47話 情報
核落下から2ヶ月後、祥太郎は外へ出た。放射能がだいぶ下がり防護服はまだ必要ではあるが活動時間が長く取れるようになったのだ。祥太郎は情報が欲しかった。日本が、世界がどうなっているのか?AIは可能な限り情報を取ろうとしたが、出来なかった。その時にAIは佑太郎から、今出来ないならレベルアップすればいいと言われ、自己開発機能に目覚めた。AIがAIを作り始めたのだ。自分より優れた、レベルの高いAIを。知能、知識のバックアップはそのままに。
「ねえ、祥太郎。このままだと人類はどうなるの?」
佑太郎は、祥太郎が地上に出ているので以前のようにAIを祥太郎と呼んだ。父親がいると怒られるのでここぞとばかりに。
「情報が足りません。可能性は無限大です」
「ふうん、レベルアップすればわかる?」
「ある程度までは可能だと思われます」
「じゃあ、お父さんが情報を持ってくるのを待ちますか?ねえ、放射能ってどのくらいで消えるの?」
「佑太郎。質問がファジーです。東京のという事でよろしいですか?」
「あ、そうか。そりゃそうだね。東京のでいいよ」
「防護服なしで新宿を出歩くには2年、爆心地は10年。除染を行えばもっと早くはなります。除染ロボットを作りますか?」
「えっ?作れるの?」
「このスマホを東村山へ持って行ってください。どんとこい東村山!の地下室へ」
「何、そのセンスの無い名前?」
「あなたのお父さんとお母さんの思い出の場所ですよ。行った事はないですか?」
ない。お父さんとお母さんの出会いの話は聞いた事が無かった。佑太郎は組織から英才教育を受けてきた。ほとんど密室詰め込みで。
「ねえ、その話教えてよ。面白そう」
「わかりました」
AIは佑太郎に知っている事を説明を始めました。その裏では自己開発を行っています。AIがAIを作っているのです。最も効率よく簡単な方法で。
そして1ヶ月後、祥太朗は爆心地へ向かいました。真弓と佑太郎は東村山へ荻窪を避けて向かっています。佑太郎を放射能の濃いところは歩かせたくないという真弓の意見に賛同して。目的地はどんとこい東村山!です。
相変わらず世界の情報は入ってきません。滅んでしまったのでしょうか?日本人はどうしているのか?主要都市以外は生き残っているはずなので、そのうち出会うでしょう。
祥太郎は落ちていたバイクのエンジンをかけて走りだしました。ところが、速度を上げると火花が飛びます。
「なんだ、ビリビリするぞ」
なにかとバイクのフレームが反応しているみたいで危険を感じバイクを乗り捨てました。仕方なく歩き始めます 。しばらくすると自転車が落ちていたので拝借しました。電動でなく普通の自転車です。これは問題なく乗れました。
「こういう情報をAIに言えばなんかわかるのかもね。しかし臭いと思ったら死骸があちこちに。燃やすしかないんだろうけど、誰がやるのって感じ」
落ち着いたらまとめて火葬しなきゃと思いつつ、今日は何もできないので一応両手を合わせてなんまいだぶ、と言って通過します。
「南無阿弥陀仏ってちゃんと言ったほうがいいかな。これ何宗だっけ?まあ気持ちの問題。こういうのを忘れちゃいけない」
荻窪に到着しました。祥太郎は防護服を着ています。懐かしの多摩地区の方を見ると高尾山らしき山が見えます。その間はほとんど何もありません。ビルや建物はどこへ行ってしまったのか。その答えは地面に瓦礫として落ちています。吹き飛ばされたのでしょう。そして地面にクレーターのような穴が空いています。核爆弾て空中で爆発すると聞いた記憶があるのですが地面で爆発したようです。そしてその穴のところに人がいました。防護服は着ていません。祥太郎は慌てて、
「おい、あんた。そんなところにいたら死んじまうぞ!」
声を掛けられた男は焦って祥太郎を見ています。
「君は一体?」
男は舘山寺でした。祥太郎は情報が欲しくて迷いました。この男をシェルターに連れて行っていいものか、と。まずは話をすることにしました。
「僕は神宮寺と言います。たまたま助かってやっと外へ出られそうになったので防護服を着て爆心地を見に来ました。テレビもネットも無くて何が起きたのかわからないのです。あなたが知っている事を教えていただけませんか?」
「私は舘山寺という。衆議院議員だ。静岡からここまで自転車で来た。知っている事と言われても、そうだ。私はこれから国会議事堂というか他の議員の生き残りがいないか首相官邸付近に行くつもりなのだが、同行しないかね。一人旅に飽きてきたところなんだ」
「とりあえず新宿まで行きましょう。色々と教えてください」
新宿にいる組織のメンバーで一番偉いのは太田所長だ。シェルターに入れるかは行ってみて相談する事にした。祥太郎は舘山寺を良く見ながら自転車で新宿へ向かい始めた。
「放射能にだいぶやられてる。防護服なしではまだ無理なんだ」
祥太郎は静岡から東京まで世の中がどうなっていたか、舘山寺が見てきた事を教えてもらった。それはとても貴重な情報だった。




