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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
七章 ―冒険者の町バルト―

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閑話:師弟の旅支度。

短めの閑話です。

本日更新予定の内容を書いていたら、閑話っぽくなったので別投稿します。

 王都へとアインの土産、そしてクローネの手紙が届いて数時間後。

 職人街の片隅にある、ムートンの鍛冶屋は慌ただしい様子が続いていた。

 時刻は既に夜だったのだが。そんなのは関係なしに二人は騒ぎ続ける。



「おいエメメっ!なんだこの請求書はよぉっ!?」



 慌ただしいながらも、水を汲んで一息ついていたムートン。彼の目へと一通の手紙が映る。

 中を開ければ、"ちょっとした"金額の請求書。あて名はエメメとなっている。



「なんですか師匠ー!ちょっと炉の音うるさくて、よく聞こえないですーっ!」



 魔石炉をバラすためには、いくつかの部品の中から、残っている魔石の力を抜き切らなければいけない。

 完全に抜き切らなければ毒となり、それは周囲に悪影響を残す。

 エメメは特殊な機材を用いて、その残存魔力を取り除いていた。



「あー!?てめぇ師匠の声と炉の音、どっちのが大事なんだよてめぇ!?」



 第三者からしてみれば、確実に無茶苦茶言ってるとしか思えないセリフ。だがこの二人には、そんな常識は通用しない。

 師匠ムートンの影響を受けている弟子エメメ。そんな彼女も、謎の熱血を発揮するのだった。



「むむ……それは挑戦状ですね!?いいですよ、かかってくるといいです!さぁ師匠!もう一度!」


「おうよく言った!てめぇを焼鳥にすんのは延期してやるよ!——……この請求書はなんだって聞いてんだよ!」



 炉の音がうるさいながらも、ムートンの話す言葉に集中したエメメ。

 二人の掛け合いは賑やかながらも、耳を澄ました彼女は、その種族としての強さを発揮する。



「おぉそれでしたか!新居用の止まり木を買ったんです!フオルン組の純正品ですよ!」



 バルトから水列車でおよそ3時間。その場所にある、フオルン達の集まりがフオルン組。

 質のいい木材を使い、職人たちの要望に応えてきたのが彼らだった。



「相変わらず木材はいいもん選ぶなてめえは!鉱物とかを見る目とは大違いだ!」


「えへぇー。ですよねですよね?」



 照れるエメメ。彼女の容姿を言葉にするならば、まさに小動物系の女の子。



 身長は150前半程度で、翼を開けば身長よりも広くなる。

 オレンジがかった明るめの茶髪を、ショートヘアに仕上げている。

 鍛冶をしているにもかかわらず、肌は白く陶器のように保たれていた。



「一応聞いとくけどな。お前これいつ届くんだよ」


「三週間後です!いやー特注なんで、時間かかるんですよ」



 大体の予想はしていた。

 だが本人からこういわれると、怒りで体がプルプルと震え始める。



「こんの馬鹿野郎っ!やっぱり焼鳥かてめぇ!?鳥じゃなくてもう焼鳥だったのか!?」


「え、え……え!?師匠どうして怒るんですかっ!師匠の分も必要なら、ちゃんと追加注文しますからぁ……っ!」



 額に青筋を浮かべ、どう折檻してやろうかと考え始めるムートン。

 三週間という期間を聞いて、鳥頭ということを再確認してしまったのだ。



「俺が止まり木を何に使うんだアホが!三週間っていえばよ、俺たちもうここにいねえだろうが!」


「……ほんとだっ!?うえぇえ……どうすれば……っ」



 この家を売り飛ばすわけではない。だがしばらくは王都に住む予定だ、だからこそ、ここに新たな止まり木が届こうとも意味がない。



「ど、どどど……どうしましょう師匠!?今からキャンセルはできないです!でもでもそんなことに気が付くなんて、さすが師匠ですね!」


「ン……?おう、そうだろそうだろ!?俺はやっぱり頭悪くねえんだよ……ったく、しょうがねえなあ」



 褒められて悪い気がしない。それは大凡の人々が感じることだろう。

 ただこのムートンは、褒められると常人の数倍は気分をよくする。ただそれは、親しい仲の者限定の話だ。

 どうでもいい客に褒められても、目の前で鼻をほじる程度の精神力は持っている。



「なんとかできねえか、俺の方でも考えてやるよ馬鹿野郎!ったくこの馬鹿弟子が……」


「キャーッ!マジですか師匠?一生ついていきます!」



 安っぽいことで感動できるということ、それも立派な才能なのかもしれない。

 そしてこの二人が楽しそうなら、それがきっと一番なのだろう。



 飛び上がってじゃれついてくるエメメ。それを難なく受け止めるムートンの姿。

 そんなムートンの両腕は、今日も逞しかった。




帰宅したら本編の更新を行います。

アクセスありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何気にいいコンビですね、漫才的な意味でも笑笑
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