私がこんなことするのはお姉ちゃんだけだよ、キリッ!
「ふぁ~、いやされる~」
遊園地から帰ってきた後のゆったりとした時間。
私は今、家の露天風呂に一人でいる。
日記とか書いてるうちにみんなは入浴を済ませたみたいだった。
おそらく私が最後だろう。
ナイトパレードを見た後、遊園地を出たところでミントさんとセツナさんとはお別れになった。
また一緒に遊びたいなぁ。
今、家にはお姉ちゃんとモカさんが来ている。
モカさんは何度か来たことあるけど。
お姉ちゃんは初めてのはずだよね。
今夜は私の部屋でお泊りしていってくれるらしい。
モカさんが少し心配そうにしていたけど。
それにモカさんも今夜はマロンちゃんの部屋に泊まるみたい。
マロンちゃんすっごく喜んでたね。
私も楽しみだよ、お姉ちゃんと一緒に寝るのは。
そのまましばらくボーッとしていると、お風呂の入り口の扉が開いた。
誰か知らないけど、全裸だったら嬉しいなと思い目を凝らす。
しかし、その豊満な胸にはしっかりとバスタオルがかかっていた。
残念。
でもこんな大きな胸の持ち主……、もしかして。
「かなで~、一緒に入ろ~!」
「お姉ちゃん!」
お風呂に入ってきたのはお姉ちゃんだった。
「ちょっと待っててね、すぐ洗っちゃうから」
「私が洗ってあげようか?」
「怖いからやめておくわ」
「え~」
もう、お姉ちゃんまで私のこと変態みたいに……。
まぁいいか。
人が体を洗ってるところを見るのも、それはそれでいいものだ。
「なんだろう、すごい視線を感じるんだけど……」
「気のせいじゃないかな?」
「今すっごい見てるよね!?」
ねっとり視線の中、しばらくして体を洗い終わるお姉ちゃん。
私の隣までやってきてお湯に浸かる。
「ふぅ……」
お姉ちゃんが全身の力を抜いて後ろにもたれかかる。
そこで私は信じられないものを目にしてしまった。
これはこの世の神秘かもしれない。
なんと胸が浮いているのである。
え? 何を言ってるかわからない?
ならもう一度言おう。
胸がお湯に浮いているのである。
ハハハ!
HAHAHAHA!!
ふざけるな、抉り取ってやろうか!
私は全く水抵抗ないじょ~!
すごいだろ~!
ハハハ!
HAHAHAHA!!
はぁ……。
「かなで、なんでさっきから私の胸を凝視してるのかな?」
「おかまいなく~」
「いやいや」
おでこにチョップを食らった。
なぜだ。
「あなた、他の子にもこんなことしてないでしょうね……」
「私がこんなことするのはお姉ちゃんだけだよ、キリッ!」
「……」
あれ? 決め台詞のはずなのにお姉ちゃんが半眼に……。
「それが本当だったらね~」
「ほ、本当だよ?」
「ちゃんと私の目を見て言える?」
「……」
「ほら、目をそらした」
だってさ、ほら、みんなかわいいし。
気づいたら目で追っちゃうんだよね。
「かなで、ちゃんと私を見て」
お姉ちゃんは私の方をつかんで、強引に自分の方に振り向かせる。
ちょっとびっくりしたけど、もっと驚いたのはその真剣な目だった。
「お、お姉ちゃん?」
私はなんとか声を絞り出した。
そこにお姉ちゃんの顔がゆっくりと近づいてくる。
そして私の唇をお姉ちゃんの唇が塞いだ。
「……!?」
あまりにも突然のことに、頭での理解が追いつかず固まってしまう。
唇が触れ合っていたのはほんの少しの間だった。
私の初めてのキス。
その相手がお姉ちゃん。
「私はね、かなでが一番だよ」
「お姉ちゃん……」
「たとえ世界すべてを壊しても、私はかなでを選ぶよ」
そこまで言うと、お姉ちゃんはいつものやわらかい笑顔に戻った。
一方の私は、顔がどんどん熱を帯びてくるのを感じていた。




