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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第七章 ティンク編
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第六十話  ティンクとの再会

 何も知らないアルケミナは、体力が回復したのか、クルスの背中から降り、自分の足で道なき道を歩き始める。

 その一歩を踏み出した時だった。火山灰による砂埃と共に、三匹のモンスターが崖から降りて来たのは。

 砂埃が止み、三匹のスカーレットキメラの姿がクルスたちの目に映る。

 クルスは咄嗟にアルケミナの前に立ち握り拳を作った。

『久しぶりだな。アルケミナ』

 その声を発したのが、中央にいるスカーレットキメラであることをアルケミナたちは察する。

 そしてその声にアルケミナたちは聞き覚えがあった。

「ティンク・トゥラ」

 アルケミナが名前を呟くと、中央にいたスカーレットキメラがアルケミナたちに近づく。

『そうだぜ。俺はティンク・トゥラだ。まさかこんなところでお前らに会うことになるとは思わなかった』

「なるほど。ティンクさんの絶対的能力はテレパシーで、EMETHシステムの影響で体がスカーレットキメラ化したということですね」

 クルスは、体がキメラ化したノワールの顔を思い浮かべながら、ティンクに尋ねる。   

 だがティンクはクルスの質問を聞き、唸った。

『違うな。そんな単純な奴じゃないぜ。ロングヘア巨乳姉ちゃん』

「クルス・ホームです。そんな変な言い方しないでくださいよ」

 クルスは赤面しながら、ティンクに怒鳴る。しかしティンクは彼女の反応を受け、笑った。

『知っているだろう。俺が巨乳の姉ちゃんが大好きなこと。貧乳の五大錬金術師アルカナよりも、巨乳のアルケミナの方が好きだった。だからアルケミナのところの助手がロングヘア巨乳姉ちゃんに変貌して嬉しかった。どうだ。アルケミナ。お前の助手を俺にくれ』

「嫌」

 アルケミナが一言で答える。それに対してティンクは声を出して笑った。

『冗談に決まっているだろうが』


 相変わらずだとクルスは思った。一般的に知られるティンク・トゥラは努力家の体育会系マッチョマンだが、実際の彼はその特徴に変態要素が付加された巨漢である。

『再会を祝して、お前らと戦いたい。俺はスカーレットキメラの群れたちと共に、一カ月間サバイバル生活をしてきた。その間一度も絶対的能力者とは戦ったことがない。兎に角俺は……』

 その瞬間、ティンクの脳に直接仲間のスカーレットキメラからのテレパシーが届いた。

『全滅だと。面白い。場所は三合目か。俺がお前らの仇をとってやる』

 ティンクが呟き、白い羽を羽ばたかせる。

『悪いな。アルケミナ。お前らとの戦いは、仲間の仇をとってからだ』

 ティンクを含む三匹のスカーレットキメラが空を飛ぼうとした時、アルケミナがティンクを呼び止める。

「私たちも三合目に向かっているから」

『そうか。アルケミナ。それなら四合目でまた会おう』

 ティンクはアルケミナに伝え、仲間のスカーレットキメラと共に、天空を駆けた。


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