第三十三話 謎の組織の存在
翌日の早朝。二つの人影がエクトプラズムの洞窟の入り口の前に立つ。
右肩に黒猫を乗せた大柄な体型に茶髪のショートヘアの女とパラキルススドライの怪人と呼ばれていた黒いローブを着た男。
パラキルススドライの怪人。即ちマエストロ・ルークは右肩に黒猫を乗せた女に尋ねる。
「そろそろ教えてくれないか。お前らは何者なのか」
「そうね。でもトールに会わせるまでは言えないことになっているんだよ。新メンバーはトールが認めた人物に限定される、というのが組織のルール。トールに認められないメンバーは即処刑。あなたが処刑されたら私たちも罰ゲームを受けなければならない。だから処刑されないように頑張ってね」
「組織。お前たち以外にも仲間がいるということだな。危ない連中だということが分かった。そのトールっていう奴のお眼鏡にかなわないと処刑というルール。それは無意味だろう。俺はどんなものでも手刀で切断する能力を持っている。錬金術は通用しない」
パラキルススドライの怪人の発言を聞き、女は鼻で笑う。
「何も分かっていないね。あなたは絶対にトールに負ける。トールとあなたが一対一で戦ったと仮定した場合の話だけどね。トールの絶対的能力に相性は関係ない。私でも勝てないから」
女の声に怪人は目を輝かせる。
「そんなに強い奴がいるのか。実力はあの餓鬼以上か」
「あの餓鬼というのはパラキルススドライであなたと戦った白銀長髪の女の子のことかな。確かのあの娘の錬金術はプロレベルだけど、トールの能力は、錬金術も通用しないから瞬殺でしょうね」
「確認だが、トールに餓鬼は俺の獲物だと訴えることはできるのか。できなければお前らの組織に入らずにあの餓鬼を殺しに行く」
「それくらいなら可能。危険な組織だと言われるけれど、基本的メンバーは仲がいいからね。万が一トールがあの娘を殺すことになっても、恨まないでよ。トールは邪魔な人間を平気で殺すような人だから、約束を破ることもある。その場合あなたはトールを殺そうとするでしょう」
女がマエストロの顔を見ると、彼は首を縦に振った。
「そうだな。あの餓鬼が死んだら、それ以上の実力を持つトールを殺して欲求不満を解消するだろう」
「それだけは止めたほうがいいよ。もう一度言うけど、あなたは絶対にトールを勝てない。死ぬのがオチ。あの世であの娘と殺し合いをしたいのなら、話は別だけどね。兎に角、トールがいるのは、エクトプラズムの洞窟を抜けた先にあるアルケア八大都市の一つ、サラマンダー。その町でメンバーが全員集合する。約束の日は二日後だから急がなくてもいいんだよね。ということで今日はエクトプラズムの洞窟で狩りでも楽しみましょうか」
二人と一匹はエクトプラズムの洞窟に入っていく。これから絶対的能力者による狩りが始まる。




