第三十五話 四匹のモンスターとの対決
その先に広がっていたのは、円形のフィールド。その場所にも三つの穴が開いている。その分かれ道は同様に、右と左と真ん中。
アルケミナは地図を見ながら、道を確認する。
「真ん中の穴。それを通れば主がいる出口に辿り着く」
現在この場所には、モンスターが出現していない。その隙に二人は出口に向かい歩き出す。
だが、上手くいかない。突然三つの穴から、黒い羽と一本の角を生やした四足歩行のモンスターが三匹現れた。
それに合わせて、洞窟の天井で眠っていた四匹目のモンスターが目を覚ます。そのモンスターも三匹のモンスターと同様の種類。
合計四匹のモンスターとアルケミナたちが対峙する。
円の真ん中には一匹のモンスター。三匹のモンスターは、それぞれの穴を封じるように立っている。
円の中心にいるモンスターは、アルケミナたちに突進する。二人は素早く攻撃を避けた。
穴を守っている三匹のモンスターは、一歩も動こうとしない。
この状況からアルケミナが察する。
「主に攻撃するのは円の中心にいるモンスター。あの突進が当たれば一溜りもない」
「だったら大蛇を倒した時と同じように、壁を召喚すればいいでしょう」
アルケミナはクルスの意見を聞き、首を横に振る。
「それはできない。あの突進は確実に錬金術で召喚した壁も破壊する。それでは意味がない」
四匹のモンスターは、一斉に黒い羽を羽ばたかせる。それによりカマイタチのような風が生まれる。クルスは咄嗟にアルケミナの体を押し倒し覆いかぶさる。その風の一部に当たったクルスの体には、無数の切り傷ができる。当たらなかったカマイタチは壁に突き刺さった。
「先生。怪我はありませんか」
「怪我はない。おかげで分かった。あの四匹のモンスターを倒す方法」
アルケミナは四匹のモンスターの体を見る。モンスターたちの体には切り傷がない。それを確認したアルケミナは確信する。
「あのモンスターは超音波でお互いの距離を測り、お互いを傷つけあわないように気を付けている。説明は後。ここはクルスの出番。一分間。時間を稼いで。相手は真ん中にいるモンスターだけ。残りのモンスターを相手にしたら一対二になる」
「分かりました」
クルスは、円の中心にいるモンスターに近づく。モンスターは爪を尖らせ、細い腕を上げる。それから数秒後、腕は振るい降ろされる。
クルスは攻撃を避ける。その間アルケミナは地面に白いチョークで魔法陣を書きこむ。
クルスはモンスターの攻撃を避け続ける。
東に土を意味する下向きの三角形に横棒を加えた記号。
西と中央に気を意味する上向きの三角形に横棒を加えた記号
南に凝固を意味する牡牛座。
北に三日月のマーク。
一分後、その記号で構成された魔法陣を、アルケミナが完成させ、叫ぶ。
「完成した。それを両耳に入れて」
アルケミナは、どこからか取り出した耳栓と紙をクルスがいる方向に投げる。
クルスはそれをキャッチし、アルケミナの指示通り両耳にそれを入れる。拾った紙には次の指示が書いてあった。
アルケミナは白い槌を叩き、錬金術を発動する。その直後、アルケミナは自分の両耳を両手で塞ぐ。
錬金術によって発生した超音波により、モンスターの動きが止まる。
クルスは紙に書かれた指示に従い、モンスターたちを一匹ずつ素手で殴り倒す。
こうして二人は、モンスターたちを撃破する。
アルケミナが錬金術を解除した後で、クルスは耳栓を外す。
二人は真ん中に穴を通り、主が暮らす出口へ向かう。




