3/3
モノローグ -ひとのおもい- タマ、ひとのおもい
-タマやタマ-
-お前が私の後継ぎになれたらねぇ-
あたしが初めて、絵を書いてみたいと思った時の記憶だ。
世は室町の頃だったはず。
あたしを拾った夫婦は、あたしがあやかし猫だと知らず、
あたしは幾年かを猫として飼われていた。
尋常ならざる猫であり、人に成れるもので、
けれども、どちらの似姿をしても、
人にも、猫にも、結局のところ成りきれず、
紛い人、紛い猫、
せいぜいが、そういったものでしかなかった頃のことだ。
飼い主の絵描き夫婦には子が無く、
そういった意味では、あたしがあの家の子だった。
二人は猫だと思っていても、黙って猫のふりをするあたしに、
いつも人の言葉で話しかけてきた。
-タマやタマ-
あたしへとそう話しかけて、
いろいろなことを話してくれた。
いつまでも手の掛かる子ども。
けれども、ずっといっしょにいる子ども。
彼らが望んだ相手。
あたしはずっといっしょに居た。
そしてあたしは、あるときから、あの人たちの娘になる。




