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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第七章 ティンク編
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第六十四話 火山噴火を食い止めろ

 何の予兆もない火山の噴火。それはアルケミナたちにとって想定外な出来事だった。

「先生。どういうことですか。ラジオの情報では、今日は登頂可能だって」

 クルスが突然の出来事に取り乱す。そんなクルスを他所に、アルケミナは冷静に状況を分析する。

「原因不明の異常気象」

「予兆がなかったのは厄介だな」

 アルケミナの言葉に続くように、ティンクが続ける。

「ティンク。どうする」

「決まっているだろうが。火山の噴火を止める」

 アルケミナとティンクが互いの顔を見合わせる。だがクルスはそんなことができるのかと心配になる。

「先生。大丈夫ですか。火山の噴火なんて止めることができるのですか」

「錬金術では天災を止めることはできないけど、絶対的能力は錬金術を超越した能力だから、火山の噴火くらい防ぐことは可能」

 アルケミナの説明の後で、ティンクはクルスの顔を見る。

「ということだ。分かったか。ロングヘア巨乳姉ちゃん」

 ティンクの言葉にクルスは頬を膨らませた。

「こんな状況なのに、よくこんなことが言えますね」

「冗談のつもりではなかったのだが。そんなことよりも時間がない。作戦を話し合おうか」

「私が錬金術で巨大な土の壁を作るから、クルスとティンクで岩を壊して。それで溶岩を塞き止めるダムを造る」

 アルケミナが作戦を説明している間、ティンクの体が突然、白い光に包まれ、ティンクの体がスカーレットキメラに変わる。


 突然の現象にクルスは驚く。一方のティンクはテレパシーでクルスに声を掛ける。

『詳しい説明は後だ。俺はその辺りにある岩肌を破壊するから、ロングヘア巨乳姉ちゃんは、適当に岩を破壊しろ』

 ティンクの怒号を聞き、クルスは背中に背負った荷物を降ろす。荷物からアルケミナが必要としている槌が取り出せるように。

 アルケミナはクルスの荷物から必要な物品である、青いチョークと黒色の槌を取り出す。

 黒い槌を地面に置いた彼女は、青いチョークを握り、魔法陣を書き始める。

 その間クルスは、近くにある巨大な岩を触る。それにより巨大な岩が壊された。

 クルスは周囲を見渡し他に壊せそうな岩がないのかを探す。その時彼女の目に映ったのは、物凄いスピードで岩を体当たりで壊すティンクの姿だった。

 一分ほどで三合目の岩が手あたり次第に壊される。

 それと同時進行でアルケミナは魔法陣を描いている。

 彼女が今回魔法陣を書きこみために使用したチョークは、白色ではなく青色。チョークの色と錬金術には因果関係がないが、白いチョークで魔法陣を書けば、白い岩場と同化してしまう。

 それを避けるために、彼女は青いチョークで四方に逆三角形に横棒を加えた記号を記す。

 その土を意味する記号を丸で囲む。東西南北に記された記号を一つの円になるように繋ぐ。その縁の中央に、凝固を意味する牡牛座の記号を書き込み、丸で囲む。

 そうやってできた魔法陣は、魔法陣を書き込むにはコンディションが悪い岩場にも関わらず、綺麗である。

『さすがだな。アルケミナ。記号が歪めば錬金術の効果が薄まる。それにも関わらず通常通りの魔法陣が書けるとは。さすがだ』

 ティンクが褒めるも、アルケミナは無表情で完成した魔法陣を触る。

「このくらいの芸当。五大錬金術師だったら普通にできること。そんなことより、溶岩の進行状況を教えて」

 クルスは山の斜面から徐々に進行する溶岩を目にする。

「五合目付近を通過。物凄いスピードで溶岩が迫っています」

『普通の火山噴火の三倍くらいのスピードだ』

 ティンクがクルスの報告に補足する。それを聞きアルケミナは地面に置かれた黒色の槌で魔法陣を叩く。

 周囲に散らばる岩の残骸を巻き込むように、魔法陣から巨大な壁が現れる。その壁は全長十メートル程だった。

 そしてその壁が溶岩に触れた瞬間、溶岩が急速に固まる。

 そうして五分後、火山から噴き出した溶岩が全て凝固した。アルケミナはタイミングを計り、錬金術を解除する。


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