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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第三章 パラキススドライの怪人編
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第二十七話 クラビティメタルストーン

 ミズカネ・ルークはアルケミナが指摘した最悪な可能性を聞き沈黙する。アルケミナはさらに言葉を続ける。

「でも突然変異がなかった絶対的能力者というのは興味がある。だからもう一度、パラキルススドライの怪人に遭遇したい。あの様子から察すると、パラキルススドライの怪人は私を血眼になって探している。パラキルススドライの怪人の正体が、マエストロ・ルークであることを証明するつもりだけど、ミズカネはどうする。私たちと一緒に行動を共にする」

 アルケミナの言葉を聞き、クルスは驚く。

「先生。私たちというのは僕もカウントされているのですか」

「そう」

「しかし僕が怪人と遭遇したら確実に殺されます。僕は先生と違って逃走する術がないのですから」

「大丈夫。クルスの能力があれば、何でもできる」

「それは一昔前の格闘家の名言ですよね。でも先生がサポートしてくれるならやりますが」


 クルスが笑みを見せると、アルケミナは再びミズカネに尋ねる。

「もう一度聞く。ミズカネ・ルーク。あなたは私たちと一緒に来るのか」

 その質問にミズカネは覚悟を決め、答えを少女に伝えた。

「俺も行く。パラキルススドライの怪人が兄貴なら、怪人を止めることができるのは俺だけという理屈になるからな」

「分かった」

 アルケミナがミズカネの答えに納得すると、ミズカネは疑問を口にした。

「どうやって怪人の正体を明らかにする」

「あの怪人を倒す。私とクルスがパラキルススドライの怪人を何とかするから、ミズカネは説得をして」

 少女の答えにミズカネは一瞬驚く。そして彼は、アルケミナに意見を述べた。

「それなら俺に考えがある。俺と兄貴の夢は錬金術で世界一固い石とされるクラビティメタルストーンから盾を生成すること。その夢で兄貴の暴走を止める。生身で怪人と対峙するのは危ないからクラビティメタルストーンから鎧や盾を生成すれば安全だろう。だけど、そんなことが俺たちにできるはずがない」

「大丈夫。ここにクラビティメタルストーンがあれば、私が何とかする。一時間でその夢を叶える」

 少女の夢物語を聞きミズカネは驚き、声を荒げる。

「無理だ。たったの一時間でできるはずがない。俺と兄貴が十年間実験してもできなかったのに」

「ただの餓鬼じゃなかったとしたら」

 その自陣満々な少女の顔付きに、ミズカネは安心する。ここは少女を信じようと。

「意味が分からないが、たったの一時間でできるのか」

「現在あなたがクラビティメタルストーンを所持していた場合の話」

「分かった」

 ミズカネ・ルークは鞄から三個のクラビティメタルストーンを取り出す。

 その石は黒くアルケミナの片手に収まるほど小さい。だが、この石はとても固く、地面に落としたとしても割れることがない。

 

 ミズカネから三個のクラビティメタルストーンを受け取ったアルケミナは石を触る。

 肌触り。石の形状。固さ。一通りの観察を終わらせると、アルケミナは石を地面に置き、地面に魔法陣を書き始めた。

 それから十分後、アルケミナは手を止める。

「ここからはあなたの出番。続きを教えるから、私に変わって魔法陣を完成させて」

 ミズカネは書きかけの魔法陣を凝視する。そこに書かれていたのは複雑な魔法陣。到底ミズカネに書けるものではない。

「無理だ。続きが分かるなら、お前が書けばいいだろう」

「ダメ。この魔法陣を完成させるためには、夢を叶えるという意思が必要。私にはそれが足りない。十年間研究していたなら書けるはず」

「分かった。俺が完成させる」

 ミズカネはアルケミナからチョークを受け取り、魔法陣を書き始めた。

 魔法陣を書くたび、ミズカネの脳裏に十年間の研究の日々が走馬灯のようによみがえる。

 アルケミナのサポートの元、夢が現実になろうとしている。

「最後は中央の円に土の記号を描けば完成」

 アルケミナの指示に従い、ミズカネは魔法陣を完成させる。

そして、ミズカネは仕上げとして、魔法陣の中央に三個のクラビティメタルストーンを置き、白い槌でそれを叩く。すると、白い槌は銀色に変化した。

「本当に完成したのか」

「うん」

 ミズカネの問いに、アルケミナが首を縦に振

 その様子を、アルケミナたちの近くに建つビルの屋上で一つの影が見ていた。その影はパラキルススドライの怪人。

「やっと見つけた。あの餓鬼だ。仲間諸共皆殺しにしてやる」


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