№3 康治とポランの愛の逃避行(なんちって)
リアル逃避行ごっこ。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
二人の息はあがる。
繋ぐこの手は離さない。
もうどのくらい走り続けているのだろうか、康治にもポランも分からない。
だが、追っ手が届かない遠い所まで、とにかく逃げるのだ。
「ちょっと・・・休もうか」
康治は、ポランにストップをかける。
「えー、勇者様、逃避行ごっこ。はじめたばかりですよ」
「意味もなく30分も走ってりゃ、疲れるって」
「意味ありますよ。逃避行ですよ。私と勇者様の愛の逃避行です」
ポランはうっとりとした目をする。
「リアル・・・ごっこね」
「ごっこでも・・・何でも、真面目に真剣にやるのがポラン流です」
彼女は胸を張った。
「あー、メロンたん。そういうところあるよね」
「ですよね・・・じゃあ、少し休みましょう。そして、今度は」
「・・・まだやるの」
「当たり前でしょうが!ようやく温まって来ましたよ」
「はあ」
小休憩の後。
「も・う・に・げ・ら・れ・な・い」
棒読みの康治。
ポランの演技指導により、フラフラなふりをして歩く。
「勇者様、諦めないで、きっと道はあります」
「も・う・だ・め・だ」
康治はその場倒れる。
「・・・えっ、勇者様?勇者様っ、勇者様あー!」
ポランは康治に覆いかぶさり、泣き叫ぶ(演技)。
「ねぇ、メロンたん?」
「今、入っています(役に)」
「楽しい?」
「楽しいに決まっているでしょうが~」
ポランは続けて、ついに自らナレーションをする。
「二人の愛の逃避行は、ここで終わった。しかし、二人の愛はいつまでも永遠なのだ。ああ、勇者様とポランに幸あれ。次回、復活した勇者様と再び愛の逃避行♡お楽しみねっ」
(えっ)
康治は薄目を開けて、入り込んでいるポランを見た。
(ちょっと、怖い)
彼は再び聞く。
「楽しい?」
「(楽しいに)決まっているでしょうが~!」
演技中のポランの目は・・・。イッテマス。




