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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第七章 ティンク編
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第六十三話 ティンクの絶対的能力実験

 それから数分後、三合目にアルケミナとクルスが到着した。

 彼女たちの前に広がるのは、数十匹のスカーレットキメラの中心に佇む一人の大男である。その男は紛れもなくティンク・トゥラ本人だ。

 アルケミナたちはこの状況を理解できない。彼女たちは、ただ茫然とティンク・トゥラの姿を見ることしかできなかった。

 するとティンク・トゥラがアルケミナたちの前に歩みを進めた。

「何だ。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしやがって」

「ティンクさん。その姿はどういうことですか? 」

 クルスが尋ねると、ティンクは威張ってみせる。

「ああ、どうして元の姿に戻っているのかと聞きたいのか。答えは単純。絶対的能力の効果だ」

「それは興味深い。ティンクの能力がEMETHシステム解除の鍵になるかもしれない。だから私はティンクの能力の実験体になる」

 アルケミナの発言を聞き、クルスの思考は停止する。

「えっと。先生。この場でティンクさんの能力実験を行うということですか? 」

「そう」

「そんなことしたら、今着ている服が破けて大変なことに……」

「大丈夫。服は創造の槌で作り直せばいいから」

「そんな問題ではありません」

 クルスとアルケミナの会話を聞かされたティンクの鼻から血が垂れる。ティンクは咄嗟に指で鼻血を拭き取る。

「失礼。その様子を想像したら、反射的に鼻血が出た」

 ティンクの言葉を無視するかのように、アルケミナはティンクの太ももに触る。

「ティンク。お願い。あなたの能力で私を元に戻して」

 アルケミナの行動に、ティンクは赤面し鼻血を出す。そして彼は首を縦に振り、アルケミナの頭に右手を置く。

「分かったぜ。俺の能力が他人を助けるために使えるのかが気になっていたところだ」

 クルスは咄嗟に目を瞑る。このままティンクの能力でアルケミナが元の姿に戻ったとしたら、確実にクルスは出血多量で死亡するだろう。クルスには、変な自信があった。

「アルケミナ。悪いがこの能力の使用範囲は俺だけのようだ」

 ティンクの言葉でクルスは目を開ける。そこには先程までと同じアルケミナの姿があった。

 嬉しいような哀しいような。このような感情にクルスは襲われる。

 一方のアルケミナはティンクの能力で自身が元の体に戻らなかったにもかかわらず、彼の能力に興味津津な態度を見せる。

「ティンク。詳しくあなたの能力を教えて。そこにEMETHシステム解除の鍵が隠されているはずだから」

「分かったぜ。俺の能力は……」

 ティンクの説明が始まろうとしたその時、火山が揺れ始め、火口からマグマが噴き出した。


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