№9 メロンたんとデート
メロンたんとデートなのだ。
ゴブリンとの戦いから、あっという間に一週間が過ぎた。
村を救った英雄康治は、村人から歓喜で迎えられた。
しかし、この一週間、康治はひたすら怠惰な日々を送っていた。
「あの・・・勇者様」
ポランは、高く積まれた食器の間から康治を覗き見る。
宿屋の食堂で、康治はひたすら食していた。
康治は食う、寝る、遊ぶ(ポランを愛でる)を毎日繰り返していた。
「太りますよ」
「だって、お腹が減るんだもん」
康治は転生前の小食だった時に比べ、圧倒的に食べるようになっていた。
少しでも空腹を感じると強烈な飢餓感が、彼を襲うのだった。
「少し、身体を動かしましょう」
「面倒くさいよ」
「・・・じゃあ、少し私と散歩しません」
「・・・メロンたんとデート?」
「デート?」
「好き同士が二人で出かけたり、遊んだりすることだよ」
「・・・じゃあ。デートですねっ」
ポランは頬を赤らめる。
「やった!じゃあ、行く」
「はい」
二人は、仲良く手を繋ぎ湖の周りの林道をゆっくり歩いた。
「メロンたん・・・」
「なんですか、勇者様」
「あの・・・さ、君の事、メロンたんって、ずっと呼んでいい」
「・・・うーん、しょうがないですね、わかりました。でも、いつか私の本当の名前も呼んでくださいね」
「ありがとう!」
康治は満面の笑みを浮かべた。
「ふふ、可愛い勇者様」
「俺が?」
康治はそう言うと、池のふちまで行き自分の顔を覗き込んだ。
湖面に映るのは、丸々太った醜い自分の姿。
「前は、もうちょっと良かったんだけどなぁ」
康治は嘆息した。
「勇者様は、このままで素敵ですよ」
「そう?」
「はい。素敵です」
ポランは屈託なく笑うと、静かに目を閉じた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
康治は震える手で、彼女の両肩を優しく持つ。
唇を尖らせ、彼女の唇に・・・・・・。
「おーい!」
村人がこちらへと走って来る。
二人は、慌ててそっぽを向いた。
「どうしたの?」
ポランは、少し口を尖らせて言う。
村人は息を切らせて喋った。
「はぁ、はぁ、ルーラン=コォジィさんに、ディオラ王国から招集が!」
チューしそびれました。




