№4 エスメラルダとアリエル、エルフの母娘密談~前編~
アリエは思う。
ここは康治の宮殿、エスメラルダの部屋。
窓はカーテンが閉められ、室内は薄暗い。
なんの装飾もない飾り気のない部屋に、響くは髪を梳かす音。
「急展開ですね、お母様」
私はお母様に呟いた。
「そうですね」
お母様は私の長い銀色の髪を、櫛で優しく梳かしてくれている。
「まさか、戻って来て早々、結婚式とは」
私は溜息をつき、疲れた身体をだらりと倒し、お母様の膝に甘える。
「こらっ、まだ髪を梳かしている途中でしょう」
「だって」
私は、この若さで結婚ということに、躊躇しているのだろうか、まだお母様に甘えたい気持ちが勝っている。
そんな事ではいけないのだろうけど。
「結婚ですよ・・・なんか、もっと、こう慎重に・・・ねぇ」
私はお母様の顔を見た。
優しい笑顔、そっと私の耳を撫でられた後、少しだけ強めで引っ張られた。
「ひんっ!」
思わず、びくっとなる。
「ふふふ、そうですね。でも、それだけディオラもエルフも窮地ということなのですよ。すがれるものは英雄コォジィ様、それを揺るぎないものにするには絆ということですね」
「はい」
「どちらも共に、生き残るのに必死。すべては私達の夫、コォジィ様の双肩にかかっている」
「そう・・・ですね」
お母様は、そっと私の耳元で囁いた。
「その為には」
「・・・その為には、コォジィ様の寵愛を得る事です」
「正解。さすが私の愛しのアリエ」
お母様は片手で優しく、私の髪を撫でてくれました。
それは分かっているけど・・・。
「しかし、現状はあまり芳しくないですね。他の娘(嫁)に後れをとっていますね」
「では、お母様どうすれば」
「・・・エルフの時は長い・・・あの精霊ほどではないにしても、ゆっくり時間をかけて、私達のものにしましょう」
「それでは・・・(遅すぎます)」
「ふふふ、アリエもなんだかんだとコォジィ様を気に入ったようね。大丈夫、私達にはエルフの秘術があります。勿論、積極的アプローチも忘れてはいけません」
「はい、お母様」
「エルフとおなごの武器を駆使し、必ずや私達の夫、コォジィ様を掌中に」
「はい」
私はお母様の言葉に大きく頷きました。
結婚かあ、いまいちピンときません。
エスメラルダは。




