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『転生したら鎧だったので、自分で動けない。なので呪われた美少女妖精に乗り込んでもらって最強を目指します』  作者: 月影 朔
第1章:忘れられたダンジョン編

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第21話:魂装融合と鎧の換装

(待ってろよ、ロックリザード。

お前のその自慢の装甲、俺たちが最高の形で乗りこなしてやるからな!)


 俺は新たな目標を見つけ、ゆっくりと立ち上がった。

この泥だらけの勝利を、次の力に変えるために。

俺たちの、本当の進化が今、始まろうとしていた。


(よし、まずは素材の吟味からだ!

最高のパーツを手に入れるには、まずドナーのコンディションを把握しねえとな!)


 俺の魂に、整備士としての血が騒ぐ。

目の前に横たわるのはもはや脅威の魔物ではない。

最高の性能を秘めた、極上のドナーパーツの山だ。


 俺はスクラップ寸前の身体を引きずりながら、ロックリザードの亡骸へと近づいた。


「アルマ、お気をつけて。まだ微弱ながら、魔物の怨念のようなものが残っていますわ」


(ああ、大丈夫だ。

こいつはもう、ただの素材だ。俺たちを強くするための、な)


 俺はまず、スキル《機構造解析》を最大出力で起動させた。

今度は戦闘中のようなプレッシャーはない。

時間をかけてじっくりと、この天然の複合装甲の秘密を丸裸にしてやる。

脳内に、再びあの青白い設計図が展開された。

戦闘中に垣間見た時とは比べ物にならない、圧倒的な情報量だ。


(すげぇ……。

やっぱりこいつの装甲、とんでもない構造してるぞ)


 表面の黒曜石層は、ただ硬いだけじゃない。

衝撃を受けた瞬間にそのエネルギーを微細な振動として表面全体に拡散させる構造になっている。

まるで、最新の衝撃吸収材だ。


 その下の雲母層は、拡散された振動をさらに減衰させるためのダンパーの役割。

そして内部の結晶層は、ブレス攻撃のような高熱を効率的に外部へ放出するためのヒートシンクそのものだ。


(硬度、靭性、放熱性……。

三つの異なる特性を持つ層が、互いの弱点を補い合うように完璧に配置されている。

自然界でこんなものが生まれるなんて、奇跡かよ……)


 俺がその完璧な設計思想に感嘆していると、リリアの声が俺の分析をさらに補強してくれた。


「アルマ、わたくしの《霊素視》では、この肩甲骨の部分……

わたくしたちが最後に破壊した、あの弱点の周辺の霊素が最も安定しているように視えます。

おそらく、ここがこの甲殻全体の『核』となっていた部分。

ここを主装甲として移植するのが、よろしいかと」


(なるほどな!

さすが最高のナビゲーターだ。

一番頑丈なフレーム部分をいただくってわけか!)


 俺の静的な「設計図」とリリアの動的な「回路図」。

二つの力が合わされば、もはや見えないものはない。

俺たちは、ロックリザードの亡骸から最も状態が良く強度の高い肩甲骨周りの甲殻を、今回の魔改造のメインパーツとして選定した。


(よし、リリア。前回、俺の腕を修理した時と同じ要領だ。

俺が構造を合わせる。お前は接着剤役、霊素の調和を頼む)


「はい、お任せくださいまし!

あなたの最高の仕事に、わたくしの魂を添えてさしあげますわ!」


 リリアの頼もしい言葉に背中を押され、俺はついに最初の本格的な《魂装融合》に取り掛かった。

まずは、素材の切り出しだ。

俺はひしゃげた左腕を解体用のカッターのようにイメージし、その先端に霊素を集中させる。

そして、リリアが示してくれた甲殻の継ぎ目に慎重に刃を入れた。


 整備士の経験が、こんなところで役に立つとは思わなかった。

無駄な力を入れず、素材の目に沿って最小限の力で最大の効果を得る。


バリバリ、と硬い甲殻が剥がれていく。


(いいぞ……

いい感じだ。この調子で、必要な部分だけを丁寧に……)


 数十分にも感じられる集中作業の末、俺はついに胸当てと両肩を覆うのに十分な大きさの見事な赤黒い甲殻を切り出すことに成功した。

いよいよ、これを俺の鎧に移植する。

ごくり、と魂の喉が鳴る。


 前回の失敗が脳裏をよぎる。だが、もう恐怖はない。

なぜなら、俺の隣には最高の相棒がいるのだから。


(リリア、いくぞ!)


「ええ!」


 俺は、切り出した甲殻を踏み潰されてひしゃげた自分の胸部装甲の上にそっと乗せた。

そして、その上からかろうじて動く右腕を置く。


 ゆっくりと、俺とリリアの魂から二色の霊素の糸が紡ぎ出された。

俺の荒々しい魂を体現したかのような黄金の霊素。

リリアの清らかな魂を映したかのような白銀の霊素。

二つの光が美しい螺旋を描きながら絡み合い、甲殻と鎧の隙間へと流れ込んでいく。


 その瞬間、脳内にあの無機質なシステムメッセージが響き渡った。


魂装融合(ソウル・マージ)シークエンス開始。 対象:ロックリザードの甲殻。 (アーマー)との親和性(アフィニティ)78%》


(親和性78%!?

思ったよりずっと相性がいいな!)


 驚きと喜びが、俺の魂を満たす。

盾の破片との融合に失敗した時は、おそらく親和性が絶望的に低かったのだろう。

だが、このロックリザードの甲殻は違う。

激しい死闘を繰り広げた相手だ。

もしかしたら、その魂のぶつかり合いの中で俺たちの霊素と似た性質を帯びていたのかもしれない。


(まるで、好敵手の形見を譲り受けるみたいじゃないか。

……悪くない)


 78%という高い親和性のおかげで、融合は驚くほどスムーズに進んだ。

リリアが紡ぎ出す白銀の霊素が完璧な接着剤となり、俺の黄金の霊素が二つの物質を分子レベルで再構築していく。


 赤黒い甲殻が、まるで熱したプラスチックのようにゆっくりと融解し、俺のボロボロの鉄のフレームに吸い付くように馴染んでいく。

ひしゃげていた胸部装甲の凹みを埋め、砕け散った肩のパーツを補強し、ブレスで融解した背中を覆い尽くす。


 それはもはや、単なる「修理」ではなかった。

二つの異なる存在が、俺とリリアという二つの魂を触媒として全く新しい一つの存在へと生まれ変わる、神聖な儀式のようだった。


 ジジジ……という霊素の溶け合う音だけが、静かなダンジョンに響き渡る。

やがて、甲殻が完全に俺の鎧と一体化した時、システムが完了の合図を告げた。


《……融合完了。防御力(DEF)が30%上昇》


(終わった……!)


 俺は、ゆっくりと自分の身体を見下ろした。

そこにいたのは、もはやさっきまでのスクラップ寸前の鉄屑ではなかった。


 ひしゃげていた胸部は、ロックリザードの頑強な甲殻によって以前よりも遥かに分厚く、そして力強い曲線を描いている。

両肩もまた、鋭角的なデザインの甲殻で覆われ、どこか猛々しい印象を与えていた。

全身を覆うのは、錆びついた鉄の色と赤黒い鉱石の色がまだらに混じり合った、不格好でしかし圧倒的な存在感を放つキメラのような鎧。


(まさに、魔改造だな……。

見た目はともかく、性能は段違いのはずだ)


 俺は、生まれ変わった身体の感触を確かめるようにゆっくりと立ち上がった。

関節の軋みは消え、全身にずっしりとした安定感が満ちている。


そして試しに、近くの岩壁に向かって生まれ変わった右の拳を軽く突き出してみた。


――ゴッ!


以前なら、俺の拳の方が凹んでいたかもしれない。

だが、今は違う。


――バキバキバキッ!


 俺の拳が触れた部分から、岩壁に蜘蛛の巣のような亀裂が走りボロボロと崩れ落ちていく。

俺の拳には、傷一つついていない。


(すげぇ……! 全然違う!

これなら、もうちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしねえぞ!)


 魂の奥底から、純粋な喜びと興奮が湧き上がってくる。


「やりましたね、アルマ!」

リリアの声も、心なしか誇らしげだ。


「とても、頼もしいですわ! まるで、本物の騎士のようです!」


(そりゃどうも。

ま、中身はポンコツ整備士のままだがな)


 俺たちは、しばしその達成感を分かち合った。

失敗から学び、二人で力を合わせ、そして確かに強くなった。

その事実が、何よりも俺の魂を強くしてくれていた。


(さて、と)


俺は、崩れた岩壁から視線を外し、この広大な空間の奥……

ロックリザードが守っていた、唯一の出口へと目を向けた。


(修理は完了だ。最高の装甲も手に入れた。

……行くか、リリア。このダンジョンの、さらに奥へ)


「はい、アルマ!」


 リリアの力強い返事を胸に、俺は新たな一歩を踏み出した。

その足取りは、もう以前のようなおぼつかないものではなかった。


 傷つき、歪み、そして生まれ変わった俺たちの鎧は、確かな重みをもって未来へと続く道を踏みしめていた。

俺たちの、本当の進化の物語はまだ始まったばかりだ。

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