第二十九話 新たなる敵
パラキルススドライの怪人は近くに立っている電柱を手刀で切断。アルケミナにそれを投げつける。
クルスは上にジャンプして、飛んでくる電柱に触れる。そして、電柱は跡形もなく消滅する。
その現象にパラキルススドライの怪人は驚く。
「面白い。お前も絶対的能力者か。触れた物を何でも破壊できる能力か。俺の能力とは根本的に同じだな」
パラキルススドライの怪人の意見を聞き、クルスは怪人の顔を睨み付ける。
「違います。僕は、この能力を正義のために使います。一方あなたは、その能力を殺人に使った。だから、同じではありません。あなたは能力の使い方を間違えたのでしょう」
「お前に何が分かる」
パラキルススドライの怪人が怒鳴った瞬間、クルスの体が上空に飛ばされた。突然襲ってきた腹部への打撃。何が起こったのか。クルスには理解できなかった。
「タイムオーバー。そこまで。これ以上の戦闘は無益だから」
パラキルススドライの怪人は声がする方向を振り向く。そこには右肩に黒猫を乗せた白いローブの女が立っていた。
「負けそうだから、約束通り助けにきたよ。実験の結果も出たから十分でしょう」
「違うな。あの餓鬼を殺さないと満足できない」
「殺す機会ならいくらでもある。ここは逃げよう。本音は黒猫ちゃんの能力実験だけど」
「実験だと」
「あの餓鬼に黒猫ちゃんの能力は通用するのか」
アルケミナは槌を叩き、錬金術を発動する。
東に銀を意味する月の記号。西に蟹座。北に増殖を意味する水瓶座。南に土の記号。中央に上向きの三角形に横棒を加えたような記号。
この錬金術が発動すれば、百本の銀色のナイフが出現するはずだった。
錬金術が発動しようとした瞬間、黒猫の瞳が赤く光る。そして、次の瞬間、アルケミナの手元に出現するはずのナイフが白色のローブを着た女の手元に出現した。
「一瞬で百本のナイフを出現させる。レベルが高い錬金術だね。結論。黒猫ちゃんの能力はあの餓鬼にも通用する」
白色のローブを着た女は百本に及ぶナイフをアルケミナたちに対して投げる。
迫りくるナイフの大群から、アルケミナを守るためクルスはアルケミナと共に屈む。
ナイフの大群はアルケミナたちの後ろにある壁に全て突き刺さった。
次の瞬間。右肩に黒猫を乗せた白色のローブを着た女とパラキルススドライの怪人は姿を消した。
パラキルススドライの怪人との激闘が終わりを迎え、ミズカネ・ルークは鎧を解除する。
「感謝する。パラキルススドライの怪人への対抗手段を得ることができた。俺はこれからあの錬金術を広めるつもりだ。この錬金術を使って兄貴の暴走を止める」
ミズカネ・ルークの決意は固かった。その決意を聞き、アルケミナは握手を交わす。
「頑張って」
それからアルケミナとクルスはミズカネ・ルークと別れた。二人は歩きながら今後のことを話し合う。
「これからノジエルに向かう。パラキルススドライはアルケア八大都市というだけあって広い。だから今から日が暮れるまでに行けるのはパラキルススドライの隣にある小さな町ノジエルに向かうしかない」
クルスはアルケミナの声が聞こえなかったかのように、暗い顔をする。
「クルス」
「ノジエルですよね。いいと思います」
「何を隠している」
「パラキルススドライの怪人と合流した右肩に黒猫を乗せている白いローブを着た女。あいつは何者だったのかが気になりました。あの女の打撃は見えません。さらに黒猫の能力によって先生の錬金術が使えなくなりました。絶対的能力者であることは間違いないのですが、何者なのでしょう」
「私たちと同じ研究者である可能性が高い」
そして、パラキルススドライから冷酷な殺人鬼の存在が消滅し、街に平和が戻った。
だが、二人が通り過ぎた商店に設置されているテレビは新たなるニュースを伝える。
『只今入ってきた情報によりますと、エクトプラズムの洞窟の内部で六人の遺体が発見されました。遺体は全て死後一週間程度経っていると思われ警察は身元の確認と共に開始しています』
第三章完結。また連載を休止します。
休載が多い某漫画家みたいですみません。




