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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第六章 聖なる三角錐編
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第五十五話 光速打撃

 爆破時刻まで残り四分。ルクシオンが戦闘態勢に入る。その様子を見たラスが驚く。

「戦うのですか」

「結果が得られなければ、トールが悲しむ」

「そうですね。いいでしょう。ここは僕が戦いますよ。あなたの能力も知りたいですし」

 ルクシオンは拳を作り、空気を殴る。一方ラスは手を叩く。それにより空中に暗闇の渦が生まれた。ルクシオンの攻撃は、暗闇に呑まれてしまう。

「結構速い攻撃ですね。これ以上速ければ、命中していました」

「光の速さで打撃を与える能力が通用しないとは。さすがね」

「能力名は光速打撃でしょうか」

「ダサいネーミングセンスね」

「恐縮です」

 ラスが二回手を叩き、ルクシオンの攻撃が跳ね返る。その技をルクシオンは防ぐことができない。

 その結果、ルクシオンの仮面が壊れた。

「五分後に建物が倒壊。面白いことを始めたな」


 建物の外で、対戦の模様を監視しているトールが呟く。

 トールの隣には、ルスたちに敗れたメランコリアとエルフがいる。メランコリアは、状況を楽しんでいるようなトールに呆れる。

「倒壊による二次被害があたしたちを襲うかもしれないのに、なぜ安心しているのかな」

「私はお前の能力の恐ろしさを知っている。今回のバトルロイヤルでは実力を発揮できなかったようだが」

「トールには全てお見通しということか。あたしの能力は、半径五十メートル圏内に入った悪意のある人間の動きを封じるというもの。悪意があるなら、半径五十メートル圏内から放たれた攻撃を無効化することもできる。ところで爆弾を止めないのかな」

「爆弾を止めたら、つまらなくなるだろう。それに私の能力では爆弾を解除することができない。被害が増大するだけ。だからお前に頼ることにした。メランコリア。お前だけが頼りだ」

 トールの言葉を聞き、メランコリアが顔を赤くする。

「それほどでもないけれど、爆破まで残り三分。それまでに決着が付くのかな」

 メランコリアはバトルロイヤルが開催されている建物を見つめながら、建物の入り口の前に立つ。全ては爆発からトールを守るために。


 その頃、ラスとルスは、ルクシオンと対峙していた。マエストロは相変わらず仰向けに倒れている。

「残り三分。最後はルスと戦おうかしら」

 ルクシオンはルスの名前を呼ぶ。だが、ルスは動こうとしない。

「その必要はないのですよ。この勝負はルクシオンの勝ちだから」

「その根拠は」

 ルクシオンが聞くと、ルスが微笑む。

「僕の能力は錬金術がなければ成立しません。この部屋にある魔法陣は僕の真下に書かれている奴だけ。唯一の魔法陣は時限爆弾として使っているから、武器として使用不可能。だからと言って槌で地面を叩き、魔法陣を増やすことも不可能。なぜなら、その前にルクシオンの絶対的能力で槌が破壊されるから。即ち、僕に勝ち目はない。無益な戦いはやりたくないのです。結論が出たのだから、トールも満足でしょう」

「だから戦いを終わらせるということですか。ルスお姉様」

 ラスが聞くと、ルスが首を縦に振る。

「そういうことです」

 その答えを聞いたルクシオンは、再度ルスに聞く。

「仮に魔法陣が大量に書き込まれた部屋で私とルスが戦ったら、どうかな。それでも私が勝つと言えるの」

「もちろん。爆風ではあなたの攻撃が防げないのです。どのように考えたとしても、僕はルクシオンに勝てないのです」

 ルクシオンは答えに納得し、手を差し伸べる。終戦を意味する握手。


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