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「奇跡の会の手掛かり」

 翌日、皆で鎧を新調して翌々日、ギルドに入るとマリーさんが紙を持ってこちらに駆け寄って来た。


「セレンさん、こちらですけど、西のエスト村で新しい村長が就任したみたいですが、その村長が反対する者を次々と物に変えてしまったみたいで……」

「人を物に……それは興味深いわね。ありがとうマリー、受けさせて頂くわ」

「ありがとうございます、お気をつけて」


 快諾すると彼女は馬車へと飛び乗った。

 ……確かに人を物に変えるなんて"奇跡の会"の四天王の可能性が高いだろうけど。


「そんな力持っている奴をどう倒すんだよ」

「えっどうって……」


 ……やっぱり何も考えていなかったか。


「セレン何も考えていなかったの? 」

「じ、自信満々に受け取っていたから何かあるかと」

「『催眠術(ヒプノシス)』の時みたいに鏡の反射を狙うとかどうかしら」

「あれは指とかでかけるから反射で対応できたけど身体全体とかだと無理だぞ」

「そんな……」

「なんてな、実はビッグファザーとの対決に備えて一つだけ考えていた」

「流石ね、どんな戦法? 」

「やられる前にオレが『催眠術(ヒプノシス)』で操る、早打ち対決だ」


 と数か月前から考えていた対ビッグファザー用の作戦を披露する。


「それじゃ貴方が危険じゃない」


 流石セレンだ、この作戦の唯一の弱点を即看破するとは……


「まあその時はその時だ、勝算がないわけじゃない。向こうはパフォーマンスを兼ねて口で宣言するからその隙にちょちょいのちょいだ」

「念じるだけで出来たらどうするのよ」

「…………そこまでは考えていなかった」

「こうなったら仕方ないわ、ワタシが侵入者として捕まるからそれに混じって侵入して隙を見計らって仕留めて」

「それだとセレンが危険じゃないか」

「倒れたら戻るのでしょ? 」

「食べ物にされた後に踏みつぶされたりしたら? 」

「……やっぱりワタシがやるわ。元々、ここまで誰も欠けずに来られたのが奇跡みたいなものだから」

「そんなセレンがいないとボク無理だよ」

「あ、アタシだって」


 セレンの覚悟により一気にお別れムードになる車内、確かにセレンを囮にすれば確実に催眠をかけることが出来るだろう……かと言って本当にお別れなんてさせる訳には行かない。

 ……怒られるかもしれないけど、試してみるか。

 駄目で元々精神でボリヴィエさんと『交信(コミュニケーション)』を開始する。


『お久しぶりです、私に何か御用でしょうか』

 ……実は、以前のような奇術師との戦いで困っていまして、人を物に変える奇術を使うらしくパーティーの一人が囮になると言い出し止めても聞かず、ですので彼女が物に変えられる直前にオレが前に出るので出た瞬間に一振りしていただけないでしょうか?

『なるほど、その一撃で仕留めることが出来なかった場合は最悪私が何かに変えられてしまうと』

 ……はい。

『勿論協力させて頂きます』

 ……良いのですか?

『勿論ですとも、何かに変えられるという経験はなかったもので』

 ……ありがとうございます。

『いえいえお礼を言うのはこちらですよ、事前に連絡してくださってありがとうございます、それではお待ちしております』


 『交信(コミュニケーション)』はそこで終了する。

 ……結構酷い提案をしたのにお礼まで言われてしまった。どれだけ聖人なんだ。

 とにかくこれで作戦は決まった、セレンの作戦に乗りつつも最後はオレが割り込んでボリヴィエが斬るか『催眠術(ヒプノシス)』をかける。

 フェリーヌさんとルミさんに話すのは……やめておこう、危険なのがセレンからオレに変わるだけだし知らせた所で二人の対応が変わることはない……と信じたい。


「シャン、大丈夫なのシャン」

「ああ」

「しっかりしてね、何かあったら貴方にリーダーを託したいんだから、それとね……」

「あんまりしんみりすること言うのやめとけよ、生きていたら恥ずかしくなるから」

「……それもそうね」


 もう覚悟を決めている彼女に対して作戦を話すわけには行かないので釘を刺すと彼女の手をそっと握った。

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