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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第三章 パラキススドライの怪人編
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第二十八話 何でも切断する絶対的能力者対何でも切断できない鎧

 それは突然の出来事だった。突風と共に巻き起こる砂埃。その中から、姿を現したのはパラキルススドライの怪人。

 その怪人から発されている殺気にミズカネとクルスは身震いする。

 だが、アルケミナは堂々としている。

「探す手間が省けた」

「まさか俺を探していたのか。俺に殺されるために」

「違う。あなたの正体を明らかにするために探していた。あなたの本当の名前はマエストロ・ルーク」

 その名前を聞きパラキルススドライの怪人は一歩を踏み出すことを躊躇う。

「マエストロ・ルーク。そんな名前はどうでもいい。お前を殺せれば」

 その怪人の残虐な声にミズカネ・ルークは聞き覚えがあった。

「嘘だ。兄貴は優しかった。冷酷に百人以上の人間を殺せるはずがない」

 ミズカネ・ルークの叫びを聞きパラキルススドライの怪人は頬を緩ませる。

「お前に何が分かる」

 

 パラキルススドライの怪人はミズカネ・ルークに襲い掛かる。その直前ミズカネは銀色の槌を叩き、鎧と盾を身にまとう。

 フルフェイスのヘルメットのような形のマスク。銀色のボディ。円状の盾。

 その鎧に身を包んだミズカネに、パラキルススドライの怪人の手刀が襲う。

「死ね」

 パラキルススドライの怪人の手刀は、ミズカネの首に当たる。だが、怪人の手刀では鎧を打ち砕くことができない。その怪人の打撃でミズカネの体が後ろに下がるだけだ。

「馬鹿な。なぜ切れない」

「凄いな。クラビティメタルストーンの力。これがパラキルススドライの怪人が唯一切れない盾。この鎧に身を包んでいる限り、俺はパラキルススドライの怪人の攻撃では死なない」

 ミズカネが笑うと、パラキルススドライの怪人は舌打ちした。

「やっぱり万能ではなかったのか。だが、そこの二人は鎧を身に着けていない。あの二人を殺せればそれでいい」

 

 パラキルススドライの怪人は標的をアルケミナとクルスに変更する。だが、怪人の目の前にはミズカネが立ちふさがる。

「邪魔だ」

「これ以上の殺人は許さない。兄貴。どうして無差別殺人をしたのか。教えてくれ」

 怪人は少年の声を聞き、少年の腹を殴り続ける。

「こうするしかなかった。あの漆黒の幻想曲が発生した日。俺の心の中に怪物が生まれた。その怪物は、徐々に俺を支配していく。その怪物を封印するために手袋を付けた。だが、意味がない。そして、三日前、俺は怪物を止めることができなくなった。このままではお前を殺してしまう。だから俺は、お前の前から姿を消し、冷酷な殺人鬼として生きることにした」

 パラキルススドライの怪人の言葉を聞き、アルケミナは納得する。

「なるほど。あのシステムには突然変異だけではなく、性格が変化する場合があるということ。それだけで十分」

「俺はお前を殺さないと満足できない」

 パラキルススドライの怪人はミズカネを無理矢理地面に押し倒す。そして、ミズカネの体を踏みつけ、アルケミナの方向へ飛ぶ。


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