをレオに言いたくなかった。

 もしソフィアがオークのような顔に変わってしまったと知ったら、レオがどんな反応をするのか恐ろしかった。


「……わかった」


 扉から離れていくレオの足音を聞いて、ソフィアは泣きそうになった。



 それからしばらく時間が空いて、レオが戻ってきたようだった。扉の外からレオの声が聞こえる。

 今度は何の用だろう、と考えているといきなりドアが蹴破られた。

 ソフィアは驚きのあまり声が出なかった。

 廊下から指してくる明かりと共に、レオが部屋の中へと入ってくる。


「レ、レオ……!?」


 レオが近づいてきた。

 ソフィアは重い身体を引きずってレオから遠ざかる。


「やめて! 来ないで!」

「ソフィア」


 ソフィアはまたレオから遠ざかる。

 こんな醜い顔を見せるわけにはいかない。

 この顔を見せたら絶対に自分から離れていくに決まっている。

 だからこそソフィアは逃げるしかなかった。

 しかしとうとう部屋の角まで来てしまい、逃げ場がなくなってしまった。

 それでもまだ逃げようとソフィアは壁へ壁へと体を寄せる。


「見ないで、レオ! 私の顔を見たら、絶対に嫌いになる!」

「俺はたとえソフィアがどんな顔になったとしても、ソフィアを嫌いになったりしない」


 不思議と、その言葉でソフィアの動きが止まった。

 レオがシーツに手をかける。

 そしてゆっくりとレオがシーツをめくる。

 ソフィアの顔が露わになった。


「……ッ!!」


 レオはソフィアの顔を見て、目を見開いた。

 ああ、きっとレオは失望しただろう。

 醜く変わり果ててしまった自分を見て、嫌悪感を抱いただろう。

 レオの瞳を見て、ソフィアは涙をこぼす。


「ソフィア」


 オークの顔の頬に手を触れる。

 そして──レオはキスをした。

 醜悪で、口から漏れ出る息は臭く、嫌悪感を抱いてもおかしくないようなソフィアに、レオは躊躇うことなく口付けをした。

 ソフィアは目を一杯に開く。

 長いキスの後、レオはソフィアから顔を離した。

 そして一言、ソフィアに告げた。


「勘違いするな。俺は見た目だけでソフィアを好きになったわけじゃない」

「レオ……っ!!」

「ソフィア、覚えておいて欲しい。ソフィアがどんなに変わり果てたとしても、俺はソフィアを愛しているのだと」


 どんな見た目の自分でも、レオは嫌ったりしなかった。

 ソフィアはそれだけで救われた気持ちになった。

 そして同時に、レオの言葉を信じなかった自分の浅はかさを恥じた。

 その時、ソフィアの身体に異変が起こった。

 ソフィアは胸を押さえて蹲る。


「うっ……!」

「ソフィア!?」


 オークに変わった時のように身体に熱と激痛が走り、ソフィアは呻き声を上げる。

 ソフィアの身体から煙が上がり、太くなった腕や、身体が萎んでいく。

 そして最後は元のソフィアの姿へと戻った。

 激痛が納まり、ソフィアは顔を上げる。


「戻っ、た……?」


 ソフィアは元に戻った自分の腕を見て、呟く。

 そしてすぐに鏡を見て、自分の姿が人間であることを確認して、安堵の涙を流した。


「良かった…………良かったぁ……」

「ああ、本当に良かった」


 レオはソフィアの肩を抱いた。

 涙を流しながら、ソフィアの頭に疑問が湧いた。


「でも、なんで急に呪いが解けて……」

「それは恐らく、呪いを破る条件が『ソフィアにキスをする』だったからだろう」


 そう答えるレオに、ソフィアは驚いた目を向ける。


「えっ……レオ、呪いを破る条件が分かってたの……?」

「ああ、呪いを破る条件があると奴に聞いていたからな。性格の悪いあいつのことだ。呪いがどんなものかも、どうすれば呪いを破れるのかも大方見当はついていた」


 ソフィアはレオがそこまで鋭い洞察をしていたことに驚く。


「オークの顔になったソフィアにキスできない俺を見て、『所詮その程度の愛だ』とでも嗤うつもりだったんだろう。だがそれは大きな間違いだ。俺はソフィアがどんな姿になったとしても、迷わずにキスできる。なぜなら、俺はソフィアを心から愛しているのだから」


 そのレオの言葉に、たまらないくらいに愛おしい感情がソフィアの中で溢れ出した。


「レオっ……!」


 ソフィアはレオに抱きついた。

 レオはいきなり胸に飛び込んできたソフィアを受け止める。

 そしてソフィアの頭を優しく撫でた。

 ソフィアは涙を流してレオに謝罪する。


「ごめんなさい。私、レオのことを疑って……それに試すようなことも……!」

「いいや。俺も悪かった」


 ソフィアは強く、強くレオを抱きしめる。


「ありがとう……! 愛してる……!」

「ああ、俺も愛してる」


 レオは優しく微笑む。

 そして、ソフィアはレオにキスをした。





 そして、王都の外れ。ロベリアが収監されている塔にて。


「ごほっ……!」


 ロベリアは咳をした。

 手を見ると、そこにはべっとりと血がついていた。

 呪いが破られたことに対する代償だ。


「そう……条件を見破られたのね」


 ロベリアはもう一度血を吐いた。

 身体には力が入らなくなり、床に倒れた。


(これは死ぬわね……)


 ロベリアは冷静に自分の状況を判断した。

 ソフィアの顔を豚にする代わりに自分の命を代償にしたのだから、特に疑問はなかった。


「でも、意外。豚の顔になったソフィアにキスなんてできないと思ってた。所詮、その程度の愛だと思ってたのに、キスなんてできたんだ」


 オーク顔の婚約者なんて、すぐに嫌悪して離れていくと思っていた。

 だけど、違った。レオはソフィアにキスをした。

 これはレオがロベリアの予想をはるかに上回っていたことの証拠だった。

 ロベリアはレオのソフィアへの愛を測り間違えた。

 命をかけて愛していると言っていたくせに、結局レオのことを理解などしていなかったのだ。

 皮肉な結果に、ロベリアは口の端から血を流しながら自嘲する。


「それに、そもそも条件には気づかないと思ってた。だって、あの人、私に全く興味がなかったんですもの。恐らく、偶然当たったというところかしら?」


(いや、違う)


 その時、ロベリアの頭に記憶が蘇ってきた。


『それでは、これが最期の別れになる。さらばだ』


 なぜレオは最期の別れを告げたのか。

 あの時は犯罪者として一生を塔で暮らすことになるロベリアに宛てた挨拶だと思っていた。

 しかし、本当は気づいていたのだとしたら──


「ふふ」


 ロベリアは薄く笑う。


「恋は盲目というけれど、本当ね」


 ロベリアは恋に目が眩み、何も分かっていなかった自分を自嘲した。

 しかしすぐにロベリアは自分の言葉に疑問を持った。


「…………いえ、これもウソね」


 ロベリアは自分で自分の言葉を否定する。

 自分は本当に盲目だったのだろうか。

 レオのことを理解していなかったというけれど、本当に?

 本当に自分はレオのソフィアへの愛を侮り、自分には興味を持っていないと思い込み、呪いの条件を決めたのか。

 全て見破られると分かっていた上で、そうしたのではないか。

 ロベリアは口元に薄っすらと笑みを浮かべる。


「ふふ、心から愛しているわ。レオ様」


 最期に、ロベリアはレオへの愛の言葉を呟いた。

 窓に嵌められた格子の隙間からは、月明かりが差し込んでいる。

 ロベリアはその月を見ながら、ゆっくりと瞳を閉じて、永遠の眠りについた。

あと1話で完結します。

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― 新着の感想 ―
私はロベリアがどうしても嫌いになれなくて、ロベリアが回帰?してレオとやり直す物語も読んでみたいなと思った。
呪詛返しとして同じようにロベリアにはオークになって欲しかった。 因果応報でしょ。静かに死なせるのは納得いかないなあ
ロベリア、あっさり死んでモヤモヤした。どうせ死ぬならもっと見苦しくみっともなく死んで欲しかった。
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