表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/100

40話:ペンダント

感想欄につきまして、筆をとりつづけて上達するということを優先したいため、ひとまず閉鎖しました。

矛盾や問題点など多くあると思いますが、書き続けて一つずつ精進していきます。

 リリによく似た少女に難敵との戦闘中に援護をしてもらい、戦闘が終了すると同時に彼女は言葉もなく走り去っていった。

 状況がよく飲み込めずに呆然と立ちすくんでいたら、リリの姿はすっかり湿地帯の先へ消えてしまった。


 背後から声がかかった。


「戦闘を援護してくれたあの女……お前の知り合いか」

「えぇ……。あの声、あの横顔。間違いなく幼馴染のリリだと思うんですよね」


 ロイさんはもっともらしく頷いた。


「ウェルリア王国の騎士団の聖女・リリだよな」

「そう呼ばれているようですね」


 僕が肯定すれば、ロイさんは難しい顔をしていた。


 その時、彼女が走って逃げていったあとの場所に、何か光り輝くものが沼地に埋まっていることが目に止まった。


「なんだ、あれ?」

「どうした」


 沼地に埋まったものへ駆け寄る僕へ、ロイさんが怪訝(けげん)な声音で言った。

 それを拾い上げてみる。


 ぬかるんだ地に埋まっていたものを引き上げ手にかざしたら、それは特殊な合金で作られたペンダントのようだった。

 表面が青白く発光している。


「ペンダントか。さきほどの女が落としたんだろう」

「しかも光る合金で出来ていますよ。これ、ロイさんの剣と同じ輝きですよね」


「あぁ。俺の剣は魔法的な加工がほどこしてある、ライトチウムという合金から作られたものだな」

「ロイさんの剣と同じということは、これもそうとう高価なものでは……あ、中が開くようです」

 

 青白く輝くペンダントをいじくると、真ん中あたりがカパッと開いた。

 その中に入っていたのは、4人組の青年と女性が映り込んだ写真だった。


 その写真を見て、息を()んだ。


 中央に金髪ショートカットのとても可愛い笑顔の女性と、黒髪で少し冴えない感じにはにかむ男がいて、その二人のあいだで両手を繋がれている銀髪の幼い女の子がいる。


 そして3人からわずかに離れたところに、少し照れくさそうな表情で腕を組む容姿が整った男。

 腰に下げた剣は、青白い光をともしている。


「これ……僕らじゃないですか……!?」

「俺にも詳しく見せてくれ」


 ペンダントを僕の手から取り上げると、ロイさんは(うな)った。


「たしかに……他人の空似とは思えないほど酷似しているな」


「3人までは特定できます。今よりもうちょっと成長している感じがありますが、黒髪の野暮ったい男が僕で、この少し気難しそうだけど男前な人がロイさんでしょう。金髪ショートカットの女性は、リリに間違いありません」


「そして問題は、ルークとリリのあいだで手を繋がれて、幸せそうに笑っている、この銀髪ウェーブの少女か」

「もしかして……」


 一つの可能性が、僕とロイさんの脳裏にきらめいた。


「「ユメリア……?」」


 声が重なる。


「まさか。ユメリアは、ロイさんと出会った時は成人していましたよね」

「そのはずだ。少なくとも、こんな幼女の姿ではなかった」


 謎が謎を呼ぶ。

 このペンダントを落としたさっきの女性は、状況証拠から言ってリリに違いない。

 しかしそれにしては、ユメリアという女とのつながりは一体どこにあるんだろう。


 この幸せそうな顔で笑う幼女のユメリアは、何者だ。


 僕はペンダントの中に入っていた写真を引き剥がして、その裏を見た。

 その写真の裏には、明らかに僕の筆跡と思われる文字で、こう書かれていた。


 ――愛する家族と、ノアの箱舟計画のために、我が一生を捧ぐ。


「またか……」


 また、ノアの箱舟計画だ。

 この計画に、今疑問に思っているすべてのことがつながっている気がしてならない。


「こないだも迷宮区の転移トラップが不発したところで見たよな、ノアの箱舟計画の名を」

「これ……おそらく、僕が書いた文字なんですよね」


「何がどうなっている?」

「分かりません……」


 ロイさんの疑問には、首を振るしかなかった。


 レスティケイブの地下迷宮の中で出会ったリリと思われる冒険者が落とした、ペンダント。

 そのペンダントの中には、20歳を越えたと思われる僕やリリの姿が写されている写真があって。

 その写真の裏には僕の筆跡で書かれた、『ノアの箱舟計画に我が一生を捧ぐ』という文面。


「現時点でここから導き出される推論は……おそらく、この計画の中枢に関わっているのが、僕やロイさん、それからリリとユメリアなんでしょう。それからたぶん、この写真から読み取る限りでは、僕とリリは婚姻関係かそれに近い関係にある」


「さらに言えば、一度抱いた女が若返るなど信じたくもないが、ユメリアはお前らのあいだにできた子供、という線も濃厚だな」

「はい。ただ僕とリリは現時点では結婚なんてしていないし、子供ができるようなことも当然やっていないわけですよ」


「だとすると……」

「さっきの外套(がいとう)をかぶったリリに似た女性は、僕らが再会して結婚している未来の時間からやってきた……?」


 僕の考察に、ロイさんはこくりと頷いた。


「その可能性が高いかもしれない」

「しかし、何のために?」

「それがこの計画に関わることなんだろうな」


 ノアの箱舟計画か……。


「分からないことだらけで頭が混乱してきました」

「あぁ。どちらにせよ、レスティケイブの中で考え事をするのは良くない。気を取られながらの戦闘は命を落とす。一度街に戻ってじっくり考えてみるぞ」

「ですね」


 こうして僕らは、ダンジョン探索を切り上げて街に戻ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【クリックで先行連載のアルファポリス様に飛びます】使えないと馬鹿にされてた俺が、実は転生者の古代魔法で最強だった
あらすじ
冒険者の主人公・ウェイドは、せっかく苦心して入ったSランクパーティーを解雇され、失意の日々を送っていた。
しかし、あることがきっかけで彼は自分が古代からの転生者である記憶を思い出す。

前世の記憶と古代魔法・古代スキルを取り戻したウェイドは、現代の魔法やスキルは劣化したもので、古代魔法には到底敵わないものであることを悟る。

ウェイドは現代では最強の力である、古代魔法を手にした。
この力で、ウェイドは冒険者の頂点の道を歩み始める……。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ