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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第三章 パラキススドライの怪人編
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第二十四話 怪人からの脱出劇

 その頃アルケミナは、高さ五十メートルのビルの階段を昇っていた。重たい息切れを起こしながら。だが、休憩をする暇がない。休憩をしている間にパラキルススドライの怪人が襲ってきたら確実に殺される。

 アルケミナはパラキルススドライの怪人に見つかる前に、ビルの屋上に到着しなければならない。

 彼女は既にパラキルススドライの怪人が迫っていることを予想していた。

 血痕がアルケミナの通り道を示している。それは残忍な殺人鬼にとって、一目瞭然な標的の居場所を示す手がかりとなるだろう。

 パラキルススドライの怪人は、アルケミナが隠れているビルに潜入。

 怪人は、階段の手すりを手刀で切断しながら、階段を昇っていく。

 そして、怪人は恐怖心を煽るかのように、大声で叫ぶ。

「かくれんぼ。終わりにしようぜ。どうせお前は俺に殺される。楽しもうじゃないか。この恐怖の時間を」

 その叫び声はアルケミナの耳にも聞こえた。

「やっぱり近くまで来ていた」

 アルケミナは汗を流しながら、全速力で階段を昇る。ゴールであるビルの屋上まで後わずか。それまでパラキルススドライの怪人に捕まるわけにはいかない。

 そして、アルケミナは屋上のドアを開く。屋上は金属製のフェンスで覆われていない。

 アルケミナは屋上を歩き、地上を覗き込む。

「大体五十メートルくらい。これくらいあれば大丈夫」

 

 それから一分後、パラキルススドライの怪人はアルケミナがいるビルの屋上に姿を現す。

「やっと会えたな。ここがお前の死に場所か。ただの餓鬼は俺に殺されるしかないのさ」

「ただの餓鬼じゃなかったとしたら」

 アルケミナは自信満々に答え、ビルの屋上から飛び降りる。その光景を見て、パラキルススドライの怪人は鼻で笑った。

「逃げられないと思って自殺しやがったか。馬鹿な野郎だ。俺が殺そうと思ったのに」

 パラキルススドライの怪人の考えとは裏腹に、アルケミナは降下していく中で水色の槌を振り下ろす。

 魔法陣の構造は先程パラキルススドライの怪人の体を吹っ飛ばそうとしたものと同じ。

 違いは東西南北だけではなく、南東、南西、北東、北西にも下向きの三角形の記号が記されていることだけ。

 落下するアルケミナの体。それと地面までの距離がゼロに近づこうとしている。その時、五十メートルを軽く超える水の柱が勢いよく出現。 

 その水圧によりアルケミナの体が上空まで飛ばされる。はるか彼方まで。


 パラキルススドライの怪人は、衝撃を受け、一歩も動けなかった。

「馬鹿な。上空での錬金術の使用はかなりの実力者ではないと使えないはず。絶対的能力で能力に補正がかかっているとしても、餓鬼にできる芸当ではない」

 地上に落ちてから錬金術を発動すれば、確実に転落死。完全に転落する前。空中で発動された錬金術。それは通常の人間ではできない芸当。

 パラキルススドライの怪人は、その現象に唖然する。だが、怪人はその衝撃とは裏腹な目標を口にする。

「あの餓鬼を見つけ出して殺す」

 パラキルススドライの怪人は妥当アルケミナを誓う。


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