第30話
「詳しくは調査が完了しなければ何とも言えんが、今確認できる範囲では落ち着いたのう」
「やっぱり、ユハナを閉じ込めていた石が原因なんですかね?」
「そこまでの調査はお主に頼まないといかんのでな、また後日ということじゃな」
「はい、ありがとうございます」
流石に帰ってきたばかりにもう一回行って調べるいうブラックな扱いはしないようだ。
「後は、副学園長と話を詰めておこう、お主は疲れているであろう? 今日はもう休むがよい」
「お気遣いありがとうございます。」
優しい学園長でよかった。
生徒を調査で使うあたり、少し信用ならないなと思っていたのだ。
「では、失礼します。」
俺は報告を終え、保健室へ向かう。
扉をノックして入る。
「あら、迎えにきたの?」
「ええ、預かってもらってありがとうございます」
保健室の女神水城 奈央先生だ。
もちろんヒロイン候補……ではない!
主人公を大人の男にする1人ではあるのだが、恋人ルートはない。
一夜の保健室LOVEの関係だ。
「では、連れていきますね」
俺はユハナを抱き上げ保健室を出る。
「ええ、お大事に」
「ふぅ」
部屋をでて一息つく。
超セクシーで緊張した。
「羅栖墓はああいうのがタイプ?」
「え?ビックリした!起きてたのか!」
ユハナが起きていたので下そうとする。
「あの?ユハナさん?」
あろうことかユハナは正面から抱きかかえている状態でギュッと抱き着いてきた。
「このまま」
「え?あ、まだ身体が弱ってるか、じゃあこのまま帰るか。」
ユハナはコクコク頷いて密着度を高めてくる。
「ユハナ、動きづらいからもうちょっと緩めてくれないか?」
そういうと、ユハナは素直に緩めてくれた。
「おし!帰るか!」
「うん」
なにこの可愛い生物!
俺は迎えにきた車にユハナを乗せに行く。
「お兄様!」
車から妹の千聖が出てきた。
「お、迎えありがとうな。」
「お、お兄様!そ、その”女”は一体誰ですか!?」
千聖が狼狽えている。
「落ち着け義妹よ! この子は拾ってきた子だ」
本当のことである。
「ひ、拾って! お兄様は女の子を拾うんですか?」
「何の理由もなしに拾うわけないだろ!」
何か女の子が落ちてたら誰でも拾ってくるみたいな言い草をされた。
「そ、その女の子に欲望をぶつけようと言うのですか! 年下枠に私というものがありながら!」
「妹よ、欲望をぶつけるために小さな女の子を拾ってきたら捕まるよ?」
義妹がご乱心中なので宥める。
「とにかく、この子は今衰弱してるんだ。休ませてあげような?」
「ぐぬぬぬ! 仕方ないですね!」
そういうと千聖がユハナを受け取ろうと手を伸ばす。
俺も女同士に任せた方がいいと思って渡そうとする。
すると、ユハナがまたギュッと抱き着いてくる。
「ユ、ユハナ? 女の子同士の方がよくないか?」
千聖がユハナを睨む。
「私は羅栖墓の”物”!」
爆弾を落とすのがお上手なようで。
千聖はまるで作り物のように綺麗な顔を硬直させていた。




