これはもしかしてむこうの世界だったり?
天使の舞に誘われてしまった。
どうしよう……。
恥ずかしくてできないよ。
しかも一緒にって。
「え~と、ちょっとのぼせてきたし、今日はやめておくね」
ここは冷静になってお断りしておこう。
「そうですか、残念」
いろはちゃんがしょんぼりとしている。
うそ、本当にやりたかったの?
「では、私、先にあがりますね」
「え、あ、うん」
先にあがって行っちゃった。
悪いことしちゃったかな……。
今度はいろはちゃんの期待に応えないと。
覚悟を決めて天使の舞、やりますか!
お姉ちゃん、私、悟りを開いちゃうかも。
大人への階段、のぼっちゃうかもです。
あ、早くあがらないと本当に倒れそうだ。
そう思い立ち上がる。
「ひゃっ」
その瞬間、強い風が吹いた。
「あ~、気持ちいい風~」
ん? 風?
なんでこんな強い風が吹いているんだろう。
明らかに不自然な方向からの突然の風。
しばらく当たっていると体調が戻ってきた。
よし、どこから吹いているか、たどってみよう。
さっきほど強くはないけど、一応バスタオルを抑えながら進む。
なんかいい香りがする風だなぁ。
これは女の子の香りだよ。
しかも、私の大好きな大人しい感じの。
香りを楽しみつつ、風の吹く先へ。
すると、お風呂場の端の方。
小さな湯船のある場所だった。
どこに風の入る場所があるんだろう?
手をかざしながら確かめる。
すると、この湯船の壁についている大きな姿見鏡の方だった。
あれ、なんかこの鏡から風がでてる?
どういうこと?
不思議に思っていると、突然お姉ちゃんがくれた指輪が光り始めた。
「きゃっ」
指輪が光の玉になって鏡へむかっていく。
そして鏡の上の方にあったくぼみにぴったりはまってしまった。
さらにお姉ちゃんのペンダントが光り、私の頭の中に何か浮かんでくる。
前に魔法を使ったときと同じ感覚だ。
私は鏡に手をかざし、魔法を発動する。
するとその鏡には別の場所が映し出されていた。
マジックミラーのような感じかな。
「これはもしかしてむこうの世界だったり?」
もう少しよく見ようと、鏡に近づき手をつこうとした。
しかし私の手は鏡をすり抜けてしまう。
そのままバランスを崩し、鏡にむかって倒れこんでしまった。
「いたた」
びっくりした~。
私は上半身だけ鏡のむこうに入ってしまっていた。
顔をあげると、さっきまで鏡に映っていた場所が目の前に広がっている。
立ちあがり、改めて鏡の中に入る。
ここは何だろう。
神社の本殿のように見える。
この鏡を祀っているみたいだ。
怖い。
すごいところにいるよ、今。
元の世界へ戻れるか、ちゃんと確認しておこう。
まず手を通して、続いて顔も入れる。
ちゃんと露天風呂が見える。
よかった。
なら少し進んでみようかな。
そうだ、私の入浴用のバスタオルって実はここをこうすると……。
なんとバスローブみたいになるのだ。
かわいいんだよ~。
でもちょっと恥ずかしいから、人に見つからないようにしよう。
本殿のようなところから注意して外に出る。
どうやら洞窟の中に建てられているようだ。
建物の階段を下りると、洞窟にそって木で作られた道がある。
その道には赤い鳥居がずーっと続いている。
ここが最深部かな。
バスローブ姿なのに寒さを感じない。
あと光源が見当たらないのに、あたりは明るい。
魔法でも効いているのかな。
しばらく歩くとそんなにかからずに外からの明かりが差し込んできた。
ここから見える範囲で人がいないことを確認し、外に出る。
「これは……」
目の前に広がっているのは、露天風呂だった。
お風呂からお風呂へつながっているのか。
しばらくぼーっとしていて、ふいに視線を右に移動させる。
するとすぐ隣に変なポーズで固まる女の子がいた。
あ、いろはちゃんと同じポーズだ。
「め、めがみ様?」
「え?」




