№8 ディオラ王と獅子の騎士ユーウェイン
王の威厳。
深手を負ったローリアンとボールスは、互いに担架に乗せられ運ばれる。
ローリアンは右拳を突き出し、萌狩隊の皆に無事と奮闘を伝える。
萌狩隊と観衆は大歓声を上げ、萌えスキル№2マワリで彼の奮闘ぶりを称える。
皆が頭上で手拍子し、左右にジャンプする度にコロシアムはその熱量で揺れる。
興奮覚めやらぬ喧騒の中、ディオラ王が立ち上がった。
「どれ、ワシが行くことにするか」
「父上っ!」
「お父様・・・」
シャロットとエリザは不安気な顔で、戦いに赴こうとする父を見る。
「大丈夫だ。ワシはかつて、戦場では戦王と呼ばれた男・・・まだひょっこ騎士なぞには負けん・・・ところで、我が婿コォジィよ」
「ん?」
「念の為だが、ワシになにかあった時は頼むぞ」
「・・・ああ」
「感謝する」
王は大剣を持ち、コロシアムに立つ。
我が国の王の登場に、コロシアムはかつてないほどの興奮と熱狂の坩堝と化す。
「では、次は私が」
「ユーウェイン、相手はディオラ王だ。万が一でも殺すようなことがあってはならぬぞ」
「・・・アーサー様、私がそのつもりでも、相棒のキングがどう出るかは分かりません」
騎士、ユーウェインは体長3mあろうかという獅子を引き連れ、コロシアムの中央へと向かった。
「しっかり手なづけろ」
「はっ、最善はつくします」
「・・・ったく」
「さぁ、第三死合いは、ディオラの生ける伝説ディオラ王対獅子の騎士ユーウェイン卿の対決だっ!皆さん、瞬き厳禁でよろしくっ!」
虎徹の「戦」旗が振られた。
「うおっ!」
獅子が牙を剥き出しにして、ディオラ王に襲いかかる。
王は大剣を盾にして獅子の鼻面へ押し込む、怯む百獣の王。
パンッと乾いた音が響く、ユーウェインの鞭が地表に叩きつけられ、我に返る獅子。
「落ち着けキング。お前は強い」
「グルルルル!」
獅子はユーウェインの言葉に落ち着きを取り戻したかのように、悠然と弧を描くように動き、王との間合いを詰めていく。
「!」
ディオラ王が、獅子との対峙に気を削がれた瞬間、ユーウェインの放った鞭が王の身体にきつく巻きつく。
「油断は禁物ですな、ディオラ王」
「くっ!」
「おっと、これはディオラ王、絶体絶命だ!前門の獅子に後門の獅子の騎士。早くも勝負は決着するのかっ!」
「・・・むん!」
ディオラ王は、鞭の拘束を己の力で引きちぎった。
「!」
そして、止めを刺そうと飛びかかる獅子の顔面に右ストレートを叩きこむ。
吹っ飛ぶ獅子。
「キャイン!」
獅子はたまらず、鳴き声をあげ戦意喪失する。
「さすが、ディオラの王。では、これはいかがかな」
ユーウェインは鉄の鎖をどこからともなく取り出すと、王の左手に巻きつける。
彼は鎖を巻きながら王へと近づく。
「ふふ、強き王よ。私と拳の語り合いをば」
「よかろう」
王は、右拳をユーウェインの腹へ打ち込む。
「ぐっ!おもしろい拳だ。実におもしろいっ」
ユーウェインは王の額へ右拳を叩きこむ。
王の額から鮮血が流れる。
それからは、壮絶な拳の殴り合いとなった。
観客達の中には、あまりの凄惨さに目を伏せる者もいた。
「これが、男と男の語り合い!言葉でなく拳での以心伝心っ!何も言わずとも拳がっ、己の拳が勝者かを語る。刻み込めっ!この戦いの結末を」
「父上っ!」
殴り合いの末、シャロットが叫んだ瞬間、父王は満足したかのような微笑みを見せ、その場に崩れ落ちた。
「勝者!ユーウェイン卿!」
虎徹のジャッジメントが会場に響いた。
ディオラ王の奮闘。




