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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第五章 ラプラス編
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第三十九話 ラプラスの研究所

 アルケア八大都市の一つ、サラマンダー。この街に辿り着いたクルス・ホームとアルケミナ・エリクシナの頬に汗が伝う。

 毎日の平均気温が三十度を超えるため、この街には猛暑という言葉が似合う

 そのため、殆どの住民たちは半袖のシャツを着ている。

「先生。まだ何ですか」

「もうすぐ」

 アルケミナは答えながら前方を指さす。その先にあるのは煉瓦により構築された地上五十階建ての高層ビル。そのビルはラプラス・ヘアの研究所になっている。

 ラプラス・ヘアは突然変異の権威として有名な研究者。彼の意見があれば、システムの解除方法が分かるかもしれない。二人は期待を抱き、彼の研究所に向かう。

 研究所の入り口に置かれた松明には、炎が灯されている。


 二人が研究所の中に入ろうとすると、入り口から一人の男が現れた。アフロヘアに黒縁眼鏡をかけた、長身の痩せた男はアルケミナに話しかける。

「何の用でしょう」

「ラプラス・ヘアに会わせて」

 アルケミナが単刀直入に答えると、男は両手を一回叩く。

「もしかして、EMETHシステムの被害者ですか。最近その問い合わせが多いんですよ。ですから、一時間に一回ペースで説明会を開いています。丁度良く五分後から説明会が開催されます」


 男は二人を研究所の中に案内する。男は研究所の奥にあるドアを開ける。その先にいるのは、三十八の異様な影たち。

 狼男や犬に変貌した者たち。老若男女。幼児。老人。様々な者たちが会議室に集まっている。

 アルケミナは周囲を見渡す。集められた者たちの体にはEMETHという文字が刻み込まれている。つまり、この場にいる四十人は全員EMETHシステムの被害者。四十人全員が絶対的能力者。

 四十人の絶対的能力者が一堂に会する。この状況は、アルケミナとクルスにとって初めてのことだった。

 一方クルスは実感する。この場所にいる四十人は氷山の一角に過ぎないと。絶対的能力者は世界中に十万人いる。その内の四十人が集まっただけ。

 間もなくして、アルケミナたちを案内したアフロヘアの男がマイクを持つ。

「皆様。大変長らくお待たせしました。それでは、当研究所の所長ラプラス・ヘアさんの登場です」

 拍手や遠吠えが会議室に鳴り響き、前髪を七三分けの黒い髪に、黒縁眼鏡の男が四十人の前に姿を現す。その男の肩には、赤色のトカゲが乗っている。そのトカゲは、この地域に生息するファイアトカゲ。

 男はアフロヘアの助手からマイクを貰い、頭を下げる。

「私はラプラス・ヘアです。よろしくお願いします。早速ですが、EMETHシステムの不具合について語りますね。私はシステムには一切関与していませんので、好き勝手に見解を述べることしかできませんが、それでもよろしい方は、私の話をお聞きください」

 ラプラスは笑みを浮かべながら、四十人に話しかける。


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