「Sランクへ」
オレ達の快進撃は続き次々とAランクをクリアしSランクの昇格クエストを受ける時がやって来た。
「今度こそ間違いなくこちらのクエストです、間違いありません! 言い忘れていましたが今回クエスト達成でも最速Sランクパーティーとなります。頑張ってください! 」
「ありがとう」
やたらと念を押され受付のマリーさんから手渡されたクエスト内容が記された用紙をセレンが受け取ると馬車へと向かう。
「さあ、いよいよね」
「ああ」
「頑張ろうね~」
「は、はい! 」
馬車に入ると最速もかかっているからかセレンがやたらと意気込んで用紙を読み上げる。
「目的地は南南西の荒野、これは長旅になるから間にあるアイーダの街で休憩した方が良さそうね。そして討伐対象は……ジャンボア・ルマジロ? 」
「ア・ルマジロってあの丸くなる? 」
「恐らくね、二人共対策の方は? 」
「勿論! 」
「だ、大丈夫です! 」
ルミさんと顔を見合わせると力強く答える。
「それなら安心ね、出発しましょう」
セレンは目的地が記された紙を「お願いします」と御者に手渡すと程なくして馬車は出発した。
~~
休憩を挟みつつ馬車に揺られること数時間、陽が沈み暗くなった頃に目的のジャンボア・ルマジロが生息すると言われている荒野へと辿り着く。
「あ、ア・ルマジロは夜行性なので丁度動き出す頃ですね」
「待つ手間が省けたという訳ね」
「でもどこにいるんだろ? ジャンボでしょ~岩と同じくらいの大きさなのかな~」
「そこは月明りを頼りに見分けるしかないわね。それで作戦は? 」
セレンに尋ねられたのでルミさんに目配せをする。
「ア、ア・ルマジロは長い爪もしくは舌で獲物を捕らえるのを利用して右手、左手、頭が正面になる三方向から接近し舌が来たら舌を、爪が来たならば攻撃された一人が回避をしてその間に二人が攻撃をして仕留める」
「そうなると、両端には素早いルミとワタシ、中央は確実に頭を一刺しするためにパワーがあるフェリーヌの配置が良さそうね」
「う、うん、硬い甲羅に隠れられてしまうと長期戦になってしまうので速攻勝負で行こう」
「それじゃあ、早速行ってみよう! 」
作戦も共有出来たということで馬車を離れようとした時だった。
ズシン! ズシン!
物凄い地響きた響き渡る。
「ま、まさかこの音は……」
恐る恐る音のする方向に目を向けると一つだけゆっくりと移動する全長十メートル程の岩のような物が目に入る。
「ウソだろ……」
「ホントにジャンボだね」
「あれで爪と舌が武器って恐ろしいわ」
「は、はわわ……」
以前のビッグス・パイダーよりも遥かに大きなジャンボア・ルマジロ、確かにこの大きさだと爪とかもはや即死ではなかろうか?
とはいえそれで足が止まってしまうような三人ではない。
「一気に仕留めるわよ」
「了解」
「お、おーけー」
姿を捉えるや否や目標目掛けて作戦通りに三方向から向かって行く頼もしい仲間達、だがその頼もしさがア•ルマジロに恐怖として伝わったのかもしれない。三人の姿を確認するや否や丸くなってしまった。
「う、うそ。こんな早く隠れられてしまうなんて」
「隙を狙いたいけど見事な丸ね」
「そりゃ! 」
ガァン!
「か、硬くて傷をつけるのが精一杯だよ〜」
流石ジャンボ近付いたフェリーヌさんの剣でもビクともしない程の硬さだ。
「かくなる上は思いっきり突いて貫いてやる〜」
「それはダメよ、斬るのと異なって回避行動が遅れてしまうから危険が伴うわ」
「じゃあどうすれば良いのさ〜」
「ど、どこかに隠れて出てくるのを待つかもしくは……」
ルミさんが背後のオレに視線を向ける。それで二人は理解したようだ。
「出番という訳ね」
「ええ〜シャノルマーニュ十二勇将ならこの甲羅も切れるの? 」
「いえ、それは分かりません……ので確実に行きます。『召喚』出でよシャノルマーニュ十二勇将の一人、アラジジ」
オレが叫んだ瞬間、目の前に杖を持った男性が姿を現す。
「今からアラジジさんにジャンボア・ルマジロを甲羅から出して頂く。そこをさっきの作戦で倒してくれ。アラジジさん、説明した作戦通りにお願いします」
「了解した、ワシに任せて貰おう」
彼が杖を掲げるとそこから吹雪が飛び出した。荒野に出現した吹雪は容赦なくジャンボア・ルマジロへと向かう。するとジャンボア・ルマジロは溜まらずに甲羅から飛び出す。
「どういうこと? 」
「ア・ルマジロは寒さに弱い。だから冷やせば移動するために出てこざるを得ないんだ。それじゃあ後は頼んだ」
「了解、行きましょう二人共」
三人が先程の戦術通りに飛び出す。それに対してジャンボア・ルマジロはルミさん目掛けて爪を振るも彼女はそれをヒラリと躱しながら腕を斬る。
「隙あり! 」
続いてセレンが残った腕を斬り落とす、これで残るは頭部のみだ。
「貰った~」
フェリーヌさんが頭部目掛けて飛び力いっぱい剣を振り下ろす。たちまちジャンボア・ルマジロの頭部は切断された。
「これでボク達」
「も、文句なしの」
「Sランク戦士よ」
感極まった三人が声を上げる。
「あれで良かったのかのう、やはり甲羅事爆破の方が安全の面でも」
「いえ、三人で倒したかったので無理を言ったにも関わらずありがとうございました」
「ファッファッ、それもまた一興よ」
「ところで、今の魔術……ってオレも使えますかね? 」
「奇術と魔術は違うからのう……一概には言えぬが、簡単なものから教えるのは構わんぞ」
「ありがとうございます、それではまた宜しくお願い致します」
「こちらこそ宜しくのう、さて、今日の所はこれで失礼するさせてもらおう」
アラジジさんはオレに笑みを返すと光となった。
……モンスターは倒したからもうちょっと残ってくれてもよ良かったのに。
と前方を見るとこちらに目を向けている三人の姿が目に入る。
……もしかして気を遣ってくれたのかな。ありがとうございます、全力で楽しませて頂きます。
「しかもオレ達はギルド史上最速のSランク戦士パーティーだー」
声の限り叫ぶと三人の元へと走った。




