№9 デュラ子無双、其の一
だてに長生きはしておらぬ。
勝敗が決すると、シャロットとエリザはコロシアム内へ駆け出し、父を介抱する。
康治の赤髪がチリっと音をたてる。
「我が行く」
デュラ子は康治を見ると静かにコロシアムへ進む。
「デュラ子さん・・・」
ポランの心配する声に、
「われ思う故、我あり。我は主の為に戦うのみ案ずるな」
デュラ子は瀕死の状態で、ようやく立っているユーウェインに近づいた。
「齢888、そんなバナナ!それは大樹をも超える、聖剣の精霊デュランダルことデュラ子対手負いの獅子騎士ユーウェイン・・・はじめっ!」
開始の「戦」旗が振られると同時に、デュラ子は人差し指をユーウェインに向け、ゆっくりと下へ降ろした。
「堕ちよ」
頭上から急激な圧がかかり、彼は地面に叩きつけられる。
主が倒れ、怒り狂う獅子には、目力でひれ伏させる。
「勝者、デュラ子!」
「ふむ」
圧倒的な勝利だった。
「聖剣の精霊・・・」
「アーサー殿、次はワシが参ろう」
「・・・ラモラック・・・よかろう。しかし、あの精霊、相当に手練れだ」
「誰にむかって言っておる・・・アーサー殿」
「分かっておる、油断は召さるな」
「・・・ふん」
ラモラックは、大鎌を振り回しながら、コロシアムへと向かう。
(尊大なやつめ・・・)
アーサーは心の中で、悪態をついた。
「ではっ、円卓の騎士にて最強クラスの力を持つ!傍若無人の荒くれ者っ、ラモ・・・」
「誰が傍若無人だっ!」
ラモラックは突然、虎徹へと襲いかかる。
「ハウリングシールド!」
虎徹はマイクから発せられる己のハウリングで、空気を震わせ空間シールドを作り上げ、大鎌の攻撃を遮断する。
「今は目の前の戦いに集中なされよ」
ぼそりと虎徹は彼に呟く。
「チッ!」
「おーっと、まさに、戦いは場外乱闘の様相を呈してきた。危うし私、危うし虎徹・・・しかしながら、私の身体に流れる実況と解説、審判の本能が、戦いのエグゾーストに駆り立てるう!・・・では、はじめっ!」
戦いの開始と同時に、デュラ子は人差し指をラモラック向ける。
「堕ちよ」
「!」
強烈な圧が彼の頭上にかかる。
「きかん!」
ラモラックは圧を押し返して、大鎌をデュラ子目掛けて振るう。
「さすがに効かぬか」
「死に晒せっ!」
「・・・野蛮な輩」
ラモラック渾身の一撃を、デュラ子は聖剣へと変化して受け止める。
激しい激突音の後、大鎌が真っ二つに折られる。
「なっ!」
「力に頼り過ぎだ」
剣の形態のまま、ラモラックの懐へ入り込むと、デュラ子は精霊に戻り、彼の額に人差し指をあてる。
「堕ちよ!」
「・・・・・・!」
ラモラックは白目をむいて、膝から崩れ落ちた。
「勝者、デュラ子っ!なんという・・・なんという圧倒的強さでしょうか。電光石火の早業で、あの円卓の騎士達を次々と撃破するっ!まさにっ、聖剣伝説ならぬ聖剣あんど精霊伝説なりっ!」
我は戦うのみ。




