二百九十二日目
数日前、ミールが産気づいた。その際、触診など行ったんだが、やはり軟骨が硬かったのでイリの体液を提供してもらい服用してもらう。狙い通り軟骨が弛緩し、お産がスムーズに。その後は少し苦しいくらいであっさりと終わった。今までの産卵方法が骨盤ズタボロになるので、かなり不安だった様だが、あっさり終わって安心した様だ。
で、その後は妖精の里で行われていた手順を実施。簡単に言うと清潔に保ち、卵の温度を下げない様注意するだけなんだが。見守ること数時間、卵が割れ、中から粘液に包まれた小さな花妖精が!
現在は元気に声をあげる赤子がミールにあやされている。授乳も行ったが問題なさそう。元気に吸い付いていた。これが正しい方法と理解し、両名共に関心し唸っている。まあ何かあったらイヤなので俺も常時監視している。特に異常な点は見られない。
ちと気になると言えば、魔力量だろうか。イリの血を引いたのが原因か、それとも二人の食事となっていた俺の提供する蜜の原因か。かなり高い。
まあ精気に関しては問題なかろう。俺で十分賄えるはずだ。
でだ、もう一つ良い事があった。監禁されていた花妖精5名に理性が戻った。まだ意識が混濁している様だが、受け応えなども出来るようになりつつある。どうも赤ん坊を見た・・・または何らかの加護欲を促すフェロモンの様なものがあったのか。赤子が理性を戻す突破口になったのは確かなようだ。
現在、赤子の体液などを色々採取し、薬毒生成の技能で誠意調査中。もしかしたら理性消失に対する特効薬になる可能性が高い。これにはイリ達も大興奮だ。
俺は触手を使って赤子のゆりかごを作っている。傍らではミールが赤子の腹に手をのせ、なにか歌を歌っている。子守唄だろう。イリはそんなミールに寄り添っている。うむ、家族が増えるのはイイネ!
一応、子供が出来た事は第一報として妖精の里へと伝えている。また新しい、いや本来あるべき子作りについて試しているとも伝えてあるが、かなり興味を持たれている。早く教えろとせっつかれているらしいが、こればかりはある程度安全性を見極めえからじゃないと危なくて伝えれない。
まあ今見る限りだと問題なさそうではあるが。
あ、そう言えば教国の勇者様(笑)に関してだが、旅路は遅々として進んでいない。
まず出発の式典では、大人数の教国住民に見守られつつ盛大にパレードを実施。奪われた花妖精を教義に従い取り戻して来る!
とかほざいていた。ナニ言ってんのコイツら。まずもってお前たち教国が攫った花妖精ではなくて他国が囲ってた訳で、それを取り戻すとか。それを言うなら奪うだろうに。
まあ周りの市民たちもワーワーと声をあげてたので、当たり前の認識なんだろう。吐き気がするわ!
で、ムカついたので出口の手前で馬車の車輪を腐られてやった。盛大にぶっ壊れる馬車。馬車の屋根から手を振っていた勇者(笑)は顔から地面へどダイブ。中々楽しい式典に出来た。
新しい車輪に変えて旅路を進めるも、休憩のため停止すれば車輪が腐ると言う事態に見舞われている。やっているのは俺だが。
と言うことで殆ど進めていない。到着するの年単位でかかるんじゃね?
どうも金属で出来た車輪を用意しようとしている様だが・・・ごめん、金属も脆く出来るんだ。クサレ茸さん、ハンパないです!
と言うことでしばらく放置予定。
で、最大戦力と思われる勇者様が教国を離れたところを見計らって、妖精喰らいさんに出張って貰ったんだが・・・。拍子抜けするように簡単に奪取できた。ローション方式がヤバイ。これはあかんやつですわ。相手さん、マジで何も出来ないご様子。一応水魔法やら火魔法などで対抗されたんだが、すまん、俺、魔法吸えるのよね。
到達する前に威力を失う魔法。で、残るのは微々たるモノな訳で。俺の持つ莫大な魔力および生命力を打ち抜く力は無い。
あとローションに水はダメだと思います。ええ、嵩が増えて更に被害甚大になっていた。神殿から溢れる粘液。階段を滑り落ちる聖戦士の群れ。もはやコントレベルだったな。
そんな一報が勇者(笑)に伝わって、急いで向かえとせっつかれている様子。勇者様がイライラ度MAX。エルフさん達に突っかかるも、精霊が威嚇するので手が出せず。まあ、お付きの者たちへとその矛先が向くわけで。
そんなお付きの者も教国民なので可哀そうだが放置。
このまま諦めて欲しい所だが。さて、問題はエルフさんをどうするか。隷属魔法は魔素吸収で無力化して解放できると思うが・・・ここで解放していいのかね。話を聞くにしても俺にはコミュ能力は無い。音声を出せないからな!
触手使ったりして試したんだが、ブリュブリュと卑猥な音しか出せなかった。
話し合い・・・そうだな、方法としてはイリ達に出張って貰う事だが。あとは精霊と話し合うか?
いや、精霊は俺を嫌ってる。まあ最悪吸い尽くされてしまう可能性がある相手には近付かないだろう。俺の口腔内でイリ達も魔法は使っているが、あれは低位精霊による魔法の行使だから出来ると言っていた。低位精霊は明確な意思を持っていないから出来る芸当の様だし。うーん。
イリ達に出張ってもらうと危険。本体付近が一番安全なんだが、そうなると俺が危険に。まあ俺の所まで来てもらうのが一番かな。その辺もイリ達と話し合って方針を決めるとしよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
話し合った結果、勇者(笑)には来てもらう必要は無い。もうその場でお亡くなりになって貰おう。と言う事になった。
『なんでココに呼び寄せる必要があるの?』
と言う、至極全うなお言葉で気が付いた。俺、ファンタジーにありがちな勇者との直接対決パターンに従い行動しようとしていたみたいです。いやはや何故来てもらおうと思ったのか。普通に考えたら全く必要ないよね!
エルフたちは魔法が厄介だが、精霊に魔力もとい魔素を提供できなければ何も出来ないらしい。これは花妖精も同じとの事。ならば触手攻めするしか無い。と伝えると、イリ達にジト目で睨まれた。エルフを助けるためなんだ、信じて欲しい。
まあ安全を期して、勇者(笑)の耐性がどの程度あるのか見極める事にする。野営、と言っても監視はエルフやその他お伴に任せ爆睡している勇者様にネムリ茸によるスリープアタックを実行してみた。元から寝てるから分からないと言う結果に。
よし、もう自重せずにボッシュートで行こう。簡易テントで休むエルフ、起きて警戒をするエルフ2名。地面を掘り竪穴を作成。勇者様には消化液や腐食液など毒・・・いや薬オンパレードの俺謹製胃袋をご用意。馬車ごと行って貰うとしよう。ちなみに馬はその辺で休んでますヨ。
3時間ほどして準備完了。エルフたちは地面から音がする事に気付いてたっぽい。ミシミシやらゴリゴリやら音鳴ってりゃ判るわな。
まあ、もう遅いが。朝日が地平線に顔を出したと同時に支えていた地面を離す。自由落下を始める地面。反応できず穴に落ちるエルフ3名。馬車ごと薬液へとダイブする勇者様一名。
・・・・・・・。
大規模な落とし穴もヤバイな。勇者様は流石に人間を辞めていた様でなんとか脱出しようと頑張った様だが、追加で放出された粘着液に触手固めも加わってあえなくドロドロに。かなり時間がかかったんで正直グロすぎる。なんなのあの人間。もう人間の域じゃないな。溶けながら生きてるとかどうよ。ファンタジー恐過ぎだわ。
エルフ3名は魔法を行使しようとしたらしいが、その時すでに魔素吸収の範囲内。精霊も近付けずにオロオロ。あとは触手で拘束して落ち着くのを待つ。10分ほどして何もされない事を理解したのか落ち着いた模様。
あとは拘束具へと触手を這わせ、魔素をゆっくり吸収し・・・
ちょっと、待機してた精霊さんたち、なにしてんの。魔法撃たない!
やめなさい!
首しめようとしてるんじゃないの。隷属魔法がかかった首輪を無力化しようとしてるの。よく見てお願い!
って言っても分からんわな。自らの力を振り絞って魔法を使うその姿は涙を誘うが、それは俺の糧となってます。
5分ほどして拘束具が力を失った模様。もう魔素が吸えない。ので、エルフを吐き出す。
ネトネトになりつつ驚いてるな。妖精喰らいの親玉に化けて姿を現してみる。イメージとしては最後の幻想物語5に出て来る砂漠イモムシだ。重力魔法を使う。おおうビビってるビビってる。
勇者が身に着けていた剣と防具を吐き出す。なんなのこれ、殆ど腐食してないんですけど。あれか、神の金属ってやつだな!?
ミスリルとオリハルコン。流石幻想郷。しばし対峙した後、地面へと戻る。菌糸へと吸収して終了。
観察様に生やしたキノコから様子見するが、エルフ3名は話し合った後、剣と鎧を持って道を走り出した。どうやら逃げるらしい。
勇者様(笑)の侵攻作戦はこうして結末を迎えた。




