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「ビッグファザーを探せ」

 ギルドトーナメントから数日後、オレがギルド内最強戦士という称号は貰ったもののこれまで通りセレンをリーダーとしようと決めたオレ達が彼女を先頭にギルドに顔を出すと慌ててマリーさんが駆け寄ってきた。


「"イデアル"の皆さん、聞いてください。皆さんと市民の方のお力で先日王様からギルド存続の許可が下りました」

「良かったじゃない」


 流石の王様も市民の力の前には無力だったようだ。王の暴走ともいえるギルド閉鎖により多くの戦士が他国に亡命し王が国諸共破滅に向かう事が予測できたので王の破滅を願うには閉鎖でも良かったのかもしれないけれど、それだと大勢の人が巻き込まれることが予測されていたので閉鎖を免れたのは良い事だ。マリーさんも喜んでいるし。


「はい、ただ条件がございまして……」

「条件? 」

「ビッグファザーを倒したらと言う事です」

「ビッグファザーを! ? 」

「倒せと言われても……なあ」


 この数日、毎日ギルドに通うもビッグファザーが関与しているであろうクエストは未だに無く彼の手掛かりは見つからなかった。その事はギルド職員のマリーさんが一番よく知っているはずだ。


「期限は? 」

「今年いっぱいと」

「一応数か月は延びたのね」

「ええ、ギルドとしても全力を挙げて独自に調査を行いながらも手掛かりを見つけますので掴んだ時は宜しくお願い致します」

「了解したわ、こちらには最強の戦士がいるからね」


 セレンが冗談交じりに答えるとオレに視線を向けた。


 ~~

「マリーちゃん達でも見つけられないとなるとどこにいるんだろう」

「今は期を伺ってどこかに潜んでいるのかな? 」

「可能性はあるわね。図らずとも後数か月でギルドは無くなってしまう訳だから」

「それをビッグファザーは知っているかだよなあ。"奇跡の会"四天王全滅で相当頭にきているから何か来ると思っていたんだけど……」


 一つのクエストを済ませ帰り道の馬車で夜の街を駆けながらオレ達は意見交換を交わす。


「それならボク達も探してみる? 」

「探すと言っても顔も何も分からないのよ? 」

「そうだね、何か一つでも手掛かりがあれば」

「それがあるんだよ、シャン君の『読心術(テレパシー)』が」

「『読心術(テレパシー)』。そういう事ですか」

「そうだよ、ビッグファザーなら心でも『ビッグファザーだあああ』とか思っているはずだよ」

「可能性はなくはないわね。そうなるととりあえず食事を済ませるがてらシャンには頑張って貰う事になるけれど構わないかしら」

「勿論」


 ドンと胸を叩く。『読心術(テレパシー)』はそんなに負担がかからないのでお安い御用だ。

 ……とはいえ、この広い国からビッグファザーとこの王都の次に栄えていると噂のバーの街のたまたま立ち寄ったレストランで遭遇何て事があるはずがない。それならばいっそ……


「それならキャ・バレーとかどうだ? 」


 ……いっそ欲望を開放してしまおうと提案をする。

 キャ・バレー、それはお姉さんが凄いダンスをしたりする所、一度は行ってみたい所だし満更(まんざら)理由がないわけではない。


「という訳で行ってきま……」

「待ちなさい」


 ガッシリと腕を掴まれる。

 ……あ、やっぱりダメですか。


「ダメだよシャン君、ほ、ほらああ言う所はさ……その……ね」

「ふぇ、フェリーヌに賛成。酒場じゃダメなの? 」

「そうね、でも一応理由を聞かせて貰おうかしら」

「理由か……男のロマンってやつかな」

「却下よ」

「と言うのは半分冗談で、キャ・バレーと言うのは一度は行ってみたいと思う場所だ。そこに一応5人だけだったとは言え"奇跡の会"のリーダーしかもビッグファザーを名乗っていた男なら行った事位はあるんじゃないか? 」

「一理あるわね」


 意外なことに冷静にセレンがオレの案を受け入れオレのキャ・バレーデビューが幕を開けるかと思ったその時彼女が付け足す。


「それじゃあ、皆で行きましょう」


 こうして、憧れのキャ・バレーデビューが半分幕を開けた。

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