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【コミカライズ化!】虐げられの魔術師令嬢は、『氷狼宰相』様に溺愛される  作者: 水垣するめ
二章 『氷狼宰相』様と婚約した私は溺愛されます!

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48話 デルムの反撃(2)

文字数が多かったので分割しました。

3回目投稿。まだ見ていない人はそちらからどうぞ。

「ここは……」


 レオはその店に掲げられた看板を見上げる。

 ソフィアがやって来たのは、フレッドの素材屋だった。


「……」


 ソフィアは多くを語らず、フレッドの店の中に入っていく。

 店のドアを開けるとカランカラン、と鐘の音が鳴って来客をフレッドに知らせた。

 カウンターに座っていたフレッドは、高級素材から顔を上げる。


「あれ、ソフィア様? それに宰相様も……。一体どうなさったんですか?」


 フレッドはソフィアとレオが来たことに少し驚いたような、何かに怯えるような表情になり、なぜここに来たのかを質問した。


「少し聞きたいことがあるんだけど、今時間は大丈夫?」

「えっ? ……ええ、はい。大丈夫ですよ。立ち話も何ですし、奥へどうぞ」


 フレッドはソフィアとレオをいつもソフィアが高級素材を購入する部屋へと通した。

 ソフィアとレオはソファに座ると、フレッドが二人に紅茶を出し、二人の対面に座った。


「それで、お話とは一体何でしょうか。あ、まさか、また高級素材を買いに来たんですか? 申し訳ありませんが、まだ高級素材は仕入れてないんです。普通の素材なら揃っているんですが……」


 フレッドは笑顔でソフィアに対応していたが、その笑顔は少し引き攣っていた。

 ソフィアたちがやって来た理由に心当たりがあるのかもしれない。


「私のことを教えたのは、フレッドだよね」

「っ……!」


 ソフィアは直球でフレッドに質問した。

 フレッドは息を呑む。

 やっぱり、とソフィアは心のなかである程度分かっていたことが確信に変わったことを理解した。


「な、何を言っているんですか……」

「……『水障壁』を発明した時、それを話したのは家族と、フレッドだけなの」


 ソフィアがそう言うと、フレッドの肩がビクリ、と震えたように……見えた。

 本当は、全部勘違いで、何かを見落としていて、フレッドが犯人じゃなければ良い。

 そんなことはあり得ないのに、全て勘違いであって欲しいと思いながら、ソフィアは話し続けた。


「それなのに、デルム様はどこからか『水障壁』のとを聞きつけて、奪って行った」

「で、ですがそれだけでは……」

「それだけじゃない。今回も、デルム様たちは知っていたみたいに私たちがいない時に研究室に押し入ったし、私が新しい魔術を開発したのも知ってた。こんな都合のいい話があると思う?」

「で、ですが俺はそんなことはしていません……。そ、そうだ! 誰かから聞いたとかでは?」

「盗賊団の討伐の予定を話したのも、新しい魔術を開発したのを話したのも、フレッドだけなの」

「──」


 その時のフレッドの顔は、言葉に表せないほど沢山の感情が渋滞しているように見えた。

 ソフィアは友人に裏切られたことに心を痛ませながら、フレッドの目を見た。


「私はそれだけフレッドのことを信頼してたのに、どうしてこんなことをしたの……!」


 今まで信頼していたフレッドに裏切られたソフィアは、悲しい声でフレッドに問う。


「…………申し訳ありません。本当に、申し訳ありませんでした……!」


 フレッドは震える声で、ソフィアに謝った。

 フレッドは地面に膝を突いてソフィアに土下座する。


「第二王子と通じていたと、認めるということだな」


 レオからは冷たい殺気が溢れ出ていた。

 フレッドはさらに震えながらもソフィアに謝罪し続ける。


「本当に申し訳ありません……! ソフィア様がどれだけ労力をかけて魔術を開発していたのかも、大事にしていたかも知っていたのに、俺は……! 俺は……っ!」

「フレッド、落ち着いて。どうしてこんなことをしたのか話してくれる?」

「そ、それは……」


 フレッドが目を泳がせた。


「分かってる。デルム様に脅されてるんでしょ? フレッドがそんなことをするなて、それしか理由が思いつかないし」

「っ……! 申し訳ありません……! 申し訳ありません……!」


 フレッドは泣いてソフィアに謝る。

 この反応は、やはりデルムに脅されていたということだろう。

 フレッドの人柄を知っているソフィアとしては、デルムに脅されていたとしか思えない。


「フレッド、何があっても私が守ってあげるから、正直に話してくれない?」


 ソフィアはフレッドの手を取り、両目を見てフレッドにそうお願いした。

 フレッドはソフィアへと真実を話し始めた。


「ある日、デルム様がこの店にやって来て、ソフィア様が何か新しい魔術を開発したり、実験をしているようなら自分に教えろ、と命令して来たんです。従わなければ、殺すと……」


 平民であるフレッドが第二王子であるデルムにそう言われたら、従わざるをえないだろう。

 フレッドは自分の命を守るために、仕方なくソフィアの情報をデルムに手渡した。


「一度教えてからはしばらくは接触して来なかったのですが、最近また俺に接触してきて、ソフィア様の情報を教えるように脅されて……」

「なるほど、だいたい分かった。ありがとう」


 ソフィアはフレッドにお礼を言う。


「ふざけている……王族が平民を脅すだと……!?」


 一方で、レオはデルムに対して憤っていた。

 スラムを一刻も早く無くす、という信念を抱えているレオにとっては、デルムの所業は許し難いことだったらしい。

 ソフィアもそれは同意見だ。


「反撃のしようがない平民を権力を使って脅すなんて、本当に汚いやり口です。私も許せません」

「とりあえず、ことが終わるまでは俺の屋敷で匿っておく。それで良いか」

「はい、私はそれで大丈夫です」


 ソフィアは頷いた。

 フレッドはレオの言葉に涙を流した。


「そんな……裏切った俺を匿ってくださるなんて……! この償いは必ずします! 本当に申し訳ありません……!」

「フレッド、状況によっては手伝ってもらうけど、良い?」

「もちろんです! 罪滅ぼしとしてどんなことでも協力させていただきます!」


 フレッドの協力は得ることができた。

 ソフィアは一旦、荒らされた研究室へと戻ることにした。




 そして研究所に戻ってくると、扉の前にはデルムが立っていた。

 ソフィアは一歩後退り、


「デルム様……!」

「ソフィア! やっと戻ってきたか!」


 デルムはニヤニヤと卑しい笑顔を浮かべてソフィアを見ている。

 ソフィアが研究所に来たという報告を聞いてやって来たのだろう。

 やって来たのは、悔しがるソフィアの顔を見るためと、恐らくソフィアに対して仕掛けるためだ。

 デルムはすぐに怒りの表情を取り繕い、ソフィアを非難した。


「この盗人め! 俺の魔術を奪っただろ!」

「私はそんなことをしていません」

「そんなことを言っても、魔術の論文も、何もかも俺の手元にある! 俺の魔術を奪って権利を登録したことは変わらない!」

「っ……!」


 確かに、今ソフィアの開発した魔術の論文の全てがデルムの手に渡っている。

 ソフィアが自分の魔術として権利を主張しようにも、その証拠がなのが現状だ。

 言い返せないソフィアを見て、デルムは愉悦がこもった笑みを浮かべる。

 そしてデルムはソフィアを指差した。


「お前を裁判にかけてやる!」


 デルムがそう言うと、デルムの後ろに立っていた人物が前に出てきた。

 ソフィアはその人物を見たことがあった。裁判所に勤めている法務官だ。

 二人の法務官は、脇に抱えていた丸められた紙を広げる。


「ソフィア・ルピナス様! 貴方様には第二王子であるデルム・エーデルワイス様より魔術盗用の疑いがかかっています!」


 法務官がそう読み上げたと言うことは、ソフィアの魔術盗用が正式に認められたということだ。

 実際はその処理をするのに、本当に盗用があったのか調べる時間がかかるはずなのだが、デルムが主張してから一日も経たないうちにその主張が認められた。

 確実に、法務官はデルムに抱き込まれている。


「そ、そんな……! 事実関係を調べるのに最低一週間はかかるはずです!」

「デルム様の主張は法務局で認められました。私どもで覆すのは不可能です!」


 法務官は困った顔でそう言った。

 どうやらこの法務官たちよりも、もっと上の地位の人物が買収されているらしい。

 法務官は意に反することだったとしても、従わざるをえないのだろう。


「ハッ! この通りだソフィア! お前には逃げ場はないんだよ!」


 デルムは高笑いを上げる。

 そんなデルムを横目で見ながら、法務官は紙に書かれている文章の続きを述べた。


「今日の午後より、裁判所で裁判を行います。必ず出席するように願います」

「だ、そうだソフィア。逃げるなよ? ま、裁判に出席しなくても、俺の魔術になるだけだから問題ないがな」


 デルムは勝ちを確信しているのか、勝ち誇った笑みをソフィアへと向けて、去っていった。


「……っ!」


 ソフィアはその背中を睨みつけることしかできなかった。

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