№7 エリザの気持ち
百合ってこんなんでいいんですか。
時刻は正午を回る、いよいよ式が近づく。
エリザの部屋にて。
「ふむ、どうかな」
アタクシはウェディングドレスに身を包み、ライヤにくるっと回ってみせる。
「とてもお似合いです・・・馬子にも衣装・・・」
「んっ」
「いえ」
ライヤは慌てて口を塞ぐ。
「ああ、これからシャロ姉様に嫁ぐのね。アタクシ幸せ」
「・・・コォジィ様にですね」
「同じようなものよ」
「これからは、お姉様とずっと一緒」
「はあ」
「ライヤ、いつもの調子に戻ったわね」
「エリザ様がしょーもないことを言うので」
「しょーもないって、しょーもなくはないわよ。いいよく聞きなさい。アタクシがシャロ姉に淡い思いを抱いたのは、齢4つの時でした。大好きなオムレツを一口で食べようとした時、アタクシは床に落としてしまいました。シャロ姉はそっとアタクシに自分のオムレツを渡してください、にっこりと微笑んでくれました。あの時のお姿、なんと神々しかったことか、それから、デザートのティラミスを食べてしまって、もう少し欲しいなあと思った時、シャロ姉が「食べなさい」と自分のお皿をアタクシに、ああなんという高潔なお方なのでしょう。朝食のスクランブルエッグを一気に食べてしまい、パンにのせそびれた時も「アタシのをつかえと」もう、しびれますわ。ああ、そうね、食べ物にまつわるエピソードばかりだったわね。それじゃあ伝わらないわね。きっかけはそれから、アタクシはシャロ姉一筋なの。高潔なる魂、美しきお姿、女心をくすぐる愁いを帯びた瞳、ほどよく膨らんだ胸、しまったお尻、柔肌、ああアタクシの物にしたいっ!シャロ姉(君)が欲しくてたまらない!それに姉様の物はだいたいコレクションしましたわ。シャロ姉の口紅、愛用のナイフとフォーク、口元を拭いたティッシュ、お召し物に下着、それからお姉様が用を足した後のトイレの香りの袋詰め・・・」
「ふああ」
ライヤめ、よりによって欠伸をしましたわ。
「おいっ!」
「餌付けですね」
「後半もちゃんと聞いていて?」
「はい。餌付けとストーキングですね。私、エリザ様の侍女ですから改めて言わなくても、変態なのは知っています」
「むむむ」
「これから、まがりなりとて、コォジィ様に嫁ぐんですから、ほどほどにしないといけませんね」
「ライヤもね」
「私は、いたってノーマルですから」
「シスコンでしょ」
「そんな事ありません」
「どうだか・・・そうだ。ライヤも早く着替えなさい。これからダーリンに見せに行くわよ」
「・・・シャロット様の間違いでは」
「馬鹿ねえ、その楽しみは直前まで取っておくのよ。結婚式のシチュと焦らされた熱で、アタクシの胸の高鳴りは最高潮に達するわ」
「はあ」
という訳で、ダーリンの部屋にやって来ました。
まだ寝ていますね。
このズボラさんは、三国一の幸せ者のはずなのに、どういう心境なんでしょう。
「えいっ!」
布団をめくりました。
「・・・・・・」
寝ぼけ眼でじっと私達を見ています。
「どうですっ」
「・・・ま、馬子にも衣装・・・」
むきーっ!
馬子にも衣裳っ。




