「同棲」
同棲生活初日、手続きを済ませオレ達は早速シングルベッド一つと元々あったセレンが使用していたトリプルベッドと呼ぶべきか三人が眠れそうな大きなベッド一つに誰がどう眠るかという問題に直面していた。
「この中で狙われやすいのはシャンだからシャンが先に決めて良いわよ」
「賛成〜」
「そ、そうだね」
と長引くかと思いきや決定権がオレに委任される。
「そうだな、それならまず護衛対象であるオレが真ん中でルミさんとフェリーヌさんが左右、セレンはシングルな」
「良いわよ」
「良いのか? 」
反論が来るのを予測して冗談交じりに欲望のままに話したことがすんなり許可されたのに驚き尋ねるも彼女は澄まし顔だ。口論の末に勝ち取るとかならともかくこうなるとオレとしてもやりにくい。
「冗談だよ、真ん中がセレンでオレがシングルだ」
「別に気を遣わなくて良いのよ? 」
「そんな訳ないだろ、それなら聞くけどセレンはさっきのオレの防衛を兼ねた配置は良いと思うのか? 」
「護衛対象を囲むのは最適と思うわよ」
……嘘だろ? 絶対に気を遣ってると思ったのに遣ってないのか? ええい面倒な。
「……そこだよ」
「え? 」
「多分他の人に聞いてもそう答える人の方が多いと思う、という事は襲撃者もそうだろう。だからオレは敢えて手薄なシングルで寝たいんだよ」
「なるほどね、分かったわ」
とかなり気を遣ってトリプルの権利を彼女に譲る。フェリーヌさんと一緒なのは嬉しいけどその為に三人から誰かを外すってのは気分が悪い。
こうしてオレ達のベッド論争は解決した。そして数時間後、この判断が正しかったと言うことが証明される。
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「ふう、良いお湯だったね~」
「う、うんありがとうセレン」
「何よ改まって、もう一緒に暮らすんだから」
数時間後、いつも見慣れた鎧姿と異なりボディラインがくっきりと舌パジャマ姿の三人が風呂から戻ってくる。
……胸はフェリーヌさん、スタイルはルミさん、中間はセレンか。
「それじゃあ、シャン入って良いわよ……おーい」
「あ、ああ」
「どうしたのよ、ボーっとして」
「イ、いや別に」
「変なこと考えていたでしょ? 」
「まあ、何だかんだセレンとフェリーヌさんの鎧姿以外を見るのが初めてだったから」
それが突然パジャマ姿だなんて色々と飛びすぎて刺激が強すぎるのも仕方がない。
「そういえば、ボクとシャン君は余り休日は会わなかったけどセレンとは結構会ってるんじゃないの~? 泊まったりとかもしていたんでしょ? 」
「そうですけど、あの時は風呂は家ででしたし基本セレンは鎧だったので」
「ええ~そうだったんだ~」
「き、休日も鎧なんだねセレンは」
「別に良いでしょ、鎧を着ている方が非常時に対処がしやすいし……」
「まあ、そういう訳で初めてだったから珍しいなと見てしまったという訳だ……風呂行ってくる」
上手い事誤魔化せたのでオレはそう言うと立ち上がるあれでパジャマ姿のルミさんとフェリーヌさんに挟まれて寝るなんてなったらここまで冷静にはなれず下手すれば混乱していただろうあの時セレンにその座を譲っておいて良かった。
と数時間前のオレに感謝しながら風呂へと向かった。




