ふぅ、緑茶がおいしい……
「じゃあマロンちゃん、行ってくるね」
「気を付けてね~」
朝の7時過ぎ。
あの後みんなの朝食を用意し、チョコとバニラを起こしてリビングまで連れてきた。
そしてまだ寝たままだったいろはちゃんをやさしいキスで目覚めさせようとする。
するとさっきまで灰になってたユウキに体当たりで止められてしまった。
冗談だったのに、その体当たりのせいで本当にキスしそうになってしまった。
危なかったよ。
その後もいろいろあったけどとりあえず朝食を終え、今の時間になった。
お見送りがマロンちゃんだけなのは、そのいろいろのせいなんだけど。
まぁそれは後に語ることになると思う。
いや、語らないか。
私はマロンちゃんに手を振りながら、例の鏡からむこうの世界へむかった。
こんなところでお見送りなんて、決まらないなぁ。
鏡を抜け、無事に前と同じ本殿の中に。
さっさと洞窟を出て露天風呂へむかう。
お風呂には誰もいないようだ。
残念。
朝風呂に入ってないかと期待したのになぁ。
仕方ない、早くハノちゃんに会いに行こっと。
自分の部屋にいるかな?
長い廊下を歩いてハノちゃんの部屋の前までやってきた。
最近やらかしてばかりなのできちんとノックをしよう。
私えらい!
「ハノちゃ~ん、いますか~?」
「へ? かなでさん?」
ドアのむこうから慌てて走ってくるような音がする。
急がなくていいのに。
そしてドアが開いた。
……少しだけ。
その隙間から半眼でじーっとこちらをうかがっている。
「あの、ハノちゃん?」
「大丈夫みたいですね」
「?」
何?
どうしたの?
「どうぞ」
やっとドアを全部開けてもらえた。
中に入ると、なんとモカさんがお茶をすすっていた。
「すみません、かなでさん」
後ろから隣に移動したハノちゃんがそう言って謝ってくる。
「朝、モカお姉ちゃんにモフられたので、かなでさんもしてくるかもと思って……」
セーフ!!
自重してよかった~。
ていうか、モカさんの行動が私とどんどん似てきてるんだよね。
「モカさん、何しちゃってるんですか」
私が聞くとモカさんは目線だけ横にそらした。
「だって、かなでさんをモフモフできなかったし……」
「え、まさか、そのために私のところにいたんですか」
なんてことだ。
憧れのモカさんがもはや変態に成り下がってしまった。
「それにマロンの相手で疲れちゃって、癒しが必要だったのよ」
「おお……」
そうでしたか。
いくら仲直りしたとはいえ、久しぶりに姉妹で会話したんだから緊張とかあるよね。
そういえば私とお姉ちゃんも久しぶりの再会だったんだよね。
私はあんまり気にしてなかったけど、お姉ちゃんはどうだったんだろう。
ストレスためて、後で変なことしてないといいけど……。
「ふぅ、緑茶がおいしい……」
本当に疲れてますねモカさん……。
これマロンちゃん関係はないんじゃないだろうか。
「かなでさんのお茶もいれますね」
「あ、ありがとう」
のんびりとお茶をすするモカさんをじっと見ていたら、ハノちゃんが私の分も用意してくれた。
別に飲みたかったわけじゃないけど、せっかくだし頂こう。
目の前に置かれたお茶からいい香りが漂う。
これだけでもなかなかに落ち着く。
一口すすれば、まるで魔法にでもかかったかのように心が穏やかになった。
これは本当にただの緑茶なのだろうか?
その後も3人でお茶を飲みながら、のんびりまったりとした時間を過ごした。
何か忘れているような気がするけど……。
今はこの時間を大切にしたいのだよ。
……。
……。
あ、お姉ちゃんのところ行くんだった。




