その頃のハイム。
——とある日のハイム。
いつも通り城に来て仕事に励んでいたエレナ。そろそろ昼の休憩にしよう、そう考え始めた時の事だ。
「エレナ様。第三王子殿下がお呼びです」
「あら……ちなみに要件は?」
「おそらくイシュタリカの件ではないかと……」
つい先日のことだ。
エウロ経由でのイシュタリカとのやり取りに進展があった。到着した手紙は、一番にエレナが確認した。
書かれていた内容としては、当然のことながらこちらの要求が突っ撥ねられていた。
代案として中立地の選択、海図によるとハイムよりではあるが、沖の方にある小さな島。そこを整備して使おうということが書かれていた。
また、どうしても受け入れられない場合は会談を取り止めとするということ。更にいえば、イシュタリカ王が来るという事で、大艦隊となるとのことだ。それは暗に、『ハイムで会談するならば、いつでも滅ぼせるがいいのか?』と、そう言われてる気がしてならない。
「わかったわ。それで殿下はどこに?」
「中庭で待つと仰っておりました。もうすでに向かっているかと」
「それでは私も今から参ります。報告ありがとう」
一応イシュタリカからの手紙なども用意して、ティグルが要求してもすぐに取り出せるようにした。
鏡の前で軽く身だしなみを整えて、急ぎ足で執務室を出る。
——ハイムの城はとても大きい。
それは大陸の覇者を名乗るハイムとして、他の国々に劣ることが無いようにという意地やプライド。そして潤沢な財を見せつけるためのものだった。
いつかイシュタリカの城も見てみたい。ハイムの城とどう違うのかを確認してみたい、それがエレナの小さな夢だ。
「っとと……これはエレナ殿、急いでどうしましたか?」
急ぎ足で廊下を進むと、一人の少年と鉢合わせた。
彼の名はグリント・ラウンドハート。次期ラウンドハート家当主であり、第三王子ティグルの護衛として城に出入りしている。
昔はやんちゃと感じる顔つきだったが、今では口元が父ローガスに似て、随分と凛々しくなってきた。
綺麗に手入れされた金髪に、その凛々しい顔つき、更にはティグルの護衛としての立場。
そのグリントが社交界で話題にならない訳がない。だがしかし、そのグリント本人は許婚のアノンしか見てない為、未だ浮いた話題が出ることは無かった。
「あらグリント殿。お見苦しい姿をお見せしてしまいました……。実は第三王子殿下の許にいく途中でして……」
「おぉこれは奇遇だ。実は私もこれから殿下の許に向かう所なんです。ご一緒しても?」
「えぇもちろんです」
エレナは心の中で考える。
彼はイシュタリカの王太子アインの弟だ。そして幼い頃より将来を渇望された、聖騎士として産まれた優秀な人材。
正直な事をいってしまうと、一時期クローネと会わせることを考えていたこともある。"あの"クローネも、評判の聖騎士殿であれば気に入るかもしれないと思ったのだ。
グリントについて調べた人となりをまとめ、クローネの部屋の机に置いたことがある。封筒に入れ、しっかりと表紙にはグリントの名前と聖騎士という文字を記入した。
次の日になって、どうなったかと思いウキウキしながら使用人に尋ねたところ、クローネはエレナも予想しなかったことをしていた。
『……封がされたまま、ゴミ箱に入っておりました』
それを聞いたときは、開いた口が塞がらなかった。
王族もダメ、聖騎士もダメ。……一体誰ならば気に入るのか、母エレナも全く見当がつかない。
「(……あの時は本当に困ったけど。でも納得できた部分もあったのよね)」
——だがそれから少し経ってのことだ。
アウグスト邸で行われた、貴族のお披露目パーティ。
その日の夜。エレナの耳に入ったのは、クローネが恋をしたかもしれないという話。
いつものエレナならば疑ってかかったが、それを口にしたのが当時のアウグスト家当主グラーフ。その彼が口にするとなれば話は別だ。
一体誰が相手なのか……!興奮するのを抑えきれず、義父へと詰め寄ってしまった。
重苦しいそうな口を開き、語った名前はアインという名。『アイン……?』と少しの間考えてみたが、どの家の子か分からなかった。そのエレナの様子を見て、グラーフは疲れた表情で説明を続ける。
オリビアの子にして、大将軍ローガスの子。グラーフはそう口にしたのだ。
それを聞いて合点がいく。オリビアもグラーフも、知らない人が居ない程の有名人だ。すぐに理解できなかった自分を恥じてしまう。
努力を惜しまない子であるが、あまりパッとしない。そして弟に勝てない兄……それが社交界でのアインの評価。
血筋は最高だが、それでもクローネが気に入る要素がわからなかった。
……だが今では分かる。海龍を倒した英雄、大国イシュタリカの英雄となった男がそのアインだ。それを思えばクローネの男を見る目の凄さ。それをつくづく実感させられる。
「エレナ殿?何か考え事ですか?」
「……えぇ。イシュタリカの事で少々」
嘘はいっていない。ただし、イシュタリカに居るクローネのことだが。
「確かに悩みの種です。殿下もクローネ嬢のことは強く心配しておりますし、すぐにでもお助けしたいと私も思っております」
「まぁ心強いです。……本当にいつもありがとうございます」
だが今はこうして嘘を付き続けなければならない。ハーレイやクローネの弟のリール、そしてアウグスト家で働く皆を守るためにも、この秘密は墓まで持っていかねばならないのだから。
「本当に困った国です。礼儀というものを感じられず、ただその肥大した国の強さに頼っている」
「……えぇ。本当に」
ローガスの、ひいてはラウンドハートのオリビアへの接し方。それに問題があったと小言を言いたくもなるが、それをなんとか体の奥底へと引っ込める。
「あの男を王太子にするのですから、本当にわからない国だ……」
静かにそう呟くグリントを見て、エレナはかねてから聞きたかった質問を思い出す。内容としては若干無礼ではあるのだが、大公家の自分だから許してくれ。そう心の中で詫びる。
「……大変聞きづらいことなのですが、一つ尋ねても?」
「えぇどうぞ?どうなさいましたか?」
「……エウロでグリント殿が敗北した相手、その者はイシュタリカ王太子の護衛と聞きました。そして連れていた近衛騎士が語ったという、王太子の方が強いという話。……グリント殿はどうお考えですか?」
「は、はは……これまた、随分手厳しい質問だ」
グリントにとって苦い思いでしかない話だが、確かにその様な事はあった。
どこまでも子ども扱いをされて、手も足も出なかった相手。名はディル、グリントが必ずや屈辱的な思いをさせてやる。そう意気込んでいる男の事だ。
「ですがはっきりと申し上げれば、ただの誇張かと。たしかにあのディルという男は強かった。ですがあの男がさらに強いなんて、本当に夢物語でしかないと思いますが」
「……そう、ですか。申し訳ありません答えづらいことを」
「いえお気になさらず」
そうは言うが、苦々しい表情のグリント。
過去のラウンドハート邸でのこと、それでしか現状は判断が付かない。どの程度成長したのか、そんなものは個人差でしかないことで、どう成長したのかを判断する材料なんてものはない。
だがクローネが嘘をつくとは思えず、本当に船より大きい魔物を一人で倒したのだろう。
考えれば考える程、そのアインという男が気になって仕方ない。
*
「おぉ来たか二人とも!待ちわびたぞ!」
少しの会話に、長い考え事。そうこうしている内に、ティグルが待つ中庭へと到着した。
複数の給仕に囲まれて世話をされている姿。その贅を凝らした姿は、まさにハイム王家の人間であり、エレナとしても見慣れた光景でなにも思うことは無い。
「お待たせいたしました殿下。なにかお話があるとのことでしたが……」
「お待たせして申し訳ありません殿下」
エレナに続いてグリントが言葉を投げかけて、そのままティグルの背後に移動した。
一方エレナはティグルの近くに進み、臣下として深く礼をする。
「よいよい。まぁまずは座ってくれ」
「……では御前に失礼致します」
陽気なティグルがそう口にして、エレナは素直に前方の席に腰かける。すると見目麗しい給仕が近寄って、エレナにも一杯の茶を用意する。
「分かってるとは思うが、先日のイシュタリカの手紙の件だ」
「やはりそうでしたか」
呼んだ理由は想像通り、イシュタリカとの件だった。それを聞いたエレナは荷物を取り出して、その中からイシュタリカからの手紙を取り出した。
「そうそう。この手紙だ……なんとも気に入らない事ばかり書いたものだ。そう思わぬか?」
「えぇ。ハイムを下に見てるのが良くわかります」
「その通りなのだ。私はそれが気に入らない、所詮は大きいだけの国なのだろう」
手紙を開き、その内容に目を通すティグル。片手で手紙を持ちながら、時折口元へと茶を運ぶ姿が優雅だった。
「ふむ……だが相も変わらず、気持ちの込もっておらぬ字だ。ただ淡々と文字を書くだけで済むと考えている……いわばそれだけしかできぬ者のすることよ」
確かに書かれた字はとても綺麗だ。バランスが良く、太い部分と細い部分のコントラストを見れば、芸術性すら感じさせる。
「この手紙を書いたのは誰であったか?」
「手紙の最後にも記載がありますが、イシュタリカの王太子……その王太子の補佐官とのことです」
「ふむ。確かにそう書かれているな」
シルヴァードの名の下に、代筆として王太子補佐官と記載がある。通常そうした代筆には代筆者の名は記入しない為、ただ王太子補佐官とだけ書かれていた。
「あのような無礼な男だ、その補佐なんぞたかが知れている!だからこそこんな気に入らない字を書くのだ!」
ティグルはそう言うと、投げ捨てる様に手紙をエレナへと渡す。
「ですがイシュタリカの王族です。それなりに厳しい試験の上で選ばれるのでは……?」
「ふん!ではもっと仕事のできる補佐を選ぶべきだったな!」
エレナは察した、これはただケチをつけたいだけなのだろう……と。エレナから見ると、その手紙の字はとても丁寧で好感が持てる。
イシュタリカの筆記用具はハイムと違い、少しばかりの癖が出る。それも美しくなるように仕上げられており、見ていて惚れ惚れするような手紙だった。
不満を言うティグルの背後で、グリントが静かに頷いている。
「では殿下?私に話すこととは一体?」
「おぉそうであったそうであった!……リリとかいう密偵のことは覚えているな?」
苦い思い出だ。数年に渡って、ずっと城で仕事をしていた女性で、エレナの補佐もしていた有能な文官だった。
エレナにバレるまでずっとスパイ行為をしていたようで、それはすでにティグルへも情報が伝えられている。
「私の力不足で、ハイムには多くの迷惑を……」
「あぁよいのだ。奴を採用した者も悪かろう、更に城の皆も気が付かなかったのだ。故にエレナに罪はない、顔を上げてくれぬか」
頭を下げていたエレナが、ティグルの言葉で顔を上げる。
エレナは仕事ができるということもあるが、ティグルがエレナを気に入るのは他に理由がある。それは当然クローネの事で、そのためにもエレナやハーレイも重用する節があった。
「まぁそのリリの件だ。我らも同じことをしようと思ってな」
……また唐突に訳の分からない話を。エレナはそう感じたが、なんとか表情に出るのを食い止める。
「……といいますと?」
「バードランド所有の船だ。それに冒険者として乗り込み、イシュタリカを目指す」
「で、殿下っ!?正気ですか!?」
バードランドは国家ではなく、商人たちが牛耳る地域だ。そして冒険者達が素材を仕入れ、貴族たちが高級宿で金を落とす。そんな大陸の中央がバードランド。その商人たちは発言力や資金力に優れ、多くの船も所有している。
「あぁ正気だ。当然私は行けぬが、何人か人選をして送ることとなろう。……予定はそうだな、来年の春には行いたいと考えている」
「で、ですがそれではもしや……ロックダム共和国からの船で進むという事ですか?」
「そうなるな。たしかにロックダムは遠い。それにこの大陸でも、我が国と戦って持ちこたえられる唯一の国だろう。危険はあるが、それでも冒険者たちに交じっていけば大した影響ではない」
「……そういうことでしたか」
ロックダム共和国は、ハイムに次ぐ国土面積を誇り、多くの農業地帯が自慢の国だ。年に数回程度だが、確かにイシュタリカへ向かう船が出航している。
現状では、エウロから向かわないのであればロックダムが最善であり、他に手段を用いるならば、もはや密入国ぐらいしか手段がない。
「だがあくまでも試験的な意味を込めての話だがな……。恐らくは数日程度しかイシュタリカには滞在できぬ」
果たしてそれに意味があるのだろうか?エレナはそうした疑問を抱いてしまう。なにせ広大なイシュタリカという国で、たかだか数日程度で効果があるとは思えない。
「つまり補給を終えた船に再度乗り、とんぼ返りとなるわけだ。一度試してみた後に、その結果次第ではすぐに第二陣を送り込む。その時は年単位の作業となろう」
数日かけて海を渡り、数日間滞在して、更に数日かけてロックダムへと戻る。その後数日かけてハイムへと帰国する。
どうにも非効率的すぎてなんともいえないが、ティグルがこのような事を考えていたことは驚きだった。
「となると。港町マグナ……でしょうか?」
「うむ。到着する地域はマグナという港町になる。とはいえ、我が国の港町ラウンドハートには遠く及ばないだろうな!」
はっはっは、と高笑いをするティグルを見ながらも、エレナは少し考え事を始める。予定としてはどうにも穴だらけで、効率なんてものは無いに等しい。だがイシュタリカに渡って様子を見る、それには若干の興味が沸いた。
「……その人選は、これから行うのですか?」
「あぁそうだ!ある程度は優秀な者達を選ばねばなるまい!」
口元に手を当てて考えるエレナ。『でしたら……』と口を開き、ティグルに語り掛ける。
「でしたら一つ提案がございます。……その調査の人選の際に、是非——……」
*
時折……いや、しばしば思うのだが、もう少し慎重になるべきではないだろうか。特に相手を舐めてる姿勢はいかがなものかと思う。
「口にする気はないのだけどね……」
ティグルとの話を終えて、再度自分の執務室へと足を運ぶ最中だった。
だがなんだかんだと、最後には興味を引くいい話だったと思う。
「あの人になんて言おうかしら。まぁなんとか言い聞かせましょう」
ここにはいない夫のことを考えて、エレナはなんとかなるだろうと楽観視していた。
さて、執務室に戻ったら仕事だ。そう思っていた矢先のことだった。
「おぉエレナ!エレナじゃないか!なにしてるんだこんなところで?」
「こ……これは殿下。このような場所でお会いできるとは、奇遇ですね」
でっぷりとした体型に、歩くだけで浮かぶ額の汗。髪の毛が細くなり始めた頭部に、独特の体臭。
服装だけは豪華で立派なつくりの一点物。両脇には薄手の布で身を包んだ、スタイルのいい女性が付き添っている。
彼の名はレイフォン。立場としては立派な第一王子で、王位継承権としても当然ながら第一位。
「あぁ奇遇だ!丁度いい、エレナもどうだ!」
「どう、とは……?」
「今から僕の寝室で遊ぶんだ、一緒にどうだ?楽しくて気持ちがいいぞ?」
そう言って、両脇に並ぶ女性をぎゅっと抱き寄せた。
身長が高くて体格のいいレイフォン。そんな彼に抱き寄せられると、女性たちもとても小さく見える。
「申し訳ありません。私には夫がおりますし、光栄なお誘いですが……」
「前から言ってるが気にするな!ハーレイには僕から言っておくから、さぁ一緒に来い」
ぐいっと手を引き寄せられ、その力強さに抵抗できなかった。『まずい……』本当に連れていかれそうなってきた事態に、どうしたものかと頭を働かせる。
「……兄上、なにをしてるのですか?」
「む?おぉティグルじゃないか、だがなにをと聞かれてもな……。これから寝室で女と楽しもうと思ってたのだ!だからエレナも連れて行こうとしてるだけだが?エレナも美人ですごくいい、前々から閨に誘っていたのだが、なかなか都合も合わなかったのだ!」
独特の抑揚をつけて話すその言葉が、広く廊下に響き渡る。それを聞いて理解したティグルは、一度エレナを見てから、レイフォンに視線を戻して口を開く。
「気に入った女性と楽しむのは勝手だが、無理やりはいけないかと」
「無理やりじゃないぞ!エレナも喜んでいる!」
「……そうですか。だが仮に喜んでいたとしてもエレナはダメかと思いますが」
この時ばかりはティグルに感謝した。もし彼が来なければ、少しばかり面倒で難しい状況になっていたはずだ。
「なぜだ!?僕が相手でもダメなのか?」
「父上に……いえ、陛下に叱られますよ。上位貴族の婚姻は、陛下の承認のもと行われる。となれば、兄上がそれに異を唱えるようなことをしてしまえば、陛下もきっと兄上をお叱りになるかと」
「む……むぅ!それはいけない!父上を怒らせてしまってはまずい……」
ハイム王が怒ることで、自分の立場に影響が出ることをレイフォンは嫌った。だからこそ、その言葉を聞いて素直に引いたのだ。
「王位はいらんがこの生活は大事だ。……悪いなエレナ、そういう訳だから僕は行く!」
「はい。ではごゆっくりどうぞ」
彼が連れてるのは恐らく娼婦だろう。年々かさむ彼の娼婦費用に頭が痛いが、貴族の娘などに手を出すのと比べれば安いものだ。
そうしてレイフォンはこの場を去っていった。彼はきっと、これから寝室で楽しい時間を過ごすことだろう。
「……殿下。ありがとうございました」
「いや気にしないでいい。むしろすまなかったな、まるで娼婦がすることをさせそうになってしまった」
黙って娼婦にだけ手を出してくれればいいのに、たまにこうした面倒ごとを起こすのだから勘弁してほしい。
王位に興味がないのはありがたいが、もう少し大人しくしてくれないかと常々考えさせられる。
「ところで殿下。何かまだありましたでしょうか?」
「おぉそうだそうだ。エレナを追ってきたのには理由があってだな」
「如何なさいましたか?」
「先ほどの話だ。人選について会議を行いたい、だからその日程を検討しておいてほしい。それだけのことだったのだ」
「まぁそのような事でしたか……。呼ばれれば私が参りましたのに、わざわざご足労いただき申し訳ありません」
ティグルはたまに行動的になる。例えばエウロの件がいい例で、あの時のように急に自分でやりたがるのだ。
思い立ったらすぐ行動。ティグルはそうした性格があり、それが評価されてることも事実。それもあってかハイムでは人気が高い。
「承知いたしました。では近日中の方がよろしいでしょうか?」
「うむ!まだ半年以上あるとはいえ、事が事だ。なるべく慎重に多くの事を決めるべきだろう」
「仰る通りかと思います。では急ぎで調整いたしましょう」
「あぁ!頼んだぞエレナ!——それでは私は中庭に戻る。グリントも残してきてしまったからな、はっはっは!」
上機嫌で戻っていく姿を見て、エレナは深い息を吐く。
レイフォンとの件もそうだが、どうにも今日は疲れる日だ。考えるべきことが多く、新たな日程の調整も必要となった。
「……二人はイシュタリカで何してるのかしらね」
グラーフは元気にしているだろうか?そしてクローネはどんな女性に成長しただろう。
それを考えることが、エレナの最近の楽しみだった。
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