「偽者達の末路」
手当たり次第に剣や石等と位置をすり替え攻撃する事を繰り返しながら皆の様子を窺う。セレンもフェリーヌさんも数の多さ故に囲まれてはいるものの大丈夫そうだ、見ると馬を捨てた偽ラストルフォと偽スロモンが彼女達に向かっているけれど問題はないだろう。そして、ピュルパンさんの方は……
「遂に追い詰めたぞオラ! 観念しろ! 」
壁際に追い詰められうずくまった偽ピュルパンに向かって彼が宣言する。
「それはどうかな、追い詰められたのはお前だ。ちょっとコスプレが上手いからって調子に乗りやがってこちらは元Sランクの剣士様だぞ。おまけに……喰らえ! 」
偽ピュルパンは勝ち誇りながら彼目掛けて拾った小石を投げつけた。どうやら先程怯えたようにうずくまっていたのは小石を拾うための演技だったみたいだ。
ヒュン
投げられた小石は一直線に彼目掛けて飛んでいく、それを認識するや否や偽ピュルパンは剣を構えた。直撃しようが避けようがそこに生まれた隙を突くつもりなのだろう。
ガン
石が彼の額に命中した瞬間、彼は動き出す。
「バカめ、避ければ痛み無く死ねたものを……死ね! 」
この隙を待ってましたとばかりに剣を振る。でも、彼に隙は生まれなかった。
「舐めてんじゃねーぞコラァ! 」
「ひっ……」
石は命中したものの彼はそんな事を意に介さずに剣を振る。直後、スパッと怯えた偽ピュルパンの首は両断された。
胴体が力なく倒れるのを見届けると偽カロリマールを見た後に宙にいるオレを見る。
「それでは、ワタクシはこれで」
「ありがとうございました」
消え行く彼に礼を述べる。まだ時間はあるけれど、答えてくれた者が帰ると言うのだから留める事は出来ない。それに、彼の気持ちは理解できた。
「『召喚』出でよ、シャノルマーニュ十二勇将の1人、カロリマール! 」
「僕の出番のようだな……おおっと」
カロリマールさんを呼び出すも空中だったので何も知らない彼は勢い良く落下してしまう、でも流石十二勇将、敵を払い見事に着地をすると落下するオレを受け止めた。
「大丈夫か? 」
「は、はい……」
「あれが僕の偽者か、任せてもらうぜ」
彼はそう言うと瞬く間に彼の姿を見て逃げ出した偽者の元へと移動し切り裂く。
「なあこいつら全員やって良いのか? 」
「えっ」
「きゃっ」
「この2人以外は」
潜入のため敵味方同じ服を着ているので数秒、フェリーヌさんとセレンをオレと『すり替え』し2人が仲間である事を示す。
「了解した、それなら行くぜ! 」
彼はそう言うと自らの順番を待つように固まっている盗賊達の中へと飛び込み戦闘を始める。
敵が多いから助かった。セレンとフェリーヌさんも偽者2人を倒し大丈夫そうだ。あとは……
祭壇のカーテンを見つめる。
……一応向こうには『催眠術』という切り札があるのだから逃げはしないと考えてはいたけどここまで何もして来ないと不気味だ、でもやるしかない。
周囲を見回して剣が落ちている場所を確認するとギリギリまで祭壇へ近付き小石をカーテン目掛けて投げる。そして石がぶつかる寸前、その石を剣へと『すり替え』する。すり替えられた剣は勢い良くカーテンの中へと入り込んだ。
……斬るのを想定していたけど今ので中が見えた。行くぞ!
指に『ミニミニファイアボール』を出現させると剣とオレの位置を『すり替え』。瞬間、目の前にビッグファザーが現れた。
「終わりだ」
もう『催眠術』にかかったフリなんかも必要ない。そう呟くと彼目掛けて火球を放つ。
「ぎゃあああああああ」
腹に命中し彼の断末魔が洞窟内に響き渡る。
……ビッグファザーってこんな声だったか?
先程まで聞いていた声よりも高く違和感を覚え倒れた彼の仮面を取る。現れた彼の顔は以前見たものとは別物だった。
「偽者? でもどうして……」
思わず呟いてしまうも倒れた彼が答える事はなかった。




