ちょっとひとやすみ
「だから言っただろう。話を聞け。忘れずにメモを取れ。何より、ちゃんと確認しろ、と」
「ふぅ……流石に連続で10匹はキツかったなー。——でも楽しめたー!」
5匹……あ、兎なら5羽か——のジャンピングラビットの突進攻撃を捌き、3羽を倒した所で縄張りに踏み込んでしまっていたのか2羽追加。4羽に増えたが、なんとか全滅させた所でジャンピングラビット3羽の御登場。満員御礼である。
流石に複数相手に完全な回避は難しく、いくらかの被弾を免れなかった。少しずつ疲労とダメージが蓄積され、LPのゲージがヤバくなってくる。最後の1羽を片付けた所で門の近くまで慌てて戻った。
マスクデータの多いこのゲームの例に漏れず、LP、いわゆる生命力の具体的な数値は分からない。目測で見極めないといけないのは思ったよりキツかった。これはアコライトやシャーマンといった回復職は大変だろう。
あ、私もカテゴリー的には回復職だっけ。メイデンの専用魔法の初期レベルには回復魔法がないから忘れてたけど。
とりあえず、門の前は比較的安全らしいので、街の外を守る門番さんに断りを入れてから、近くにある小さな岩の上に腰を下ろす。
座って落ち着く事でLPの自然回復が促進される。これは魔法やアーツ——武器スキルなどのアクティブスキルに存在する技のようなものだ——に使用するMPも同様だ。
MPは訳すと魔力……INTの意訳?と同じでややこしいが、他に表現のしようもない。INTは本来 ” 知性 ” とか ” 知力 ” という意味だけどINTが高いからと言って頭が良い、という訳でもないらしい。なんというか、色々面倒くさい。
LPとMPの回復を待ちながら、ステータスを開く。見るのはスキルの項目だ。
先程の乱戦中に【棒術】と【震脚】のレベルアップのアナウンスが流れていた。
見ると【棒術】と【震脚】が2レベルずつ上がっている。やはり、ジャンピングラビットはそれなりの強敵であり、複数相手にして戦ったのは中々の経験値となったようだ。
ただ、敏捷性こそ高く自転車並みの速度で飛び掛かってくるジャンピングラビットだが、その動きは直線的だ。
冷静に対応すれば捌けない相手ではなく、実のところ少し物足りない相手ではある。魔物ではあるが、見た目と大きさは小動物、という点もやりにくい。
やはり、戦うなら人型。あるいは動物型なら、それなりの体格を持った中型以上が望ましい。
「で、そういうのこの辺いません?」
門番さんに聞いてみた。
「新人に普通そういうのは教えんのだが……」
エェー。
「——まあ、ジャンピングラビットの群れを相手にあれだけの動きで捌けるなら大丈夫か」
ありゃ見てましたか。お恥ずかしい。
「ここから右、南の方に森が見えるだろう?
あそこは南門の方まで広がっている、少し深い程度の森なんだが地脈がどうとかで魔力が溜まりやすいらしくてな。この辺りでは『魔獣の森』と呼ばれている程、魔物が多い。
この平原でも危なげなくなってきた者が次に向かう場所だ」
「へぇ、強いのいます?」
「ああ。例えば、片方の牙が肥大化して角のようになった猪の『モノキボア』や巨大な甲殻持ちの芋虫『ヒュージキャタピラー』はかなりタフで力も強い。夜に沸いてくる四枚羽の『シババット』は音で感知して何匹も群がってくるし、すごく弱いが出血毒を持ってるから厄介だな。一斉に集られでもしたら洒落にならん」
ほほー、……聞いてみるもんだなー。すごく詳しく教えてくれるや。
「まあ、森で一番怖いのは熊と蜘蛛だがな」
クモ? クマ? え、どっち?
「両方だ。前肢と背中が銀色の甲殻に覆われた熊の『シルバーアーム』と、どギツいピンク色をした巨大蜘蛛の『マドリースピナー』。
この二匹は森の主のようなヤツらで、生半可な実力では太刀打ちできん」
その上、仮に倒せても、森に充溢している魔力のせいで暫くすると、新しい個体が生まれてくるんだとか。
へー、フィールドボスみたいなものかな。
いつか挑もう。
あれ?
「あの森、南門まで続いてるって仰ってませんでした?」
「ん?ああ、続いてるぞ?
まあ、『魔獣の森』も浅い所ならそう凶暴なのはいないからな。とはいえ、地元の人間は冒険者か狩人以外、まず近付かんが」
えっと、初心者指南で『南の草原で慣れたら森へ』ってwikiで見たような……
「ああ、それは南門の西側にある『清水の森』の事だな。そこは大して強いのは居らんから新人向きだ」
もしかして……
「外からパッと見で、森の違いって分かります?」
これは……
「いや、浅い部分の植生は同じだし、魔物の分布もそう変わらん。——奥に少し入れば、すぐに分かるんだが」
明らかに凶暴な魔物が襲ってくるからですね。分かります。
初心者エリアに隣接する所に難易度が違う森林フィールドを二つ配置するとか、開発さん。
……殺意高くね?
まあ、いいや。
とりあえず浅い所だけでも行ってみよう。奥地は挑むには時間足りないし、装備の消耗的にも無理ぽいけど。
「ありがとうございました!」
立ち上がって、軽くストレッチする。ほぐす意味があるかは分からないが、無くてもやらないよりかはやる方が精神的に良い。
そして、色々教えてくれた門番さんにお礼を言って、森へと歩き出した。
ん? そういえば、ずっと何か忘れてるような気が
名前 : 饕餮 / TOUTETU
種族 : 鬼人Lv.1
職業 : メイデンLv.1
ステータス
ATK(攻撃力):+3
DEF(防御力):+3
MBS(魔力増幅):+1
RES(魔力抵抗) :+2
STR(筋力):6
VIT(体力):5
AGI(敏捷):8
DEX(器用):8
INT(魔力):10
MND(精神):18
装備アイテム
・木のロッド
・白の襲
・緋袴
・重金の髪留め
・異界の道具袋
習得魔法
巫術Lv.1
所持スキル
棒術Lv. 3 → 5
震脚Lv. 3 → 5
舞踊Lv. 2
細工Lv.1
鑑定Lv.1
暗器術Lv.1
スキルポイント:10




