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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第六章 聖なる三角錐編
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第五十六話 バトルロイヤルの終わり

 これにより戦いが終わるはずだった。

突然マエストロが目を覚ます。マエストロは起き上がりながら、ラスたちに話しかける。

「ラス。ふざけるな。俺は終戦なんて認めない」

「聞こえていましたか」

「終戦という言葉が聞こえた。これでは負け越しになるだろう。許せない。この場所でバトルロイヤルを続ける。まずはルスを倒す。ちゃんと聞こえていた。この部屋ではお前の能力が使えないってなぁ。槌を取り出したら、すぐに俺がそれを壊す。リベンジマッチを始めようじゃないか」

 高笑いを始めるマエストロの顔を見ながら、ルスが首を横に振る。

「無益な戦いをやめましょう。あなたは僕に負けました。その結果を変えることはできません」

「この部屋では能力が使えないんだろう。だからもう一度戦えば、俺が勝つに決まっている」

 

 マエストロは容赦なく、ルスに近づき、ルスの右腕を手刀で切り落とそうとする。その直前ルスが一瞬消え、再びマエストロの前に姿を現す。

「弱いですね。絶対的能力を封じなければ、勝てないなんて」

 ルスの言葉を聞き、マエストロが思い出す。これまでマエストロは五人の絶対的能力者と戦った。戦歴は一勝四敗。その内の一勝。メランコリアとの戦いの勝因は、相手が絶対的能力を使わなかったから。だとすれば、マエストロは一度も絶対的能力者に勝ったことがないことになる。

 ルスの発言は的を射ている。その発言がマエストロを追い詰める。

「うるさい。勝つためなら手段を択ばない」

「だったら僕に勝てませんよ」

 

 爆破時刻まで残り二分。マエストロが怒りを露わにする。

「俺は負けたくない。二度と負けたくない。敗北感を味わうのが嫌だ。ここで終わったら、また敗北感を味わうことになるだろう」

「弱いですね。僕は無益な戦いが嫌いです。だから説得します。確かにこの状況では、僕に勝ち目がありません。それは確かな事実でしょう。しかし、僕の能力を使えば、あなたの攻撃を防ぐことができます。それは先ほどの戦いで証明されました」

「負け惜しみにしか聞こえない」

「確かにそうですね。それでも気が付かないのですか。絶対的能力を封じられた能力者に勝ったとしても、敗北感を味わうことになるのですよ。相手が絶対的能力を使えなかったから勝てただけだって。本当の意味での勝利というのは、公平な方法で勝つことなのです」

 マエストロはルスの言葉を聞き、唇を噛む。

「分かった。こんな状況で勝ってもうれしくない。今回は見逃してやる」

 マエストロはルスの説得に納得した。


 爆破時刻まで残り一分。ルスは幼い手でマエストロの太ももに触れる。

「これでマエストロを瞬間移動させます」

「なぜ太ももに触れた」

「本当は肩に触れるのです。だけど背が届かないから、太ももを触りました」

 ルスが説明すると、マエストロの体が白い光に包まれ、消えていく。

次に、ラスがルスと同じようにルクシオンの肩に触れる。その直後、ルクシオンの体もマエストロと同じように白い光に包まれ消えた。

 最後は、ラスとルスが瞬間移動で廃墟から脱出する。

 

 それから三十秒後、バトルロイヤルの会場となった建物が倒壊する。

 爆風に乗り、瓦礫がトールたちの元に飛んでくる。その瓦礫とトールの隣にいるメランコリアの距離が五十メートル以下になる。その時全ての瓦礫が突然砕け散った。

「悪意のある攻撃を無効化。素晴らしい能力だ」

 トールが褒めるとメランコリアたちは、倒壊する建物に背を向けて逃走する。

 トールたちは爆風が届かない草村まで逃げた。


 トールたちの前に、瞬間移動で脱出したラスたちが姿を現す。

 メンバー全員の安否を確認したトールが口を開く。

「早速だが、順位発表を行う」

 トールはバトルロイヤルによって得られた結果を淡々と発表していく。


 一位。トール。


 二位。ラス。


 三位。ルクシオン。


 四位。ルス。


 五位。マエストロ。


 六位。メランコリア。


 七位。エルフ。

 

 結果発表が終わり、ルスがトールに尋ねる。

「これからどうするのですか」

「五大錬金術師を暗殺する」

 トールの野望にメンバーたちは賛同する。七人の刺客がアルケミナたちに迫る日は遠くないだろう。

 

  


来年に続く!

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