第三十七話 アルケミナとブラフマの対峙
それから数分後、アルケミナとクルスがエクトプラズムの洞窟の出口に到着する。
その出口には、見覚えがある男が立っている。
一方ブラフマはアルケミナの存在に気が付き、背後を振り返る。
「アルケミナ・エリクシナか。俺の名前はブラフマ・ヴィシュヴァ。覚えているか」
「ブラフマ。会いたくなかった」
アルケミナが率直な言葉を告げると、ブラフマが笑った。
「相変わらず毛嫌いしているな。そんなにわしが嫌いか」
「嫌い」
アルケミナが簡潔に言葉を告げると、ブラフマは自分の意見を述べる。
「EMETHプロジェクトは、人類を進化させるための実験だろう。今後は錬金術なんて必要なくなる」
「その錬金術というシステムを無視するところが嫌い」
「EMETHは人類を進化させると言っただろう。錬金術ではできないことができるようになる。それは人類の大きな一歩ではないか」
「錬金術には無限の可能性がある」
アルケミナは我儘な子供の如く、自身の信念を貫く。だがブラフマはあっさりとアルケミナの意見を否定する。
「無限の可能性か。錬金術の無限の可能性なんて、EMETHシステムと比べたら屁のカッパだろう。逆に聞くが、錬金術で若返りができるか。永遠の命が実現できるか。不可能だろう。賢者の石さえ創造できない錬金術に、できるはずがない。EMETHシステムを開発すれば、永遠の命という夢が現実化するかもしれない」
「永遠の命。ブラフマは腰の曲がった白髪交じりの老人だった。この世の法則だと今後あなたは老いていく。それでもブラフマは永遠の命を手にしたいと考えている。それが許せない。死に逆らって生きるあなたの生き方が許せない。錬金術を冒涜する人を許さない。同じ五大錬金術師だとしても」
洞窟の岩に付着した雫が地面に落ちる中で、
ブラフマとアルケミナの激論が続く。ブラフマは高笑いをしながら、自分の意見を熱弁した。
「永遠の命と永遠の若さ。わしはそれが欲しい。EMETHシステムにはわしの夢を叶える手がかりが隠されている。お前だってEMETHプロジェクトチームのメンバーだった。お前もEMETHシステムに興味があったのではないのか」
「EMETHシステムと錬金術が共存すれば世界が変わる」
「EMETHシステムと錬金術が共存できない。それが分からないなら、戦うしかないな」
ブラフマは地面に手を触れさせ、魔法陣を発動する。中央に気を意味する記号。東西に増殖を意味する魚座の記号。南北に分離を意味する蠍座の記号。その記号で構成された魔法陣からは竜巻が発生する。
その竜巻は増殖し、アルケミナたちに襲い掛かる。
「先生。危ない」
クルスは咄嗟に竜巻に触れる。すると、竜巻が自動的に消滅した。
その様子を見てブラフマが拍手する。
「素晴らしい能力だ。アルケミナも能力を使え」
「嫌。ブラフマと同じ能力だから絶対に使いたくない。その能力は錬金術を冒涜している」
「まだそんなことをいうのか。意地っ張りを止めないとわしに勝てない。わしは全盛期の若い肉体。錬金術の才能。長年積み重ねてきた経験。絶対的能力。全てにおいてお前らを超越している」




