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いつか夢見た百合の世界  作者: 朝乃 永遠
ついに異世界へ
33/104

なんで動画にしなかったの、私……

「あの、それよりかなでさん」

「はい?」


モカさんがいきなりシャキッともとに戻る。

まじめな話かな。


「ろ、録音……」

「……」


戻ってなかった。


もじもじとしながら顔をそらし、チラチラこちらを見てくる。

スマートフォンをちょこんと両手で胸の前に構えていて、

その姿はとてもかわいらしい。


「え~っと、なんて言ったらいいですか?」

「『モカお姉ちゃん、だ~いすき♪』でお願いします」

「レベル高いのできましたね!」


それ一番最後にお願いしてきた分じゃないですか!


「い、いきますよ」

「あ、やるんだ……」


言わないでハノちゃん。


恥ずかしさのあまり、手を胸の前でもじもじしながら顔をそらす。

そして視線だけを上目遣い気味にモカさんにむける。


「モカお姉ちゃん、だ~いすき……」

「……」

「……」


言った~、恥ずかしいよ~。


「ぐわ~っ!」


な、何!?

モカさんが突然崩れ落ち、両手を地面についた。


「だ、大丈夫ですか?」

「なんで動画にしなかったの、私……」


そこですか。

泣くほどそこですか。


とりあえず肩を貸してモカさんを立ち上がらせる。

反対側をハノちゃんが支えてくれた。

やさしいなぁ、私のお嫁さんは。


そんなハノちゃんに癒されていたら。

ハノちゃんがモカさんとコソコソ話し始める。


「あのモカさん、今の音声、私にも送ってほしいです」

「あら、お仲間? いいけど、私の名前が入っちゃってるわよ?」

「大丈夫です、あとで編集しますから」


あの~、近くて聞こえてるんですけど……。


「……あなた、そんなことができるの?」

「はい、この前めがみさまにPCをもらったんです」

「ふふふ、あなたとは長い付き合いになりそうね」


「ハノと申します。よろしくお願いします」

「改めまして、モカです。よろしくね」


何盛り上がってるの、この人たち……。


「あの、それよりモカさん」

「え? あ、何かしら」

「お姉ちゃんのいる場所ってわかりますか?」


ちょっと強引に話を戻してみた。


「知ってるわよ」

「私も知ってます」

「え?」


モカさんだけでなく、ハノちゃんも知ってるなんて。

一体どういう存在なんだろう、あの人。


「お姉ちゃんのところまで連れて行ってくれませんか」

「いいわよ、でもその前に」

「?」


「動画を撮らせてください」

「あ、私も……」


話が戻ってしまった。

うぅ、なんで私のなんかをそんなに欲しがるの?


「じゃあ私も二人の動画を撮ります」

「え?」

「ふぇ?」


私だって動画欲しいもんね。

くくく。


ということで、三人で動画を撮り合うことに。

ああ、高性能なムービーカメラが欲しい~。


そういえば、なんでこの二人は

私たちの世界のデバイスを持ってるんだろう。


モカさんは、まぁ分かるけど。

ハノちゃんは、こっちの世界の一般人じゃないのかな。

お姉ちゃんにもらってるみたいだけど。


……まぁいっか。

これが私のいいところ。

細かいことは気にしない。

多分。


私はモカさんに上からのぞき込むような姿勢で、

『よしよし~、かなでちゃんかわいい~、今日はお姉ちゃんと一緒に寝ようね♪』

という言葉を希望。


ハノちゃんには上目遣いでの『私をお嫁さんにしてください……』をお願いした。


ふふふ、永久保存だね。


「これがかなでさんの趣味なのね……」

「覚えておきます……」


これ、お願いする方もかなり恥ずかしいよね。

モカさんがあんなだったからあまり気にしてなかったけど……。


まぁ、それ以上にいいものが手に入りましたので、

良しとしましょうか♪

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