№10 ポランの決意
またっ、ノスタルジック。
「では、はじめようか」
康治とシャロットの前にガヴェインがゆっくりと歩いて来る。
「コォジィ、戻れ」
シャロットは力ない笑みを浮かべ言う。
「ディオラの英雄コォジィよ。死合いは行われているのだ。分かるな」
「・・・くっ」
康治はコロシアムを後にする。
「・・・コォジィ」
立ち去る康治に視線を送るシャロット。
「さて、感傷に浸るのもいいが、目の前に最強の騎士がおる」
「・・・ガヴェイン卿」
シャロットは呟いた。
康治は観客席に戻ると、深い溜息をついた。
「勇者様・・・」
隣のポランは声をかける。
「・・・うん」
力なく返事をする康治。
「私も頑張ります」
「・・・・・・・・・うん」
(・・・私も・・・戦います)
「さぁ、戦いも佳境に入りまして、一段と影が薄くなってまいりました。私、FULLダーチ=虎徹。戦いもまさにクライマックス漢字にすれば最高潮であります。作者がバトルを書くのに悪戦苦闘、辟易としているのに対し、読み手のみなさんも、だいぶ長いな、飽きて来たな思われていることでしょう。ご安心ください、まだ今、しばらく、しばらく続きます。しかしながら、先達の偉人が申された「ちょっとだけ続くぞい」的なフラグは御座いません。安心してください、私穿いておりません。なにがって、パンツではなく、ふんどしを穿いております。そういうことなのであります」
「どういうことなんだろ」
「さあ?」
観客AとBは首を傾げる。
「おーっと、私、目立ちたくって、ほんのちょっとだけ長く喋ってしまいました。では、まいりましょう。ディオラの気高き女王シャロット対、円卓の騎士最強の男にして朝はびんびん物語。しかし、今は真夜中だっ、ちょっぴり残念ガヴェイン卿っ!死合い、はじめっ!」
「戦」旗が虎徹によって振り下ろされる。
「スプレンディッド・ニードル(華麗なる針)!」
シャロットは先制攻撃を仕掛ける。
ガヴェインは防御も避けようともしないで、すべての攻撃を全身に受ける。
「少し、お疲れか・・・シャロット妃」
「・・・・・・」
「では、眠っていただくとするか・・・ライジング・リスペクトっ!」
「これはっ!ガヴェイン卿の奥義ライジング・リスペクト。どこかで聞いた事のある技だ。でも文字通りリスペクトしているから問題ない。これは戦う相手を尊敬しつつ、己の輝き満ちる攻撃によって、相手に大ダメージを与える技だっ!」
ガヴェインは愛用の剣ガラティーンをコロシアムの地に叩きつける。
愛剣が眩い煌めきを放つ。
地が裂け、衝撃波が生まれる。
視界に光と身体には痛み、シャロットはなすすべなく、倒れた。
「勝者、ガヴェイン卿っ!」
「よく戦いましたな。しかし、相手が悪かった」
ガヴェインはうずくまるシャロットを肩に担ぐと、アーサーのいる席まで運ぶ。
「おいっ!」
康治は怒髪する。
「なにか?いずれにせよ我らの勝利を揺るがない。ならば今、妃を我ら主が所有にしてもなんら問題はあるまい」
「お前っ!」
怒り狂う康治の頬にポランはそっと手を置く。
彼が振り向くと、彼女はそっとキスをした。
「勇者様・・・行ってきます」
「メロンたんっ!」
ポランは小走りで駆け、コロシアムに向かった。
ガヴェインは薄ら笑った。
七章、堂々結び。




