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ゲーム世界の最強チートな勇者vs香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(2)

 ぶぃーん。ぶぃーん。ぶぃーん。ぶぃーん。





 気が付くと、女神カーキンが持っていた電子機器が鳴り響いていた。

 それはこのゲーム世界では神が造りし神器の一つ。


 この世界ではただ一つのスマートフォンだ。


 その音はまるで地震速報のような音である。

 思わず、スマートフォンに出てしまいそうな音だ。


「この音は――、先ほど異世界転移した勇者からのものだ」


 時間にして30分くらいが経過したころだろうか。


「(はろー。あなたの主神☆ 可愛い女神のカーキンでーす。お電話ありがとー)」


「(おい! 駄女神! なんだこれは!)」


「(なんだって、何よ? それで分かるわけないじゃない?)」


 いきなり怒鳴り声というか、焦ったような声がスマホの先から聞こえてくる。

 女神カーキンはその姿に楽しくなり、思わず目を細めた。


「(危険感知が――、危険感知があと寿命1時間とか言っているのだが――)」


「(そのぐらい調べなさいよ。なんのために危険感知を与えたと思っているのよ。危険だったら感知できるように、そして努力して回避できるようにしたからに決まっているじゃないのよ。がんばって。加油!)」


「(あぁ、あと50分――、調べるってどうやって――)」


「(分かったわよ。じゃぁ、≪鑑定≫スキルレベル1をあげるから~)」


「(≪危険感知≫明らかに危険があぶないとき、頭痛となって本人に死ぬ時間を知らせる。行動により回避できる――。ってそれで分かるか―!)」


「(しょうがないなぁ、≪鑑定≫スキルレベル2!)」


「(≪危険感知≫ 残45分:香川県の条例により90分以上ゲームを続けた場合、使用をやめさせる必要があります。って、これ香川県ネット・ゲーム依存症条例がじゃねぇか! 条例で俺は死ぬのかよ!)」


「(だって、コンプライアンス守らないと! 私女神だしぃ~。ほら、神が法律やぶっちゃいけないんだよ~)」


「(おいおぃ、1日1時間以上やったところで殺したらダメだろう? 殺人罪じゃねぇか。思い切り刑法に違反しているぞ!)」


「(だって、ここ、ゲームの世界よ。人殺しても違法じゃなから。でも条例では学校等の協業日では1日90分以上ゲームするなって規定されているから、ゲームを遊べなくするのは合法だよ~)」


「(めちゃくちゃじゃねぇか! 殺す気か!)」


 勇者があまりのめちゃくちゃさに怒り狂っている。

 女神カーキンはしかし冷静だ。

 勇者に諭すように、やさしく答えてあげる。

 ――その顔には嗜虐の愉悦の笑みが浮かんでいるが、勇者からはGMコールの先にある女神カーキンの姿は見えない。


「(あなただって、横スクロールのゲームでスーパーで働く配管工の兄弟たちをげらげら笑いながら谷底に突き落したり、対戦格闘ゲームに対戦相手に超必殺技とか叩きこんだりしたことはあるでしょう? それであなた、殺人罪が適用された? そうなったら、京都にあるもと花札を売っていたようなメーカーは殺人補助で何回も捕まったりすることになるじゃない。勇者だったら、モンスター殺しまくりでしょう? それでワシントン条約に引っかかった? はぐれたスライムなんて、まさに保護すべき希少な魔物かもしれないのに……)」


「(それは……、確かにそうだが……。それはゲームの世界だろ)」


「(えぇ、この世界はゲームの世界です)」


「(…………)」


「(あと、お酒とタバコと、それから医薬品たる薬ね。あれはコンプライアンスが強くて出すといろいろヤバいから出さないことにしているのぉ)」


「(しているのぉ……、って。やはりお前、俺を殺す気なんだな……)」


「(どうでしょう? もしかしたら、条例に抜け穴があるかもしれないわよ?)」


「(≪鑑定≫スキルのレベルをあげろ! 最大にだ!)」


 そうすれば何か分かるかもしれない。


「(分かったわ――、じゃぁ)≪鑑定≫スキルレベルをMAXにするね――」



 ≪鑑定≫スキルを最大に上げることで、香川県の条例を勇者は表示させることができた。


 その内容はこうだ――




 香川県条例第24号

 ネット・ゲーム依存症対策条例

〇第18条1項

 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の仕様による弊害等について、子どもと話し合い、使用するルールづくり及びその見直しを行うものとする。



〇第18条2項

 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に着けられるよう、子供のネット・ゲーム依存症に繋がるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあつては、90分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の利用にあたつては、義務教育終了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを目安とすることともに、前項のルールを順守させるよう務めるものとする。



〇第2条

(4)子ども 18歳未満の者をいう。

(6)スマートフォン等 インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)することができるスマートフォン、パソコン及びコンピュータゲームをいう。

(7)保護者 親権を行う者若しくは未成年後見人又はこれに準ずる者をいう。



 著作権法

〇第十三条

次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。

一 憲法その他の法令





(ならば――)


 勇者は思う。

 これ、実行しているのは結局保護者なんだから、保護者が辞めろとか言わないかぎり、辞めさせることなんてできないのでは――


 勇者は淡い期待を描いた。

 だが――



「(ちなみに勇者のステータスには漏れなく女神カーキンの加護が付いているでしょう? 保護者は――私なのよね。だから1日1時間は絶対です! 絶対に努めちゃうから~)」


「(くそがぁぁぁーーー)」


「(ほら、子どもは親を選べないのよ。保護者が言ったことは絶対よ。)」


「(ちくしょーー)」








 そして勇者が異世界転移したその90分後。

 周囲を破壊しつくした勇者はその破壊したクレータの中心で爆発し、赤い塊と化した――
















 その綺麗な爆死に女神カーキンは満足げに頷いた。



 あぁ、次の勇者はもっとうまくやることでしょう――

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