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犯人
翌朝,広間の水が完全に捌けたところで,二郎は広間へと繰り出した。
この日,広間の水が捌け始めた時間は今までどおりの午前9時ではなかった。
午前8時頃から水捌けが始まった。理由は特にない。二郎の気分,としか言いようがない。
想像したとおり,広間にはすでに犯人はいなかった。
負けを悟り,水位が下がったところで館から逃げたのである。
正次郎の遺産を取得できないと分かった途端に,実に潔い態度である。
屋外を下着姿で駆けていく様子を想像するのは,実に愉快である。
二郎に少し遅れて,三枝が広間に現れた。
「四郎…いや,二郎兄さんか」
三枝が見間違えるのも仕方ない。二郎は昨日まで四郎が着ていた服を着ていたからである。
「二郎兄さん,もしかして四郎はまだ広間に来てないかしら?」
三枝がおそるおそる聞く。四郎が昨夜のターゲットになっていないかと心配しているのだ。
「四郎はもういないよ」
「え!!??」
三枝が怯えた表情を見せる。紛らわしい表現で妹を驚かせるのはあまり趣味の良いことではないだろう。二郎は慌てて付け加える。
「四郎はもうこの館から出て行ったんだ。だから,三枝はもう安心して大丈夫だよ。五郎と一郎を殺した犯人は四郎だったんだ」




